階層・移動研究の停滞やインパクトの低下が、現在、指摘されている。本稿は、その原因を、(1) 争点、(2) 方法、(3) 解釈枠組、(4) 価値観といった相互に関連する4つの点から明らかにし、それらを踏まえながら研究活性化の方向を模索することを目的としている。
本稿前半部では、まず、インパクト低下の直接の原因を、SSM研究が有効な現状分析を提供できなくなったことにもとめる。さらにその原因は、(1) 1985年SSMの主要な争点である階層固定化・再生産が必ずしも明確に検証されなかったこと、(2) 不平等研究においては「中心―周辺(身障者、エスニック・マイノリティ等)」関係、「集合体(企業、国家)間の階層構造」等の比重が高まりつつあるが、「全国レベル」での「個人サンプル」から構成されているSSMのデータではこれらの問題を扱うことはできないこと、(3) したがってSSMによって析出された階層構造の分析は、全体社会構造における限られた局面の分析と解釈にとどまらざるを得ないこと、(4) また、このような方法ならびに解釈の限定性は、SSMが依拠している近代主義的な価値観に起因することが示される。
本稿後半部では、これらの諸点を踏まえつつ、SSM活性化のための若干の方策を提示した。
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