脳と発達
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10 巻, 1 号
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  • 桜川 宣男
    1978 年 10 巻 1 号 p. 2-9
    発行日: 1978/01/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    コレステロール代謝阻害剤であるAY-9944をラット腹腔内連日投与した結果, 種々の臓器中のスフィンゴミエリネースが著明に減少し, 肝臓内のスフィンゴミエリン, 特に代謝回転の速いsphingomyelin Cの増加を示した. スフィンゴミエリネースの抑制物質がin vivoにおいて存在せず, 薬剤自身の作用がin vitroで否定された事により, AY-9944の投与によりスフィンゴミエリネースの合成が生体内で阻害されたと考えられる. このようにして作成した実験動物は, ニーマン・ピック病の急性実験モデルとして有効に使用し得ると考えられる.
  • 藤井 邦生, 林 正樹, 村田 良輔
    1978 年 10 巻 1 号 p. 10-16
    発行日: 1978/01/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    抗痙攣剤服用中のてんかん患児39名と点頭てんかん4名を対象に, 血中セロトニン, 尿中5-HIAAを測定した. このうち, てんかん患児6名, 行動異常を伴うてんかん患児3名, 点頭てんかん4名について, 髄液中のHVA, 5-HIAAを測定し, これらにprobenecid負荷, 並びにACTH, L-DOPAによる治療を行ない, 次の結果を得た.
    1) てんかん患児の血中セロトニン値と尿中5-HIAA値は, 対照と差はなかったが, 点頭てんかんでは, 血中セロトニン値, 尿中5-HIAA値に高値を示すものがいた.
    2) 髄液中のHVAは, てんかん患児, 点頭てんかん共に対照とに差を認めなかった. 一方, 髄液中5-HIAAは, 点頭てんかんにおいて明らかに高値を示した.
    3) てんかん患児について, probenecidを投与して髄液中HVA, 5-HIAAをみたところ, いずれも投与後に増加した.その上昇度は, 対照との間に差はなかった.
    4) 点頭てんかんにACTH治療を施行すると, 髄液中5-HIAA, 血中セロトニン共に低下した.
    5) 行動異常を伴うてんかん患児に, L-DOPAを抗痙攣剤と併用投与したところ, 髄液中5-HIAAは下降した.
    てんかん患児では, 脳内モノアミンの代謝異常を示唆する成績は認められなかったが, 点頭てんかんでは, 脳内セロトニンのturnoverが亢進している可能性を示す結果を得た. ACTH, L-DOPAは, セロトニン代謝にも影響を及ぼしていると考えられた.
  • 山下 俊信, 大村 清, 西沢 弘二, 樋上 忍, 多田 啓也
    1978 年 10 巻 1 号 p. 17-23
    発行日: 1978/01/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    第1子がNiemann-Pick病 (type A) と診断された母親の次回妊娠時, 第17週目に培養羊水細胞でsphingomyelinase活性の著明な低下を認め, 胎児はNiemann-Pick病 (type A) であると診断した. 両親の希望により妊娠第21週目に人工妊娠中絶を行ない, その胎児の肝臓, 脳, 及び培養皮膚線維芽細胞のsphingomyelinase活性を測定し, 著明な活性低下を認め, この胎児がNiemann-Pick病 (type A) である事を確認した. さらに肝臓に著明なsphingomyelinの蓄積があり電子顕微鏡でも肝臓に特徴的な蓄積像membranous cytoplasmic body (MCB) を認め, 本症が既に胎生早期に病変が進行していることを示唆した. また, 両親及び第1子の白血球のsphingomyelinase活性を測定し, 白血球により保因者の検索が可能であることを示した.
  • 安藤 恒三郎, 志水 哲也, 加藤 友義, 大澤 真木子, 福山 幸夫
    1978 年 10 巻 1 号 p. 25-29
    発行日: 1978/01/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    Counterimmunoelectrophoresisによる血中ミオグロビン測定法を確立し, 進行性筋ジストロフィー症26例 (先天型13例, Duchenne型13例) の血中ミオグロビンを測定した. 血中ミオグロビン陽性率は, 先天型13例中4例 (31%), Duchenne型13例中11例 (85%) であった. ミオグロビン陽性例は, 血清CPK値と良く相関し, 血清CPK値が2, 500単位以上では, 15例中14例 (93%), 2, 500単位以下では, 11例中1例 (9%) に陽性であった. また, ミオグロビン陽性例は, 先天型は5才以下, Duchenne型は9才以下の症例であった. 先天型, Duchenne型におけるミ=オグロビン陽性率の差異は, 先天型の症例には機能障害度の進んだ例が多かったためと考えられ, 進行性筋ジストロフィー症児における血中ミオグロビンの存在は, 筋崩壊の範囲および速度, ひいては機能障害度とよりよく関連するものと思われた.
