理論と方法
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9 巻, 2 号
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特集 変貌する階層と階層研究
  • 原 純輔
    1994 年 9 巻 2 号 p. 109-110
    発行日: 1994年
    公開日: 2016/08/26
    ジャーナル フリー
  • 盛山 和夫
    1994 年 9 巻 2 号 p. 111-126
    発行日: 1994/10/01
    公開日: 2016/08/26
    ジャーナル フリー
     女性の地位や階層をどう位置づけるかは、今日の階層研究の最重要課題の一つであるだけでなく、階級階層理論の根本的再編を迫るものでもある。1980年代にイギリスのSociology誌上を中心に展開されたゴールドソープとその批判者たちとの論争は、表面上はどちらがデータ分析上より有効な階級概念であるかをめぐるたたかいであったが、実際上は経済秩序の中で女性が層としておかれている状況を従来の階級理論が無視していることに関するものであった。社会的閉鎖理論は階級、性、人種等の社会的亀裂を捉える統合的な概念図式を提供しようとしているが、その説明力は期待できない。本稿はこうした問題状況の中で、女性を位置づけるために階層理論がどのような変貌を遂げなければならないか、そしていかなる具体的な探求課題が存在するか、を示すものである。
  • 近藤 博之
    1994 年 9 巻 2 号 p. 127-142
    発行日: 1994/10/01
    公開日: 2016/08/26
    ジャーナル フリー
     本稿では、教育と世代間移動の関係について、ログリニア・モデルを用いた諸外国の分析例と比較しながら、わが国の特徴を再検討してみた。その結果、1)世代間の地位伝達が教育を介した間接的なものになってきていること、2)しかし教育の制度的な自律性が十分には確立されていないこと、3)よって教育を移動手段とする者が増加しても開放性の増大につながる構成効果が期待できないこと、などが確認された。
  • ―社会変革との関わりから―
    斎藤 友里子
    1994 年 9 巻 2 号 p. 143-156
    発行日: 1994/10/01
    公開日: 2016/08/26
    ジャーナル フリー
     本稿では、公平感の階層意識研究の中で占める位置を明らかにすることを試みた。位置づけの基点は、階層化のルールの正当性評価としての公平感が、必然的に階層構造の維持に関わる点にある。このように公平感を位置づけるとき、階層意識研究としての公平感研究の最終ゴールは、人々にとっての「望ましい」社会像を、そのイメージ形成のスコープの広さを視角にいれつつ提示するところにある。だとすれば、階層研究としての公平評価研究は、単に評価の帰結としての公平感と階層的地位との関連を探るのみでは不十分であり、評価のメカニズム―階層化のルールについての認知と評価基準の双方が明らかにされなければならない。認知と評価基準の共有の様態が、現状維持/否定のイデオロギーの形成に基盤を提供すると考えられるためである。現状を否定するイデオロギーの形成と、新しい不平等=領域別不公平感との関連も論じた。
  • 原 純輔
    1994 年 9 巻 2 号 p. 157-169
    発行日: 1994/10/01
    公開日: 2016/08/26
    ジャーナル フリー
     「社会学的」あるいは「近代主義的」階層観の描く階層構造と、日本社会の現実との乖離が、ますます拡大しつつあるようにみえる。そのうちでも、「社会学的」階層観がもっていたと思われる分配(結果)の平等と機会の平等への志向をとりあげ、種々の議論を検討すると、以下のような現代日本社会の階層状況の不安に満ちた不安定な構図を描くことができる。
     日本人の多くは地位や階層に敏感であり、雇用者化が達成状態に近づいた日本社会は、高学歴の女性も巻き込んで、業績主義的な本格的競争社会となる。ただし、そこで目指されているのは威信をはじめとする社会的評価(の高い職業)であり、所得の重要性は薄れるであろう。同時に、数は少数であり、ライフスタイルによる差異化と見誤りやすいけれども、地位や階層には無関心・無関係といういわば“脱階層群”が、「中」グループの中から層として出現するであろう。他方、業績主義社会の中のさまざまな属性主義的な不平等について、「公平」をキーワードとした異議申し立ての声が高まるであろう。
