理論と方法
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5 巻, 2 号
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特集 変動への新しい視点
  • 盛山 和夫
    1990 年 5 巻 2 号 p. 2_1-2_2
    発行日: 1990/11/01
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
  • ─プロテスタンティズムの倫理は近代資本主義を生んだか─
    佐藤 俊樹
    1990 年 5 巻 2 号 p. 2_3-2_20
    発行日: 1990/11/01
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
     プロテスタンティズムの倫理は近代資本主義を生んだか? この問いは現在の社会学の出発点である。だが、Weber自身のを含めて、従来の答えはすべて失敗している。経営の規律性や強い拡大志向、資本計算などは日本をはじめ多くの社会に見出されるからだ。この論考では、まずそれを実証的に示し、その上で、プロテスタンティズムの倫理が「禁欲」を通じて真に創出したものは何かを問う。
     それは合理的な資本計算や心理的起動力などではない。個人経営においても、経営体(組織)と個人の人格とを原理的に分離可能にしたことである。この分離と両者を規則を通じて再結合する回路こそ、日本の経営体に決定的に欠けているものであった。なぜなら、それが近代の合理的組織の母型になったのだから。その意味においてはじめて、プロテスタンティズムの倫理は近代資本主義を生んだといえるのだ。
  • 井上 寛
    1990 年 5 巻 2 号 p. 2_21-2_36
    発行日: 1990/11/01
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
     本稿の目的は、エスニシティ現象をめぐって、いくらかの一般化された理論の可能性をさぐることである。まずエスニシティの概念について整理し、それを文化と人権と出自の客観的属性の共有あるいはそのような属性の主権的な共有の信念であるとする。ついでこのエスニシティの活性化の原因とエスニック集団の主体形成を、文化の利害と経済・社会の利害の剥奪とその克服の過程に求める。ついで、このエスニシティ現象の意義を国民国家のあり方の変化の観点から論じる。まず、国民国家の概要を吟味し、ついでエスニシティの効果を見る。多文化主義や地域主義に、また近代の価値たとえば個人主義や業績主義を制約するかのような政策に、近代社会あるいは国民国家に対する修正を見いだす。しかし、他方でエスニック運動そのものが、近代の自由や平等を主張するリベラリズムの価値の履行という側面をもつこと、また自立する地域の連邦主義的な統合や民族の再統合を目の当たりにすること、これから現代の少なくない数の社会は国民国家のエトスを強め、国民国家の実現を目指していることを明らかにする。
  • ─悲劇の世界の規範構造─
    志田 基与師
    1990 年 5 巻 2 号 p. 2_37-2_50
    発行日: 1990/11/01
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
     「ハムレット」を社会学的に読みといてみよう。社会学者が「ハムレット」の世界にかんするモノグラフを読んだなら、あるいはその世界を訪れたなら、それをどう分析するだろうか。「ハムレット」の世界を規範・役割・地位の体系を備えた制度とみなして分析することにより、その特質を明らかにするだろう。そうすると、ハムレットは弱々しい悩める貴公子でもなく、衝動的な性格の持ち主でもなく、まして分裂した人格の持ち主でもないことが明らかになる。それどころか、「ハムレット」は復讐劇ですらなく、デンマーク王国の危機と再生の物語であり、主人公ハムレットの役割はそのための殉教者であることが明らかになってくる。
  • ─階虐帰属意識の変化の構造─
    盛山 和夫
    1990 年 5 巻 2 号 p. 2_51-2_71
    発行日: 1990/11/01
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
     階層帰属意識は長い間研究者を魅了してきた「謎」であった。なぜかくも多くの人々が「中」と答えるのか。なぜ「中」の分布は1975年にかけて増大し、その後やや減少しているのか。それらについて「社会学者は、まだ明確な解答を出していないように思われる」(原,1986:247)。本稿は、求められている謎の解明の一つの試みである。それはまた、高度経済成長とそれにつづく低成長という戦後日本社会の歴史的体験の意味を読み解く作業でもある。
論文
  • ─LISRELを用いて─
    津富 宏
    1990 年 5 巻 2 号 p. 2_73-2_90
    発行日: 1990/11/01
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
     逸脱の社会学における根本的な争点のひとつは、法的制裁の逸脱行為に対する影響、すなわち、刑罰は、特別予防の過程を通じて逸脱を抑止するのか、あるいは、逸脱深化の過程を通じて逸脱を拡大するのかという問いである。本研究は、アメリカ、サウスカロライナ州の一都市の高校生のデータを用い、逮捕がそれ以降の非行行動にもたらす効果がどのように抑止過程及びラベリング過程に媒介されるかを検討した。本研究では、媒介過程を明確にモデリングすることにより、1)刑罰と犯罪行動を結びつける媒介過程の無視、2)重要な媒介変数の見落とし、3)時間的順序と矛盾した因果順序の設定、4)法的制裁の犯罪行動に対する影響が制裁をうける個々人の特質に条件付けられている可能性の不十分な取扱いといった、過去の研究の手法上の欠点がのりこえられた。
     測定誤差の補正、パネルモデルの推定、本研究に適した仮説検証を可能とするJoreskogとSorbomのLISREL-VIを用い、共分散構造モデルを推定した結果、逮捕された者は、非行行動に対する親からの叱責を予期しなくなり、非行的な者との接触を増すため、より多くの非行を行うことが見いだされた。この結果は、特別予防の仮説を否定し、逸脱深化の仮説を支持するものである。
  • ─大澤の「宇宙」と「世界」・ルーマンの「脱トートロジー化」と連関させて─
    桜井 芳生
    1990 年 5 巻 2 号 p. 2_91-2_104
    発行日: 1990/11/01
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
     まず、柄谷行人が『探究II』でおこなったクリプキの可能世界論の援用への疑義を提示する(1節)。つぎにこの柄谷の可能世界論の誤用がかれらのいう「第二の論点」と関連していることを確認し(2節)、大澤のいう「世界」と「宇宙」という概念を導入することで、柄谷がいわば「世界間差異」と「宇宙的差異」との混同に陥っていることを指摘し、後者をめぐって柄谷とクリプキとが異なっていることを明示化する(3~5節)。我々の行ってきた議論を用いて、柄谷のいう「反復」の議論への接近を試みる(6節)。最後に、ここでの議論とルーマンの「脱トートロジー化」の議論との連関を示し、社会理論的含意を示唆する(7節)。
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