  • 小川 昭之
    1978 年 10 巻 1 号 p. 30-39
    発行日: 1978/01/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    昭和45年1月1日より昭和51年4/月30日までに長崎大学小児科を訪れた周期性嘔吐症患者中, 1次性 (原発性) アセトン血性嘔吐症37例を対象として, 全例発症期に, うち15例は間歇期において佐藤ら (1975, 1976) の方法を用いて安静覚醒閉眼時の脳波に自己回帰および要素波解析を施し, 発症期と間歇期における周波数, 減衰振動の持続性, パワー, 情報活動量などの諸特性の変動を追求し, 次の結果をえた.
    1) 6才8ヵ月男子の周期性嘔吐症発症期と間歇期とにおける左後頭部導出脳波の要素波の変動について例示した.
    2) 発症期37回, 間歇期15回の左後頭部脳波記録より発症期168個, 間歇期63個の要素波がえられた. これを1Hz毎のクラス幅として出現頻度をみると, 発症期・間歇期共に, OHz, 2.5Hz, 5Hz, 8Hzにそれぞれδ0, δ1, θ, α各波に相当する山がみとめられた. 一方, β波帯域では発症期に15Hz (β1), 21Hz (β2), 24Hz (β3) の3個の, 間歇期には18Hz (β1), 22Hz (β2) の2個の山がみとめられた.
    3) 要素波の減衰振動活動の持続性をみると, θ波, β波において発症期では間歇期に比して持続の長い減衰振動がみとめられ, 後頭部において著明 (P<0.05) であった.
    4) 要素波のパワー百分率はδ1, β波は間歇期に, θ, α波は発症期に, それぞれ高い値を示した. しかし, 前頭部のβ1波, 中心部のθ波以外には有意差はみられなかった.
    5) 要素波の情報活動量はδ波とβ波は発症期に, θ波は間歇期に, それぞれ高い値を示し, その傾向は後頭部において著明 (P<0.05) であった.
    6) 以上の結果から, 周期性嘔吐症極期には皮質下 (視床) の律動性ペースメーカー機構に対する機能的な抑制機構が存在する可能性のあることを考察した.
  • Yu-Zen Shen
    1978 年 10 巻 1 号 p. 40-56
    発行日: 1978/01/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    Of 50 cases epidemiologically studied as neonatal purulent meningitis offended mainly by E. coli (1), suspected E. coli (5) and the other nonenteric pathogens from 1965 to 1975, all of the 29 survived cases (58%) were followed in the neurological and statistical follow-up study on an average 6 years afier discharge. Peaks for the annual and monthly incidence were unremarkable, but males (34) were affected more than females (16). Spinal fluid pleocytosis over 100 per cubic mm occurred in 98%. Increased spinal fluid protein above 401mg% was found in 32%, and severe to mild hypoglycorrhachia in 78% of cases. Severe hypoglycorrhachia occurred more in the age group of 16 to 45 days than the other, while mild hypoglycorrhachia, in contrast to severe hypoglycorrhachia and euglycorrhachia, exclusively in the culture negative group. The rate of positive culture was 50%. Eighty-two percent of cases hospitalized within 5 days, and 78% discharged or died within 1 month. Fever (88%) was common in the nonenteric or the cultute negative group, seizures (78%) in the older age group of 16 to 45 days, meningeal signs (40%) mostly in the age group beyond 1 month and also exclusively in the group of short-term hospitalization, cough (18%) in the group of long-tern hospitalization and hydrocephalus (6%) was only in the enteric group. The older group of 16 to 30 days mostly associtaed with postnatal infection (24%), while the young group before 15 days was with perinatal complication (16%). Two to three kinds of antibiotics were used together for 92% of cases who were severely retarded or almost normd regarding the motor function in follow-up. The case fatality varied among different seasons, patient's ages, levels of spind fluid protein, durations of hospitalization, and also the presence or adsence of cough and subdural effusion. Of 29 survivors, completely normal were 24.1%, almost normal except lisping speech 3.4%, abnomal schooling 27.6%, unable to attend school because of the mild hard neurological signs and epileptic seizures 20.7%, and bedridden 20.7% of cases among whom half were potentially fatal. Symptomatologically, we found hard neurogical signs including 55.2% of cranial nervepalsy as well as 34.4% of abnormal muscle tone, 13.8% of hydrocephalus, 13.8% of microcephalus, 27.6% of epileptics, and 20.4% fopossible hearing impaiment. The electroencephalograms, Bender Gestalt test, behavior, motor and the communictation were also extensively examined in the follow-up study. The motor, communication skill, behavior, EEG quotient ant the overall score were statistically analyzed to be influenced by one or more of the following factors: subdural effusion, hydrocephalus, epileptic seizures, numbers of antibiotic combination, the duration of hospitalization and days between onset and admission etc. The accumulated, survival rate was 57%% at 1 year, 55% 2years, 53% 6 years, and 51% 7 years after discharge. The status of developmental milestones at one year of age was one of the most reliable cues for the evaluation of the future neurological condition.
