理論と方法
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6 巻, 2 号
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特集 フォーマル・セオリー
  • 高坂 健次
    1991 年 6 巻 2 号 p. 2_1
    発行日: 1991/11/01
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
  • ─役割概念のフォーマライゼーションをめざして─
    三隅 一人
    1991 年 6 巻 2 号 p. 2_3-2_19
    発行日: 1991/11/01
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
     役割の概念はさまざまな理論分脈で多用されてきたにもかかわらず、役割理論としての蓄積は乏しい。本稿はS. F. Nadelによる役割の内部構造に関する議論をもとに、役割概念をダイグラフによって定式化し、それによって当概念の明確化を図ることを目的とする。
     まずNadelの着想にしたがい、役割の内部構造として、中枢タイプ、関連タイプ、周辺タイプという3等級が含意関係によって結合された階統構造を想定する。それをタイプを点とし、含意関係を矢とするダイグラフで表し、さらに強連結成分をなすタイプをひとまとめにする「縮約」のルールを適用して、役割を簡潔なダイグラフで定義する。それを基準として、役割ではないが役割に関連したさまざまなダイグラフを、3つに類別する。その中で役割複合に着目し、それを3つの複合パターンを識別した上で、それらの双方的な組合せから役割の内部構造変質の3パターンを一般的な水準で抽出する。
  • 都築 一治
    1991 年 6 巻 2 号 p. 2_21-2_36
    発行日: 1991/11/01
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
     本稿は、行為者に資源取得の規則を仮定した仮想的な社会モデルの構成を目的とする。前半では、この社会の構造を記述し、後半では、この社会で成立した資源配分の安定性について論じる。この仮想社会における行為者の資源取得量は、資源取得の順位によって規定される。資源取得順位によって決まる資源配分は、下位の行為者の‹闘争›によって変更可能だが、‹闘争›を起こすには一定の条件が必要となる。いったん成立した階層的資源配分は、局所的な、‹闘争›による資源再配分が波及することで変化しうるが、この社会モデルからは、この波及が生じる条件は、局所的な資源再配分がなされた行為者からの順位の隔たりに応じて規則的に変化すること、資源配分変化の影響は比較的狭い範囲に限定されること、上位者への波及の仕方と下位者への波及の仕方が、モデルのパラメターの値によって異なること、などの関係が導かれる。
  • ─階層認知の数理モデル─
    白倉 幸男, 与謝野 有紀
    1991 年 6 巻 2 号 p. 2_37-2_54
    発行日: 1991/11/01
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
     本研究では、Fararoの公理をもとに、階層認知と階層帰属意識の問題について数学的な定式化を行ない、理論展開する。ここでは、次の点を明らかにする。
    (1) 階層イメージの形成において、各人は自己の属するイメージ階層をもっとも少数派だと認知する。そして、自己の属する階層から離れるほど多数派になっていくと認知する。(2) また、次元もしくはランク数が増加するにつれて、ますます自己を少数派だと認知する。(3) イメージ階層分布は対称で上に凸である。(4) 階層システムにおいて次元数が増加するほど、階層帰属意識はより中レベルに集中する。(5) Fararoの公理を拡張し、スキャニング過程を一般化することによって、イメージ階層および客観階層における順位の一般式を明らかにする。(6) イメージ階層の順序の非保持性を「逆転現象」としてとらえ、その数理的なメカニズムを明らかにする。(7) そして、客観階層と主観的なイメージの間の乖離から生じる差異化と同質化のパラドキシカルな関係を明らかにする。
  • 高坂 健次
    1991 年 6 巻 2 号 p. 2_55-2_67
    発行日: 1991/11/01
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
論文
  • ─完全同質集団の2分割定理─
    富山 慶典
    1991 年 6 巻 2 号 p. 2_69-2_84
    発行日: 1991/11/01
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
     集合的選択の正確確率と個人的選択能力,集団構成員数,集団の決定規則との間の関係は,コンドルセの陪審定理において初めて理論的に分析された.数名の研究者がこの定理を様々に展開してきているが,単一の集合的選択領域を暗黙裡に仮定し,その領域における個人的選択能力だけを導入しているという点で共通している.しかし現実には,“経営戦略と人事移動”というように集合的選択領域は複数存在し,“経営戦略には強いが,人事移動には弱い”というように集合的選択領域によって構成員の個人的選択能力には違いがあると考えられる.領域の違いによって構成員の個人的選択能力が異なり,かつ集団の構成員が限られているという条件のもとで,集団はどのような集合的選択領域にどのような個人的選択能力を持った構成員を配置すればよいのであろうか? この集団分割問題は陪審定理からの従来の展開研究のモデルでは取り扱うことができない.集合的選択領域が1つという仮定のもとでのモデル展開になっているからである.この論文では,陪審定理の証明の前提になっている基本モデルを集合的選択領域が2つある場合に拡張し,新たに集団2分割問題を一般的に定式化し,すべての領域に対するすべての個人的選択能力が等しいという完全同質性の仮定を導入した場合の集団2分割問題に対する解を定理の形で与える.最後に,今後の課題について言及する.
  • Jun'ichi KOBAYASHI
    1991 年 6 巻 2 号 p. 2_85-2_98
    発行日: 1991/11/01
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
         The purpose of this paper is to formalize Merton's famous idea of the self-fulfilling prophecy. First, we will check the insufficient points in his discussion, and clarify the vicious circles which are characteristic of the self-fulfilling prophecies. Then we will construct a mathematical model to specify the mechanism of the self-fulfilling prophecy. From this formal analysis we can suggest five different situations under which a prophecy leads to its own fulfillment in the case of racial conflict. In particular, we can point to the possibility that even if “the feelings of whites toward Negroes are favorable” and “Negroes respect the traditions of trade unionism,” the prophecy may successfully lead to its own fulfillment. We cannot understand clearly the mechanism of the self-fulfilling prophecy, until we undertake such a formalization thoroughly and completely and surpass the Mertonian “theory of middle range.”
  • ─一般化フレーム問題を導きの糸とする「権威」問題の探究の試み─
    桜井 芳生
    1991 年 6 巻 2 号 p. 2_99-2_113
    発行日: 1991/11/01
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
     「権威」がいかに存立しているかに関しては、「社会外的根拠説」「社会内的根拠説」「自存説」に大別できるが、それぞれ不満点を含んでいる。我々は、AI(人工知能)研究者たちによって関心が持たれている「フレーム問題」を導きの糸とすることで、「権威」の存立への探究を試みる。まず、松原らにしたがってフレーム問題を概観し、それを参考に「一般化フレーム問題」を定義する。次に松原にしたがって「一般化フレーム問題」がAIにとっても人間にとっても「解決」不能であることを確認する。それゆえ「一般化フレーム問題」はその「疑似解決」が探究されるべきである。つぎに、我々の試案が提示される。我々は、以上の「一般化フレーム問題」の考察の帰結として「規範不安」の仮説を提示する。これを仮説すれば、ひとびとのあいだにオーソリティー・バブル(権威の信憑域の泡)が生じる蓋然性がたかまることを、微細なメカニズムとともに示す。このオーソリティー・バブルの蓋然的生成・再生産のモデルが「権威」の問題の解答たりうることを主張する。そしてまた我々のモデルが、「ひとびとがいかにして一般化フレーム問題を疑似解決しているか」という問いの一つの解答ともなりえていることを主張する。
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