理論と方法
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33 巻, 2 号
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論文
  • 結婚相談サービスに内包されたメカニズム
    鈴木 翔, 須藤 康介, 寺田 悠希, 小黒 恵
    2018 年 33 巻 2 号 p. 167-181
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/28
    ジャーナル フリー

     本稿の目的は,大手の結婚相談サービス事業者であるX社の会員を対象にした調査から,学歴・収入・容姿が「成婚の可否」「異性からの選好されやすさ」「結婚相手のより好み」に与える影響を明らかにすることである.分析の結果,以下の三点が明らかになった.第一に,高学歴,高収入,高身長・低肥満といった客観的条件の多くは,男性の高収入を除き,成婚の確率を高めるとは言えない.第二に,男性では,高学歴,高収入,高身長・低肥満であるほど女性から選好の対象とされやすく,女性では,非大学院卒,高収入,低肥満であるほど男性から選好の対象とされやすい.第三に,男性では,高学歴,高収入,高身長・低肥満であるほどより好みしており,女性では,高収入,低肥満であるほどより好みをしている.つまり,結婚相談サービスを利用した婚活では,一般的な結婚とは異なり,学歴・収入・容姿で有利な条件を備えていることが成婚の可否へほとんど影響を与えておらず,これは,男女とも婚活市場における自身の価値に対応したより好みを行うというメカニズムが存在するためだと考えられる.

特集 2015年SSMが捉える階層構造の変容
  • 数土 直紀, 渡邊 勉
    2018 年 33 巻 2 号 p. 182-184
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/09/28
    ジャーナル フリー
  • 出身階層のライフイベントへの効果に着目して
    白波瀬 佐和子, 石田 浩
    2018 年 33 巻 2 号 p. 185-201
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/09/28
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,個々人のライフコースで発生する様々なイベントを出身階層との関係から検討していくことにある.人生の初期,中期,後期におけるライフイベントの発生に着目し,それらに対する出身階層の効果を検討することで,今までの労働市場を中心に展開された社会階層研究とは異なる新たな地平を切り開くことを試みる.本論文では,ライフコースにおける3つのステージに着目する.40歳までの初婚,標準的なライフコースを歩んできたか,そして,高齢期における世帯類型に注目して,出身階層の影響の有無を検討する.本論で分析するデータは,2015年SSM調査である.具体的なリサーチクエスチョンは,(1)3つのライフステージのイベントや状況に出身階層の影響が認められるか,(2)父階層と母階層を区別することで両者の効果に違いがあるのか,(3)本人が獲得した学歴によって出身階層からの影響に違いがあるのか,である.分析結果によれば,いずれのライフステージにあっても出身階層の効果が認められ,その効果はライフステージの後半にあっても確認された.また,学歴によって出身階層からの効果に異質性はみられず,たとえ高学歴を獲得したとしても出身階層の不利さを挽回,あるいは恵まれた出身階層の効果を強化するような交互作用はみられなかった.初期の格差(出身階層)は個人のその後のライフイベントに継続して影響を及ぼしていた.

  • キョウダイ構成に着目して
    苫米地 なつ帆, 三輪 哲
    2018 年 33 巻 2 号 p. 202-217
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/09/28
    ジャーナル フリー

     本稿の目的は,世代間階層移動の構造がキョウダイ数や出生順位といかに関連しているか,その趨勢はいかなるものかを明らかにすることである.検証のために1995年SSM調査データ,2005年SSM日本調査データ,2015年SSM調査データをマージしたデータセットを用い,分析は対数線形モデルの1つのモデルであるコアモデルをベースにおこなった.はじめに,出身階層と家族構造の関連,家族構造と到達階層の関連について分析した結果,出身階層にもとづく出生力格差は通時的に安定的であることが示された.そしてまた,出生順位と到達階層の関連も安定的であった.続く家族構造と世代間移動の関連の分析からは,男性では出生順位によって世代間移動の構造に差異がみられ,出生順位が早いほど移動機会が閉鎖的であることが明らかになった.また,その構造は世代を超えて全体的には安定しているものの,自営業層においては出生順位による差異が縮小してきたこと,農業層においては差異が拡大してきたことが示された.以上の結果より,少子化のなかで階層移動に対して家族構造のもつ意味が小さくなるか大きくなるかは,それぞれの階層が置かれた社会的文脈に依存する点が示唆される.

  • 渡邊 勉
    2018 年 33 巻 2 号 p. 218-233
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/09/28
    ジャーナル フリー

     本稿の目的は,職業経歴の不平等の時代変化の特徴を明らかにすることである.これまで7回おこなわれたSSM調査の職歴データを分析した歴史研究は,ほとんどない.そこで本稿では,労働経済学における終身雇用,二重構造の研究を参照しつつ,社会階層論の枠組みで,1920年代から2000年代以降までの日本の労働市場の変化を分析した.

