理論と方法
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32 巻, 1 号
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学会賞受賞講演
  • 毛塚 和宏
    2017 年 32 巻 1 号 p. 3-12
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー

     受賞論文は教育達成に関する階層間格差を説明するBreenとGoldthorpeの相対リスク回避仮説に修正を加え,日本において適合的かどうか検討した.数理モデルと計量分析による検討の結果,下降回避的なメカニズムを含まない単純進学モデルが最も説明力があった.本稿の後半では,社会学内における数理社会学のプレゼンスの低さという数理社会学を巡る問題を取り上げた.最後に,さまざまな実証研究との協働によって解決される可能性を提示した.

論文
  • 大学生のクラブ・サークルを事例としたZero-Inflated Negative Binomial Regression Modelによる実証研究
    鈴木 伸生
    2017 年 32 巻 1 号 p. 13-31
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー

     本稿の目的は,大学クラブ・サークルを対象に,外部集団成員との同類・異類結合の規定要因を解明することである.2012年2月~3月にかけて総合大学の学生を対象に実施した調査データを用いて,Zero-Inflated Negative Binomial Regression Modelで分析した結果,第1に,大学クラブ・サークルでは,成員への信頼が高い集団の成員ほど,外部集団成員との同類結合を多く形成していた.第2に,大学クラブ・サークルでは,成員への信頼が低い個人ほど,集団内部で強い紐帯が少ない集団の成員ほど,外部集団成員との異類結合を多く形成していた.以上の知見は,外部集団成員との同類・異類結合が,大学クラブ・サークル内部における社会関係資本の量に依存する可能性を示唆している.

特集 主観的ウェル・ビーイングへの社会学アプローチ
  • ホメリヒ カローラ, 内藤 準, 大﨑 裕子
    2017 年 32 巻 1 号 p. 32-34
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
  • 満足と信頼の分析
    大﨑 裕子
    2017 年 32 巻 1 号 p. 35-48
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー

     多くの主観的ウェル・ビーイング研究において,経済的な豊かさの向上が主観的ウェル・ビーイングの上昇に必ずしも結びつかないことが報告される一方で,近年,経済的な豊かさ以外の要因としてソーシャル・キャピタルのもつ可能性に関心が集まっている.本研究は,ソーシャル・キャピタルのうちとくに一般的信頼に着目し,主観的ウェル・ビーイングにおける経済的豊かさの限界を補完する可能性を検討した.その方法として,東京都に住む1,033人の個人レベルデータをもちい,従属変数を生活満足感,独立変数を一般的信頼と経済的安心とする回帰分析をおこなった.その際,これら2要因が生活満足感を高める効果に対し客観的な所得レベルが与える影響について,交互作用効果を検討した.分析の結果は以下のとおりである.(1)所得レベルが高い人ほど,経済的安心が生活満足感を高める効果は小さい.(2)所得レベルが高い人ほど,一般的信頼が生活満足感を高める効果は大きい.すなわち,所得が高い人々は低い人々に比べて,経済的安心から得られる生活満足感は少なくなり,それを補完する形で,一般的信頼が生活満足感の向上により強く結びつくことが明らかとなった.以上の結果から,理論的および政策的含意について論じた.

  • An Analysis of Happiness and Unhappiness
    Jun Kobayashi, Carola Hommerich
    2017 年 32 巻 1 号 p. 49-63
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー

    Within the booming field of research on subjective well-being, happiness and unhappiness have so far been treated as two ends of a continuum with causes and mechanisms being the same for both. Still, this is not self-evident. We here use the SSP2015 survey data to investigate whether happiness and unhappiness have the same determinants. To do so, we classify the respondents into three well-being groups: the “happier than average,” the “average,” and the “less happy than average.” We conduct a multinomial logistic regression analysis to disentangle the effects of education depending on the level of happiness. Our results imply that (1) more education promotes happiness of unhappy people. At the same time, however, we find that (2) an increase in education reduces the happiness of happy people. This means that the impact of education on happiness is by no means straightforward, but that it can have opposing effects depending on the happiness level. This supports our hypothesis that some determinants have different effects on different happiness levels. It also implies that an enhancement of subjective well-being cannot be achieved in the same way for happy and unhappy people. Therefore, happiness and unhappiness turn out not to be two sides of the same coin.

  • ネットワークと自由の分析
    内藤 準
    2017 年 32 巻 1 号 p. 64-79
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー

     社会階層研究において,社会的資源は人びとのライフチャンス,選択の自由を拡大するものだとされる.他方,社会的ネットワーク研究では,社会的サポートネットワークが行為者にとっての社会関係的資源になるとされてきた.そこで本稿では,サポートネットワークが人びとに自由を与える資源となるための条件と,社会階層との関わりを検討する.分析は「主観的自由」とサポートネットワークの指標を使用しておこなう.主観的自由は,行為者の選択の自由に関する自己評定指標であり,主観的ウェルビーイングの一つとしても解釈できる.全国調査データ(SSP2015)を用いた分析の結果,以下のことが明らかになった.①サポートネットワークは,行為者に「生き方を自由に選べる」といえる状況をもたらす資源として機能する.②しかし,サポートネットワークが自由をもたらす効果は,個人収入が少ない層では大幅に低下する.この結果は,サポートネットワークを利用するには「他者の協力」が必要であるが,他者とのサポート関係が「相互性に基づく交換」に基づくため,低収入層はそれを利用しづらいという,社会的相互行為のメカニズムによって理論的に説明できる.それゆえ,サポートネットワークが社会的排除に対する実効的な安全網となるには,社会経済的資源の適切な再分配が必要であると示唆される.

