理論と方法
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4 巻, 2 号
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特集 変化をとらえる
  • 原 純輔
    1989 年 4 巻 2 号 p. 2_1-2_4
    発行日: 1989/10/20
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
  • 中村 隆
    1989 年 4 巻 2 号 p. 2_5-2_23
    発行日: 1989/10/20
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
     継続調査によって社会の変化を捉えるための有力な方法であるコウホート分析法について述べた。コウホート分析では、継続調査で得られる年齢×時代形式のデータの変動を年齢・時代・コウホート効果に分離しようとする。ただし、コウホート分析には識別問題が存在し、3効果を一義に分離することは不可能であると指摘されていた。本稿では、識別問題を克服するために、パラメータの漸進的変化の条件を取り入れ、ABIC(赤池のベイズ型情報量規準)により最適モデルを選択するベイズ型コウホートモデルについて解説した。このモデルによれば、欠測年を含むデータや年齢区分幅と調査間隔が一致しない一般コウホート表データも容易に分析できる。比率型の3効果モデルを中心に、年齢効果を年齢×時代効果に拡張した交互作用効果をもつモデル、また数量型モデルについても説明した。適用例として、SSM調査(社会階層と社会移動全国調査)データの分析結果を示した。
  •  
    都築 一治
    1989 年 4 巻 2 号 p. 2_25-2_40
    発行日: 1989/10/20
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
     従来の職歴研究の多くは、変わりゆく現職を分析対象としながらも、その変化を十全に捉える方法を持たなかった。永く、静的な計量分析技法による職歴移動分析が行なわれ続けてきたのである。ところが、1970年代の後半から職歴移動研究に動的な計量技法であるイベントヒストリー分析が用いられはじめたことによって、変化の基底となる時間が明示的に分析にあらわれ、対象と分析手法の隔たりが徐々にうめられつつある。この分折技法の進化は、日本におけるSSM研究にも影響を与えている。
     このように職歴分析において基底をなす時間と職歴移動との関連は、しかし、理論的には必ずしも十分に整理されているとはいえない。むしろ、われわれは時間と移動をめぐるメカニズムに無自覚なまま分析技法をデータに適用しているといえるような状態に近づいているのかも知れない。こうした点に鑑みて、本稿は職歴研究に登場するいくつかの時間関連変数を職歴移動との関わりのメカニズムに基づいた整理を試みている。ここでは、個々人と職業的地位のマッチングの変化がその他の要因から独立にある場合を時間と移動との関わりが‹無媒介的›であるとし、時間経過が第3の要因の変化をともない、それが移動に影響を及ぼす場合を‹媒介的›な関連として区分し、それぞれのメカニズムに対応する時間関連変数と職歴移動との関連をデータをもとに検証した。
  • 高瀬 武典
    1989 年 4 巻 2 号 p. 2_41-2_55
    発行日: 1989/10/20
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
     組織の個休群生態学的研究の主要な主張として、「あらゆる組織は構造的慣性を備えており、現代社会における組織淘汰の過程では、高度の慣性を備えた組織のほうが生き残りやすい」という命題がある。この命題は、組織経営研究における戦略的適応の基本前提と対立する。われわれは、組織適応に対して構造的慣性と戦略的適応がもつ効果を明らかにすることによりこの対立に決着をつけるべく試みた。
     われわれは神奈川県の313の電気機器工場組織を対象に生存時間分折を行った。その結果、業種変更戦略採用の有無などとくらべると、設立時の資本規模が組織の適応力を相対的に強く規定していることがわかった。この意味では、組織の適応に対して設立時の資本規模の慣性的な効果が働いているといえる。しかし、高度の慣性を備えて業種変更しない組織と、戦略的に業種を変更した組織との間に適応力の差は見出せなかった。
  • ─児童の性役割の認知と内面化に関して─
    渡辺 裕子, 原 純輔
    1989 年 4 巻 2 号 p. 2_57-2_75
    発行日: 1989/10/20
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
     「発達」を一般的に定義することは容易であるが、具体的な事象について何が「発達」といえるのかを論じようとすると、さまざまな困難に出会う。この論文では、このような問題を抱えている発達の具体的一領域として、「性役割の獲得過程」をとりあげ、1)児童における性役割の発達の評価基準を設定することと、2)基準を用いて発達の性差を評価すること、を目的とした。まず、発達の評価基準として理論的に検討すべき命題を提示し、異なる2つの年齢集団のデータに示される変化を発達の方向として捉え、この変化との異同により、命題に示される変化の、発達の評価基準としての妥当性をチェックした。つぎに、このようにして選ばれた基準の中から、性差の分析において適当である3つの基準を用いて、男児と女児のどちらが発達が進んでいると判断できるかを検討した。男児と女児との比較では、従来の研究結果に反して、一貫して男児の方が進んでいるという知見が得られた。最後に、発達の基準を設定することの積極的意義について、考察がなされた。
論文
  • 杉山 あかし
    1989 年 4 巻 2 号 p. 2_77-2_92
    発行日: 1989/10/20
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
     ダーウィニズムの視点から見た場合、これまで論じられてきた社会進化論のいくつかの主張にはかなりの問題がある。本稿はまず、ラマルキズムからダーウィニズムヘの変革において存在した、論理の組み立て方の転換を明らかにする。そして、この転換によって本来可能になるはずであった議論展開の可能性を考えながら、社会進化論の通念を吟味していく。「選択によってより優れたものが残る」という命題が、社会的事象に適用される場合の問題点が示され、しかもここでの「優れたもの」の含意が日常語的な意味とは懸け離れたものであることへの注意が喚起される。また、ダーウィニズムと、「分化」「複雑化」「発展段階」といった理論装置は、結び付くことが困難であることが示される。本稿は、このような考察の後に、ダーウィニズムの今後の展開方向を示唆する。まず、個人意識の社会による規定や、利他行動についてのダーウィニズム的解釈についての言及がなされ、そして、ある種のミクロ・マクロ・リンクの理論として、ダーウィニズムが、社会というマクロな過程によって疎外されていく人間のあり方を考える一つの方法となりえることが示される。ここに、再生産論としてのダーウィニズムの、再展開の可能性が示唆される。
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