     明らかになった点は以下の通りである.第一に,職歴の不平等は,1970年代半ばまでの入職者において小さくなり,その後大きくなっている.第二に,職歴の雇用安定性は,戦後1970年代まで大きくなっていき,その後若干小さくなる.また職歴の従業先安定性は,初職大企業のほうが中小企業よりも安定しており,初職ホワイトカラーのほうがブルーカラーよりも安定しており,時代による変化は小さい.第三に,通時代的に職歴パターンは,父職,学歴,初職職業,初職規模それぞれの影響を受けている.特に従業先規模は戦後影響が大きくなっている.まとめると,職歴の不平等は,まず戦前から戦後の社会,制度の大きな変化の中で,平等化が進んだ.その後終身雇用制度の浸透と共に,さらに平等化が進んだが,1970年代後半以降の入職者は,不安定な職歴が増え,不平等が進行した.

  • 古田 和久
    2018 年 33 巻 2 号 p. 234-246
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/09/28
    ジャーナル フリー

     本論文は高学歴化の進展とともに,学歴と職業との関連がどのように変容したのかを,1965年から2015年のSSM調査データを用いて検証した.出生コーホートと年齢段階による相違に焦点をあて,各学歴層の職業構成の絶対的変化および学歴間の相対的格差の長期的趨勢を吟味した結果,次のことが分かった.第1に大卒者は専門職従事率が維持されるなど,その職業構成は比較的安定する一方,高卒者の変化は大きく,事務職が減少し,熟練職や半熟練・非熟練職に集中した.第2に,1961-70年生まれ以降の大卒者は職業キャリアの中盤で管理職への到達が困難化した.他方,高卒者は職業キャリアの初期段階からブルーカラー職に就く傾向が顕著になった.第3に,学歴間の相対的格差は出生コーホート間で維持されていた.しかし,その内部では若年時の学歴間格差が,1960-70年代の教育拡大を経験した世代で縮小した.ただし,その動きは1990年代以降に大学進学を迎えた世代に継続されず,学歴差は維持されていた.

  • 2015年SSM調査データを用いて
    中村 高康
    2018 年 33 巻 2 号 p. 247-260
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/09/28
    ジャーナル フリー

     本研究では,相対的な位置を表示できる単一の学歴指標を複数検討することで,教育機会の趨勢をシンプルに描き,基礎的な趨勢分析を行う.そのうえで,一般化順序ロジットモデルを用いてその趨勢が裏付けられるかを確認する.これにより,シンプルな指標による趨勢記述も,概略としては有効性を持つことを示す.具体的に分析によって明らかになったのは,以下の諸点である.1)相対的な学歴の指標には様々なものが考えられるが,数値自体の意味もわかりやすく,また教育機会以外の分析目的にも容易に転用可能な標準化教育年数(SYS)に利点がある.2)こうした相対的な学歴指標によって2015年SSMデータから得られた教育機会の趨勢は,おおむね安定的に推移しており,最若年世代の男性において格差拡大の傾向が観察される.3)この傾向は,一般化順序ロジットモデルを用いた分析においてもほぼ同様の結果が得られる.4)同時に,一般化順序ロジットモデルの分析結果は,教育機会の趨勢を大まかに把握するだけであれば,シンプルな相対的学歴指標だけで見てもさほど大きな齟齬は生じない可能性が高いことを示している.

  • Atsushi Ishida
    2018 年 33 巻 2 号 p. 261-276
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/09/28
    ジャーナル フリー

    This paper introduces a new analytical framework for class identification by applying a mixed method involving simple mathematical modeling and Bayesian statistical modeling. This framework explains the middle concentration tendency of class identification in which the majority of people regard themselves as middle, assuming that the succession of the same Bernoulli m-trials with success probability p determines oneʼs subjective class identification. The modelʼs parameters were estimated from SSM survey data by applying a Bayesian statistical model. The distribution of latent success probability p and number of trials m was estimated by the Markov Chain Monte Carlo method. Differences in distributions of p and m among age cohorts and educational levels were analyzed by hierarchical models. The analysis revealed: (1) assuming approximately five trials of fifty-fifty games with 0.5 success probability describes well the observed class identification distribution in 2015 data; (2) the Japanese postwar period can be divided in two based on peopleʼs subjective evaluations—the period of expanding opportunity (1955 to 1975) and the period of high and constant success probability, but less chance of trials (from 1985); and (3) the different games model on educational levels is always better in terms of goodness of fit to the observed data evaluated by Bayes factors than the common game model in each survey period.