  • 粟屋 厚子, 鈴木 芙美代, 山口 規容子, 福山 幸夫, 佐藤 昌三
    1978 年 10 巻 1 号 p. 57-63
    発行日: 1978/01/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    1) 生下時より全身皮膚・毛髪が白く, その色素脱失の程度が極めて強いことと, 虹彩・瞳孔が赤く, 眼振・差明などの眼症状が著しいことからtyrosinase陰性眼皮膚型白皮症を疑ったが, tyrosine incubation hair bulb testで, tyrosinase陽性眼皮膚型白皮症と判明した4ヵ月女児例を報告した.
    2) 本症例の末梢血リンパ球を用いた染色体分析で, 常染色体No.3短腕に切断breakageを高頻度に認めた. しかし3ヵ月後の再検査では切断が完全に消失していたため, この一過性の染色体切断は, 初回検査の30日前に行なったX線単純撮影 (3枚) の影響と考えた.
    3) 4ヵ月時, 大泉門が大きく開いていたが, 1才で閉鎖し, 2才現在では, 身体および精神運動機能は正常に発達している.
  • 大木 由加志, 細井 宏益, 手代木 正
    1978 年 10 巻 1 号 p. 64-69
    発行日: 1978/01/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    才の男児. ethosuximide (Zarontin) 500mg/dayを22ヵ月間服用後, 体重減少, 発熱, 両側膝関節の腫脹疼痛, 腹痛を主訴として来院した. 精査の結果, 抗痙攣剤に誘発されたSLEと判断し, 1週間後ethosuximideを中止し, 3週間後prednisolone 40mg/dayの投与を開始したところ, 臨床症状のほとんどは6週以内に消失し, 抗核抗体, 抗DNA抗体も9週以内に陰性となった.
    Ethosuximide中止後10ヵ月の現在, 身体所見, 一般検査所見には全く異常を認めないが, 免疫学的検査所見にてLE cell, LE test, 選択的IgA欠損などの異常が相変らずみられるため, 患児はなおprednisolone 10mg/dayを4投3休にて外来観察中である.
  • 武部 幸侃, 藤田 誠, 東 卓司, 野村 由美子, 馬場 正之
    1978 年 10 巻 1 号 p. 70-78
    発行日: 1978/01/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    1) 11才女児で知能障害および欠神発作を伴ったgiant axonal neuropathyの1例を報告した. 両親は6親等の血族婚で, 患児は7才10ヵ月頃より急激に下肢の脱力が進行し, 眼振, 発語障害, 知能障害, 頭髪の著明いちぢれ毛を認め, 立位では足底の内側で着地していた. 特に下肢の知覚運動障害が著明であった. 腱反射消失, バビンスキ反射は疑陽性. 患児の妹も同様の症状を認める.
    2) 電気生理学的検索では知覚運動神経障害を呈している. 入院時の脳波では3-4Hz高圧棘徐波結合群波を認めている.筋生検所見でtype 1 fiberのdeficiencyとtype 1, type 2 fiberのtype groupingを示している. 腓腹神経生検所見では有髄神経の減少と小径化を示し, その中に軸索の腫大した線維がみられている. 腫大線維は無髄, 有髄共にみられ数は少いく, また直径も最大で14μ位である. 内容は密にneurofilamentが占め, neurotubuleは髄鞘の近くに集合して存在している. この中に電子密度の高いもの, またgranular substanceが存在し, このgranular substanceは小径線維に多くみられている. 小径有髄線維は軸索内容がneurotubuleのみで成り立っているものもみられる. 一般に肥厚性変化が強い.
    3) giant axonal neuropathyの診断は単に軸索がきわめて大きいことだけでいく, 腫大軸索が他の線維にくらべて巨大であること. 腫大軸索の内容構造を考慮にいれる必要があると思われる. また本症は単に末梢神経の疾患ではいく, 遺伝性の中枢神経障害を伴う疾患であろう.
  • 梶谷 喬, 小渕 聖子, 上岡 清隆, 神尾 優子, 伊藤 慈秀
    1978 年 10 巻 1 号 p. 79-85
    発行日: 1978/01/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    妊娠中にミノアレビアチン, コミタール, オスポロットを服用していたてんかんの母親から出生した多発奇形を有する1男児を報告した. 患児は生直後よりチアノーゼを示し, うっ血性心不全のため3ヵ月で死亡した. 剖検により二腔心, 肺動脈狭窄, 右側大動脈弓, 兎唇・口蓋裂, 指趾爪低形成などの多発奇形が認められた. 抗てんかん剤の催奇形性に関して文献的考察を行ない, 妊娠可能な婦人に対してtrimethadioneは絶対に投与すべきでないことを強調した.
  • 前川 喜平
    1978 年 10 巻 1 号 p. 86-88
    発行日: 1978/01/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
  • 第22回ドイツ神経病理・神経解剖学会より
    堀 映
    1978 年 10 巻 1 号 p. 89
    発行日: 1978/01/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
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