理論と方法
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8 巻, 2 号
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特集 計量的手法の応用と開発
  • 岡太 彬訓
    1993 年 8 巻 2 号 p. 109-110
    発行日: 1993/10/10
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
  • ―構造方程式モデルによる全国データの解析―
    古谷野 亘
    1993 年 8 巻 2 号 p. 111-125
    発行日: 1993/10/10
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
     在宅老人の全国代表サンプル1,510名のデータを用いて、幸福な老い(サクセスフル・エイジング)の指標である主観的幸福感の要因分析を行った。主観的幸福感の測定には生活満足度尺度Kを用い、分析は共分散構造モデルにより行った。分析の結果、生活満足度に対する有意な直接効果が認められた変数は、健康度、収入、同居既婚子の有無の3つのみであって、機能的健康度が良好な者、夫婦の年収が多い者、既婚子と同居している者で生活満足度が高かった。人間関係の豊かさが生活満足度に対する有意な影響をもたず、生活満足度の分散のうち関連要因によって説明される部分の比率が小さかったことから、社会的環境条件の指標の開発が急務であることが示唆された。
  • 岡太 彬訓, 丸茂 淳子
    1993 年 8 巻 2 号 p. 127-141
    発行日: 1993/10/10
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
     MDPREFは、対象(質問項目、変数、刺激)に関する一対比較判断あるいは選好度判断のデータを分析し、対象の間の選好関係が、一対比較判断あるいは選好度判断を行った人間(個人)の間でどのように異なっているのかを明らかにするための手法であり、個人差を分析する多次元尺度構成法の1つである。対象の関係を表す対象布置と個人の間の関係を表す個人布置が、同じ空間に表現される。個人が、複数の集団に所属している場合には、MDPREFを用いて分析を行なうために、さまざまの方法が考えられる。しかし、このような場合には、通常、個人の総人数がかなり多く、MDPREFを用いて、集団間の差異、さらに、集団内の差異を明らかにすることは、実際的には困難であることが多い。本論文では、このような困難をもたないMDPREFの利用方法を提案する。この方法は、つぎのような4つの段階からなる。(a) 集団ごとにクラスター分析を行なって、個人をクラスター化する。(b) 各クラスターの対象間内積を求める。(c) 全ての内積行列をINDSCALによって分析する。(d) INDSCALで得られた共通対象布置に基づいて個人布置を求める(MDPREFの外部分析法)。この方法の最大の長所は、共通対象布置の次元の方向が一義的に決まっているため、布置の解釈が容易になる可能性が高いことである。東京、パリ、ニューヨークで行われた食生活に関する調査で得られたデータに対して、この方法を適用した。
  • ―その意義と応用可能性―
    千野 直仁
    1993 年 8 巻 2 号 p. 143-167
    発行日: 1993/10/10
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
     本稿では、日常生活の中でしばしば観察される刺激、人、国家間などの対象間の非対称な関係構造の分析のためのエルミート形式モデルの意味と応用可能性について論ずる。ここで、エルミートモデルには計量心理学における非対称多次元尺度法のための有限次元複素ヒルベルト空間モデルおよび不定符号計量モデルと、2次元分割表のためのエルミート正準モデルが含まれる。まず、対象間の観測類似度もしくは非類似度行列の全体的な幾何学的構造を議論するには、有限次元複素ヒルベルト空間モデルを用いるとよいことを示す。また有限次元複素ヒルベルト空間モデルには、原点に近い対象間の類似度は、空間内で等距離であるが原点から離れた対象間の類似度に比べ小さいという興味深い特性が備わっていることを指摘する。また、もし有限次元複素ヒルベルト空間構造が破壊されているような場合には、不定符号計量モデルが使える可能性のあることを指摘する。最後に2次元分割表で従来の正準モデルのあてはまりが良くないときには、ここで提案するエルミート正準モデルが使える可能性のあることを指摘する。