  • ウェル・ビーイングと宗教の分析
    櫻井 義秀
    2017 年 32 巻 1 号 p. 80-96
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー

     本稿では,近年の宗教研究とウェル・ビーイング研究のレビューを通して「宗教」と「幸せ」の関連を問う適切な問題設定を行うことを目的とする.この研究の難しさは,被説明変数としての「幸せ」のみならず,説明変数としての「宗教」も多様な側面を持つために,幸せのどの側面と宗教のどの側面との関連を考察の対象としているのか十分に自覚することなく,宗教は人を幸せにするかという高度に抽象的で哲学的な命題が議論されてきたことにある.したがって,本研究ではまず,宗教を宗教意識,宗教行為,宗教集団と制度の次元に分節化する社会学的方法論を示し,次いで,ウェル・ビーイングの多面的性質を論じたルート・ヴェーンホヴェンの研究を参照して,生活の機会と結果,生活の内的質と外的質の二軸から,生活の環境,生活満足感,生きる力と幸福感と類型化された「幸せ」の諸側面と宗教との関わりを検討する.そして,最後にヴォルフガング・ツァップフの考察を参考にして,「幸せ」の客観的指標と主観的評価が乖離する不協和と適応,および剥奪の状態においてこそ,宗教が「幸せ」を再構築する独特の機序があることを示そうと考えている.

小特集 日米数理社会学・合理的選択シアトル会議
  • 金井 雅之, 永吉 希久子
    2017 年 32 巻 1 号 p. 97-99
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
  • Using Propensity Score Matching to Estimate the Effects of SNS Usage on Socioeconomic Social Capital
    Maoxin Ye
    2017 年 32 巻 1 号 p. 100-113
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー

    Previous studies have estimated the relationship between social network site (SNS) usage and social capital using Williams’s Internet Social Capital Scales (ISCS). These studies have found that SNS usage is positively associated with social capital. However, ISCS mainly focuses on emotional support, such as helping solve personal problems and making users try new things. Because social capital can also promote socioeconomic support, which can be obtained through SNS usage, the relationship between SNS usage and socioeconomic social capital should be elucidated. In this study, Lin’s definition was utilized to measure the socioeconomic social capital via a position generator. Additionally, previous studies have only used general regression to estimate the association between SNS usage and social capital. However, this could involve crucial problems in estimating. To avoid these problems, propensity score matching was used to estimate the “net effects” of SNS usage on socioeconomic social capital. A dataset (N = 2,255) collected nationwide in the United States was utilized in the analyses. The results suggest that SNSs negatively affect users’ socioeconomic social capital, which means that SNS usage may decrease users’ socioeconomic support and lead to disadvantageous socioeconomic positions. In other words, we may not benefit from SNS usage.

  • 固定効果モデルを用いた失業と貧困の効果の検証
    永吉 希久子
    2017 年 32 巻 1 号 p. 114-126
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー

     社会的排除の視点からみれば,社会的ネットワークからの排除は,失業(労働市場からの排除)や貧困(経済的次元での排除)など他の次元における排除の帰結として生じると考えられる.しかし,クロスセクションデータを用いた研究では,個人の観測されない異質性の影響を除外できないため,失業や貧困それ自体がネットワークからの排除を促すのかが明確ではない.本研究ではパネルデータをもとに固定効果ロジットモデルを用いた分析を行い,失業や貧困状態への移行という個人内の状態変化が家族外でのサポート・ネットワークの喪失に与える影響を検証した.さらに,その効果のジェンダーによる差についても分析を行った.分析の結果,失業や貧困による非家族ネットワークの喪失は男性についてのみ生じることが示された.また,加齢によるネットワークの喪失も男性のみにみられた.一方,結婚は男女ともに非家族ネットワークの喪失を促していた.女性のサポート・ネットワークが社会経済的な次元での排除に頑健であるのに対し,男性のネットワークは脆弱であること,また,結婚がネットワークを縮小させる負の側面を持つことが示唆される.

  • 過去の影響は時間の経過とともに薄れるか
    金井 雅之
    2017 年 32 巻 1 号 p. 127-139
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー

     自分自身の過去の暮らし向きと現在の暮らし向きとの主観的比較が現在の主観的ウェルビーイングに与える影響は,順応仮説が予想するように,比較の対象となる過去が時間的に遠くなるほど薄れるのかを検証した.具体的には,2015年に全国の20歳~69歳の男女個人を対象に実施したオンライン調査のデータ(N = 10,434)を用いて,子どもの頃との比較と5年前との比較のどちらが生活満足度に大きな影響力を与えるのかを,OLS回帰分析によって比較した.分析の結果,順応仮説の予想に反して,子どもの頃との比較は5年前との比較よりも大きな影響を生活満足度に与えており,過去の状況の影響は時間の経過とともに薄れるわけではないことがわかった.このことは,主観的ウェルビーイングを向上させるためには,現時点での状況に対する支援だけでなく,ライフコースの初期段階における機会格差を是正するためのより長期的な視野に立つ政策が求められることを含意する.

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