昭和45年1月1日より昭和51年4/月30日までに長崎大学小児科を訪れた周期性嘔吐症患者中, 1次性 (原発性) アセトン血性嘔吐症37例を対象として, 全例発症期に, うち15例は間歇期において佐藤ら (1975, 1976) の方法を用いて安静覚醒閉眼時の脳波に自己回帰および要素波解析を施し, 発症期と間歇期における周波数, 減衰振動の持続性, パワー, 情報活動量などの諸特性の変動を追求し, 次の結果をえた.
1) 6才8ヵ月男子の周期性嘔吐症発症期と間歇期とにおける左後頭部導出脳波の要素波の変動について例示した.
2) 発症期37回, 間歇期15回の左後頭部脳波記録より発症期168個, 間歇期63個の要素波がえられた. これを1Hz毎のクラス幅として出現頻度をみると, 発症期・間歇期共に, OHz, 2.5Hz, 5Hz, 8Hzにそれぞれδ
0, δ
1, θ, α各波に相当する山がみとめられた. 一方, β波帯域では発症期に15Hz (β
1), 21Hz (β
2), 24Hz (β
3) の3個の, 間歇期には18Hz (β
1), 22Hz (β
2) の2個の山がみとめられた.
3) 要素波の減衰振動活動の持続性をみると, θ波, β波において発症期では間歇期に比して持続の長い減衰振動がみとめられ, 後頭部において著明 (P<0.05) であった.
4) 要素波のパワー百分率はδ
1, β波は間歇期に, θ, α波は発症期に, それぞれ高い値を示した. しかし, 前頭部のβ
1波, 中心部のθ波以外には有意差はみられなかった.
5) 要素波の情報活動量はδ波とβ波は発症期に, θ波は間歇期に, それぞれ高い値を示し, その傾向は後頭部において著明 (P<0.05) であった.
6) 以上の結果から, 周期性嘔吐症極期には皮質下 (視床) の律動性ペースメーカー機構に対する機能的な抑制機構が存在する可能性のあることを考察した.
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