小特集 社会学におけるゲーム理論の新展開
  • 大浦 宏邦
    2018 年 33 巻 2 号 p. 277-280
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/09/28
    ジャーナル フリー
  • 非効率および効率的な社会規範の維持における懲罰と褒賞の効果
    吉良 洋輔
    2018 年 33 巻 2 号 p. 281-297
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/09/28
    ジャーナル フリー

     社会的ジレンマの解決策として,費用を伴う懲罰と褒賞のどちらが優れているのかという議論がある.その一方で,長期的な社会的関係と懲罰・褒賞が非効率な規範を維持する,という指摘もある.本稿では,繰り返しゲームの枠組みを用いて,懲罰と褒賞が社会的ジレンマにおける協力と非効率的な規範のそれぞれを維持する効果を比較した.この分析では,均衡を維持できる最大の割引因子の値を比較することで,社会関係の長期性が薄い場合でも均衡が維持されるか否かを確認した.その結果,懲罰と褒賞の両方が,社会的ジレンマにおける協力と非効率的な規範の両方をより強固に維持する効果を持つが,懲罰のほうがどちらの場合にも顕著な効果を持つことが分かった.これは,懲罰を怠る誘引は懲罰を行っているときに発生する一方で,他者への褒賞を怠る誘引は協力行動など規範的行為を行っているときと同時に発生するためである.

  • 大浦 宏邦
    2018 年 33 巻 2 号 p. 298-314
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/09/28
    ジャーナル フリー

     本研究では社会的ジレンマの回避メカニズムを探る試みの一つとして,集権的組織における試行錯誤ダイナミクスを検討することを試みる.1人の管理者が複数のメンバーにサンクションを与える集権的組織では,サンクションの過小供給や管理者による利得の過剰徴収が生じる可能性がある.シミュレーションと解析的な分析を行ったところ,管理者が長い時間間隔で戦略の修正を行う場合にはサンクションの過小供給を回避しうること,複数の集団の間をメンバーが移動できる場合には利得の過剰徴収を避けうることを示す結果が得られた.

  • E. Goffmanのフォーマライゼーション
    小田中 悠, 吉川 侑輝
    2018 年 33 巻 2 号 p. 315-330
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/09/28
    ジャーナル フリー

     本稿では,日常的な相互行為における期待の暗黙の調整メカニズムを,ゲーム理論を軸とした数理モデルによって説明することを試みる.その際,Goffmanが「ゲームの面白さ」論文で提示した,「変形ルール」というアイデアを精緻化することを通して,先行研究とは異なり,次の二点を考慮した上でモデル構築を行った.すなわち,人々によるゲーム状況への意味付与のダイナミクスを捉えうること,及び,経験的な検証可能性を考慮した上で,Goffmanのアイデアをフォーマルに記述することを目指した.そして,カラオケ・ボックスにおける次回歌い手の決定場面を分析することによって,本稿の視座が上述した二点の他にも,たとえば,チキンゲームのような,調整ゲームとは異なる均衡選択場面についても見通しをよくするものであることが示唆された.最後に,本稿のモデルが,公共空間における人々の相互行為を支えるルールの探求について,人々に参照されている「望ましさ」の基準(自らの利益よりも他者や集団の利益を優先するための基準)を捉えられるという点で有用なものであることが示唆された.

  • 行動エラー下での離脱・復帰可能な繰り返し囚人のジレンマ
    武藤 正義, 田口 拓哉, 坂本 雄飛
    2018 年 33 巻 2 号 p. 331-348
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/09/28
    ジャーナル フリー

     繰り返し囚人のジレンマは,付き合いのモデルと考えられてきたが,現実の付き合いには,協力と非協力だけでなく第三の手として相互行為から一時的に離脱する「様子見」(Escape)ができることも多い.本稿では,様子見可能な繰り返し囚人のジレンマにおいてどんな戦略が有力かを,19683通りの全マルコフ戦略のもとで,行動エラーを含むESS型の進化シミュレーションを用いて明らかにする.このシミュレーションは,いったん普及した戦略がその後,安定的に存続するかを吟味する方法である.分析の結果,つぎのことがわかった.①協力の利得がある程度大きければ,相互協力からは自ら裏切ることはなく,相互非協力および被搾取状態からは離脱する「上品なlose shift戦略」が有力となる.②それらを具体的にいえば,搾取できるなら搾取する「win-stay lose-shift 戦略」(Pavlov戦略),搾取したら様子見に勝ち逃げする「win-“Escape” lose-shift戦略」(Pot & Run戦略)である.③相互非協力に陥りやすい「TFT戦略」は有力ではないが,最有力となったPavlov戦略については条件付きの応報性(正負の互酬性)が見られる.

研究ノート
  • 塩谷 芳也
    2018 年 33 巻 2 号 p. 349-356
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/09/28
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,大学生の就職活動における内定取得時期に対するソーシャルスキルの効果を解明することである.企業への就職を希望する大学3年生を対象に,ウェブ調査によって就職活動の前後でパネル調査を行った.2014年1月にソーシャルスキル(KiSS-18)を測定し,同年12月に最初の内定取得時期を測定した.イベントヒストリー分析を用いて,大学の偏差値やアルバイト経験,出身階層等を統制して分析した結果,女子(n=294)ではソーシャルスキルが高いほど早期に内定を得る傾向が見られたが,男子(n=109)では無関連であった.ソーシャルスキルの効果の男女差は,大卒労働市場において男女が異なる評価基準で選抜されている可能性を示唆している.対人コミュニケーションにおいて女子は男子とは異なる役割を期待され,その役割遂行の巧拙によって女子のあいだに就職の格差が生じている可能性がある.

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