「社会学的」あるいは「近代主義的」階層観の描く階層構造と、日本社会の現実との乖離が、ますます拡大しつつあるようにみえる。そのうちでも、「社会学的」階層観がもっていたと思われる分配(結果)の平等と機会の平等への志向をとりあげ、種々の議論を検討すると、以下のような現代日本社会の階層状況の不安に満ちた不安定な構図を描くことができる。
日本人の多くは地位や階層に敏感であり、雇用者化が達成状態に近づいた日本社会は、高学歴の女性も巻き込んで、業績主義的な本格的競争社会となる。ただし、そこで目指されているのは威信をはじめとする社会的評価(の高い職業)であり、所得の重要性は薄れるであろう。同時に、数は少数であり、ライフスタイルによる差異化と見誤りやすいけれども、地位や階層には無関心・無関係といういわば“脱階層群”が、「中」グループの中から層として出現するであろう。他方、業績主義社会の中のさまざまな属性主義的な不平等について、「公平」をキーワードとした異議申し立ての声が高まるであろう。
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