微細脳障害, 学習障害の21例にFrostig視知覚発達検査を施行した.全知覚指数 (PQ) は62から111までの範囲にあり, 平均値± 標準偏差は83.4±13.8であり, 全体として低い傾向にあったが, 全PQが算出できる10才以下の症例18例の中, 6例 (33.3%) は90以上と, 全PQとしては正常範囲内にあった.
しかし下位検査についてみると, 全例少なくとも一つの下位検査で評価点 (SS) 8以下と異常を示していた. そして4例は五つの下位検査すべてに異常がみられた.
各下位検査の異常頻度をみると, 下位検査1 (視覚と運動の協応) 18/21, 下位検査II (図形と素地) 9/21, 下位検査III (形の恒常性) 9/21, 下位検査IV (空間における位置) 12/21, 下位検査V (空間関係) 8/21と1がもっとも高く, IVがこれに次いでいた.
症状との関係をみると, まず多動性行動異常のある群とない群では有意の差はみられなかった. 次に, 不器用で神経学的微症状のみられる群とそうでない群を比べると, 前者の方が本検査の異常頻度が高く, ことに下位検査IVでは5%以下の危険率で有意の差を示した.
読書障害 (dyslexia) の群では9例中7例が下位検査Vで8以下の異常値を示したのに, 読書障害のない7例は全例この下位検査が正常であり, 1%以下の危険率で有意であった. このことは読書障害の成因に視空間の障害が関与していることを示唆するものであった.
12例についてBender Gestalt Testとの関係について検討を行なった.本検査によるPQと、Bender Gestalt TestのKoppitz得点とはきわめてよく相関していた.しかしFrostig検査の全PQが正常であっても, 少なくとも一つの下位検査では異常がある点からみて, Frostig検査の方がBender Gestalt Testよりは鋭敏であると考えられた.
ITPAの下位検査との関係ではFrostigの下位検査Wと, ITPAの視覚構成 (絵さがし) との間に危険率2.5%で有意の関係がみられ, 両検査の神経心理学的意義を考えるのに示唆に富んだ所見であった.
聴覚障害児8例についても本検査を行なった.5例は少なくとも一つの下位検査に異常がみられ, これはいずれも学習上の問題のみられた症例であった.
以上の成績より本検査は, 微細脳障害, 学習障害における視覚認知に関連する問題点を発見し, 治療教育の方針を定めるのに, 有意義な検査と考えられた.
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