原著論文
  • ―世代間移動表は何を語っているのか―
    佐藤 俊樹
    1994 年 9 巻 2 号 p. 171-186
    発行日: 1994/10/01
    公開日: 2016/08/26
    ジャーナル フリー
     日本の世代間移動表の分析は、しばしば「構造移動/純粋移動」という2種類の移動メカニズムを想定し、構造移動量/純粋移動量/安田係数をその指標としてきた。だが、その枠組みにはさまざまな問題がある。特に、人口再生産と就業選好という、社会移動の供給側要因が実質的に無視されている。本論文では次の2点を示す。1)日本では1936~55年を中心に人口再生産に階層差が生じており、SSMの75年と85年のデータに影響を与えている。それをある形に調整すると、75年と85年で安田係数はほとんど変化しなくなる。2)就業選好を考慮すると、構造移動量と「構造移動」とが対応しなくなる。移動表の周辺分布が社会構造やその他個人外在的制約を示すと見なす根拠はない。周辺分布は個人の移動の集計であり、個人の移動要因はすべて周辺分布の決定要因になりうる。個人の移動が就業選好によって影響されるなら、周辺分布も就業選好によって影響されるのである。
  • ―父親・母親・子どもの3者間相関の測定と解釈―
    吉川 徹, 尾嶋 史章, 直井 優
    1994 年 9 巻 2 号 p. 187-202
    発行日: 1994/10/01
    公開日: 2016/08/26
    ジャーナル フリー
     本研究は、就学期にある青少年の社会意識が、重要な社会化エージェントである両親の社会意識とどのような関係にあるかを明らかにする試みである。分析するデータは、「仕事はパーソナリティ」研究の一環として実施された父親、母親、子どもの面接調査の回答である。これら3者から回収されたデータは、家族ごとに単一のデータセットとして整理されている。そして共分散構造方程式モデル(LISREL)を用いて、3者それぞれの社会意識の4側面(権威主義的伝統主義、不安感、自己確信性、考え方の柔軟性)を測定し、3者の連関の様態を相関係数として算出した。その結果、母子間の相関が強いパターン、3者間でほとんど連関がみられないパターン、親子間、夫婦間で一定の正の相関関係があり、家族内での親密な連関が確認されるパターンなど、目的概念によって異なる家族内3者連関の構図が明らかになった。この結果は、従来、社会化という観点から画一的に自明視されてきた親子関係を、測定的に再検証し、議論を社会意識の世代間関係として多元的に精緻化する礎となるものである。
  • 山本 匡
    1994 年 9 巻 2 号 p. 203-218
    発行日: 1994/10/01
    公開日: 2016/08/26
    ジャーナル フリー
     社会モデルの構築は一連の分析的な方法論から脱出して実際に社会を生成する統合的な試みが求められる時期にある。本研究では、社会研究のフレームワークとして、社会の基礎的構成を複雑分散システムと把握し、そこから創発的に発現する統合システム及びシステム生成の機序と併せて社会システムと定義し、その人工的な実現を考える。そこでArtificial Society(人工実現社会)を提唱する。Artificial Societyは、複雑な社会をコンピューター上で実現する「生成と創発的統合」の概念的パラダイムである。本研究ではArtificial Societyの諸条件を整理しその可能性について論じる。特に、Artificial Societyの公準として「社会性」「生成性」「複雑性」「創発性」「表現性」「予測不可能性」「非再現性」を列挙しその含意を論じる。また、Artificial Societyの方法論として、Cellular AutomataやGenetic Algorithmの妥当性について検討を加える。更に、Artificial Societyへのプロトタイプの一例として「環境選択形成原理」と「全体システム形成原理」に基づく社会形成モデルを構築しその変動型シミュレーションを提示する。
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