  • 岡太 彬訓, 古谷野 亘
    1993 年 8 巻 2 号 p. 169-182
    発行日: 1993/10/10
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
     パーソナルコンピューターと統計パッケージの普及に伴って、多変量解析法は、それ以前に比べると非常に利用し易くなった。その結果、社会・行動科学においても、これらの方法が手軽に利用できるようになり、多変量解析法を利用する機会は飛躍的に増加し、さまざまな研究の進歩をもたらした。しかし、これは、別の問題すなわち多変量解析法の不適切な利用をも同時にもたらした。多変量解析法の不適切な利用は、分析過程での誤りと分析以前の誤りに大別できる。分析過程での誤りが、パーソナルコンピューターと統計パッケージの普及によって、表面化したことは、否めないであろう。しかし、これらの不適切な利用には、パーソナルコンピューターと統計パッケージそのものとは無関係に、利用者に問題がある場合も少なくない。本稿では、パーソナルコンピューターと統計パッケージそのものとは無関係に生じる、分析過程での問題に焦点を合わせる。そして、多変量解析法(重回帰分析法、因子分析法、多次元尺度構成法、および、クラスター分析法)について、それらの不適切な利用の典型的な例を挙げる。最後に、統計的手法を含む計量的手法の不適切な利用の原因を論じ、これらの原因の根本にある問題点を考察し、その解決のための方策を提案する。
  • 杉万 俊夫, 矢守 克也
    1993 年 8 巻 2 号 p. 183-197
    発行日: 1993/10/10
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
     社会学におけるデータは、ミクロ(個人)変数に関するデータとマクロ(集合体)変数に関するデータに大別され、さらに、後者は、集合体を構成する個々人のデータから、集計、導出される「集計データ」と、個々人のデータからは導出できない、一つの全体としての集合体に固有の「集合データ」に分類される。本稿では、「集合データ」の収集方法として、これまでに考案、開発されてきた方法を、(1) 個人データの集計・加工によって導出される集合データ、(2) 個人間の関係データに基づいて導出される集合データ、(3) 直接的集合データ、(4) 間接的集合データ、の4群に分けて概観し、現状と問題点を要約した。結論として、(3) ないし (4) に属する集合データの収集方法が不足していること、したがって、具体的なフィールドにおけるミクロ・マクロ問題を地道な観察研究を通して解明する中から、そのフィールドに特有のマクロ変数の計量方法を模索していく試みが求められることを指摘した。
原著論文
  • 数土 直紀
    1993 年 8 巻 2 号 p. 199-214
    発行日: 1993/10/10
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
     従来の権力に関する議論は、権力と呼ぶに値するものが何か存在することを前提にし、それを定式化することを試みてきた。しかし、本稿では、自由な行為者間に成立する社会関係が権力関係であることを確認し、権力と呼ぶに値するものの非実在性を主張する。また、「自由である」ことと「権力関係が存在する」こととは両立するので、もし権力に「行為者の自由を否定する」という含意をもたせるならば、権力の概念を立てることは、冗長であるだけでなく、誤りなのである。
  • ―1973-74年の全国調査の分析―
    野辺 政雄
    1993 年 8 巻 2 号 p. 215-234
    発行日: 1993/10/10
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
     1973-74年の全国調査データを利用して、オーストラリアの階層構造を地位の一貫性・非一貫性の視点から検討した。学歴、職業威信、所得という3つの地位変数をクラスター分析して得られた知見は、次の3点に要約できる。(1) 上層、中層、下層の3つの地位一貫クラスター、及び4つの地位非一貫クラスターが析出された。そして、一貫的地位にある人々の構成比率は49.1%であり、非一貫的地位にある人々のそれは43.6%であった。(2) オーストラリアでは、社会的資源は次のように分配されていた。まず、中高等学校、大学、高等教育大学が近年に普及したので、一般的に若い人々の学歴が高い。次に、農民の職業威信が学歴に比べて格段に高い。それから、マニュアル・ワーカーは、40歳を越えると所得が減少する傾向がある。ただし、マニュアル・ワーカーでも、自営業者は学歴や職業威信に比べて所得が高い。最後に、移民は言語や文化の違いのために、就職で不利な立場に置かれ、学歴に見合った職業に就けず、所得も低くなりがちである。これらの社会的資源の分配規則が作用して、一貫的地位と非一貫的地位の人々が出現した。(3) オーストラリアでは、地位非一貫クラスターに属する人々は、階層帰属意識や政党支持で特殊な傾向はみられなかった。むしろ、それらは、地位自体によって規定されていた。
