理論と方法
Online ISSN : 1881-6495
Print ISSN : 0913-1442
ISSN-L : 0913-1442
7 巻, 2 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
特集 社会と選択
  • 盛山 和夫
    1992 年 7 巻 2 号 p. 2_1-2_23
    発行日: 1992/11/01
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
     近年の合理的選択理論の隆盛は、それらが制度や秩序を説明しうる可能性に動機づけられている。合理的選択理論に対しては従来から種々の本質的ではない批判が加えられているが、制度や秩序の説明に関してはそれらとは異なる観点から合理的選択理論の意義と限界が画定されなければならない。
     合理性の概念には、選好の合理性、強い合理性、弱い合理性、および創造的合理性という4種類のものがあるが、合理的選択理論において意味を有するのは弱い合理性だけである。合理的選択理論は、行為者の抱く主観的選好と主観的知識とから彼の行為を理論的に導出することによってそれを説明するが、これらの主観的なものは理論家によって推測的に仮定されるのである。行為者の主観的知識はそれを対象として位置づける理論家の理論と区別して「一次理論」と呼ばれる。
     一方、制度と秩序は、単なる行為の集積ではなく、人々の主観的知識=一次理論に基礎をおいている。ところが、行為とちがって知識は合理的に選択されるものではない。したがって、制度と秩序は、究極的なところでは、合理的選択理論によっては説明されざるものとして残らざるをえないのである。
  • 土場 学
    1992 年 7 巻 2 号 p. 2_25-2_43
    発行日: 1992/11/01
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
     ホッブズ的秩序問題に対し功利主義的社会理論が提示する解決策について、パーソンズは、「合理性」という理論の中心的概念を安易に拡張することによって問題を解決したかのごとく装っているだけだ、と批判した。しかし、もしそうだとしても、ホッブズ的秩序問題を解決する際に功利主義的社会理論は合理性概念以外にどのようなものを暗黙裡に要請しているのか。本稿の目的は、この問題を論理的なレベルで解明することである。そして本稿では、功利主義的社会理論が提示しうる2つの解決策、すなわち「設計主義解法」と「自生主義解法」のいずれにおいても、その論理構造の背後には共通して、「共感的想像力」、すなわち、個々の行為者の様々な振る舞いを原則として常に新たな「意味」、あるいは新たな「ゲーム」を開拓する可能性のある行為として認め合う、という人々の態度、を根本的に前提していることを明らかにする。古典的な功利主義的社会理論は、合理性概念とともにこの共感的想像力をその豊かな人間理解のなかに織り込んでいたのであり、だからこそホッブズ的秩序問題が有意義な探求課題となりえたのである。
  • ―正義と差別の両立性―
    永田 えり子
    1992 年 7 巻 2 号 p. 2_45-2_60
    発行日: 1992/11/01
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
     正義とは等しい者を等しく扱うことだといわれる。ならば何が正義であるかは、誰と誰が等しいかを判断する類別の原理に応じて決まるはずである。人々がそれぞれ異なる類別の原理をもつとき、正義はどのように決まっているのか。そしてなぜ、どんなときにわれわれは個人間の異なった取り扱いを差別と感じるのだろうか。この考察を通じて、正義が差別を内包することを示す。
  • 富山 慶典
    1992 年 7 巻 2 号 p. 2_61-2_83
    発行日: 1992/11/01
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
     われわれの身の回りには、社会的マッチング現象が満ち溢れている。例えば、部屋割りやプロジェクト割当、プロ野球ドラフト会議、結婚、大学入試制度、ゼミナール配置、就職、人事異動現象などをあげることができる。最近、このような社会的マッチング現象に関する理論的研究が、ゲーム理論と社会的選択理論の枠組みの中で、社会的マッチング理論として様々に展開されてきている。本研究の目的は、『両側選好順序のもとでの「1-q型」社会的マッチング問題』の構造分析とその結果を踏まえた『社会的マッチング方式問題』に焦点を絞って、これらの社会的マッチング理論における成果を体系化することにより、残されている諸課題を、理論的課題、実践的課題、実証的課題に分けて論じることにある。特に、実践的課題と実証的課題については、本稿で体系化される理論的成果の含蓄を、現在社会問題となっている日本の大学入試制度に求めながら論じる。
論文
  • How Well Do They Apply to Peasant Rebellion in Nineteenth-Century Japan ?
    Daishiro NOMIYA
    1992 年 7 巻 2 号 p. 2_85-2_104
    発行日: 1992/11/01
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
         The objective of this study is to explore the applicability of the structural theories developed in the area of social movements and collective action to a Japanese historical case. Three theories originated in Europe and America - breakdown theory, class conflict theory, and resource mobilization theory - offer competing explanations for the rise of peasant rebellion, as well as different pictures of peasants and agrarian societies. The purpose of this study is modest: to contribute to the establishment of an empirical foundation for the following inquiry. How well do these three theories apply to the rise of peasant rebellion in premodern Japan?
         A cross-regional study is performed using 2,045 cases of peasant uprising occurring during the period 1848-1877 across 631 counties in Japan. It employs multivariate regression analysis combined with the techniques of structural equations to examine the impact of structural factors on the occurrence of uprisings. The study shows that none of the three theories applies well to the experience of nineteenth-century Japan, suggesting differing compositions of social structural forces and their working in their formation of premodern popular protest between Japan and some European countries. A few possible routes are discussed for further investigation of the extent of the applicability and generalizability of the structural theories to the Japanese experience, and beyond.
  • ―キャンベラの事例―
    野辺 政雄
    1992 年 7 巻 2 号 p. 2_105-2_122
    発行日: 1992/11/01
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
     一般に、都市の急激な人口増加は、他の地域からの若者の大量流入によっている。本稿の目的は、(1) そうした流入者の出身地の人口規模は、その人が都市で達成した社会階層上の地位にどのような影響を及ぼしているか、(2) 流入者は都市の社会階層上のどの地位を占めているかを、オーストラリア連邦の首都キャンベラのデータで検討することである。結婚あるいは同棲関係にある55歳以下の女性を対象に調査を実施し、次の4つの知見を得た。(1) 流入者の出自した社会階層・社会的背景は、キャンベラ出身者のそれと違いがなかった。(2) 流入者の出身地の人口規模が大きいほど、その人は学歴、配偶者の職業威信スコア、収入で高かった。そして、人口規模の最も小さい町村出身の流入者も、キャンベラ出身者よりも配偶者の職業威信スコアで高かった。ただし、両者は学歴、本人の職業威信スコア、収入で違いはなかった。(3) 流入者の出身地の人口規模は、学歴と配偶者の職業に直接的な効果を及ぼしていたけれども、その収入に対する効果は間接的であった。(4) 流入者が上昇移動し、キャンベラの上層階層を形成するのに対し、キャンベラ出身者は下降移動し、その下層階層を構成する傾向があった。これは、キャンベラが政治都市であることによって説明できる。
レターズ
書評
書評へのリプライ
feedback
Top