  • ―センの「リベラル・パラドックス」と関連させて―
    桜井 芳生
    1993 年 8 巻 2 号 p. 235-250
    発行日: 1993/10/10
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
     本稿は、江原由美子の権力論に対して否定的な含意をもつテーゼを提示し、そのテーゼの意味するところを考察することを目的とする。まず、江原の議論をふまえて「権力(の存在)」の定義を行い、そのなかに含まれる「本意な選択」の解釈を最強意のものから最弱意のものまで定式化する。そして、センのリベラル・パラドックスを援用することで、センが前提した条件を採るかぎり、江原的な「権力」からの脱却が不可能であることを示す。つぎに、現実には選好の無制約という条件がみたされていないことを推測し、このことが、江原のいう「文脈」とどう関連しているかを考察する。最後に、フェミニズムにおける「権力」論的アプローチへ、疑義を投げかける。
  • ―権力依存理論 vs 要素理論―
    高橋 伸幸, 山岸 俊男
    1993 年 8 巻 2 号 p. 251-269
    発行日: 1993/10/10
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
     現在複数の研究グループが社会的交換ネットワークにおける権力の分布を研究しており、1980年代後半から、ネットワーク内での権力分布の予測方法についての論争が続けられてきた。本論文では、現在の論争の引き金となったEmersonの権力依存理論に基づくCook/Yamagishiらの研究グループと、Willerの要素理論に基づくWiller/Markovskyらの研究グループとの論争に焦点をあててこれまでの経過を概括し、前者の立場からの新しいアルゴリズムを提出する。更に、これまでの論争では不十分だった理論の一般性の比較を、様々なネットワークについて行い、新たに提唱された「等依存アルゴリズム」の優位性を示す。
研究ノート
  • 沢田 善太郎
    1993 年 8 巻 2 号 p. 271-276
    発行日: 1993/10/10
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
     多くの社会集団では、成員のあいだに敵対関係よりも友人関係のほうが多いのではあるまいか。レイブとマーチの議論に触発されて、つぎのようなモデルをつくってみた ―― 集団があるひとつのイシューについての賛否で二分されているとする。このイシューについて同じ意見の持ち主は友人関係をつくる。対立する意見の持ち主は敵対関係をつくる。そうすると、とくに人為的な想定をくわえなくても、多くの集団では友人関係のほうが敵対関係より多くなることをしめすことができる。
  • ―その妥当性と含意をめぐって―
    三隅 一人
    1993 年 8 巻 2 号 p. 277-285
    発行日: 1993/10/10
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
     「共有地の悲劇」の定式化として提唱された「海野の共有地のジレンマ・モデル」が、(1) 「共有地の悲劇」の定式化として不適切であるだけでなく、(2) 社会的ジレンマ・モデルとしても不適切であることが、三隅によって指摘された。本稿は、上記 (2) に関して、海野モデルの妥当性と含意を再吟味するものである。まず、上記 (2) に関する三隅の論証に、誤りがあることが指摘される。その上で改めて海野モデルに対して否定的な評価が下されるが、同時にそのモデルが、環境汚染のような損失均一の問題状況において、利得の再分配制度が導入された後の2次的ジレンマ問題に対応しうることも示唆される。
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