脳と発達
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10 巻, 4 号
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  • 矢田 純一, 新保 敏和, 瀬川 昌也, 野村 芳子, 柿原 歌子, 菅原 真智子
    1978 年 10 巻 4 号 p. 268-272
    発行日: 1978/07/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    小児重症筋無力症患者17例について, 経過を追ってFcR+T細胞 (IgGのFc部に対するreceptorをもつT細胞, suppressorないしkillerの働きをもつと予想されている) を測定した. 抗コリンエステラーゼ剤が有効な軽症例ではほぼ正常域にあったが, 効果の乏しい例ではその経過中しぼしぼ増加を認めた. 抗コリンエステラーゼ剤に抵抗性の強いものほどその傾向が強かった. 抗コリンエステラーゼ剤もステロイドホルモンもまったく無効な慢性例ではむしろ正常域にあった. 以上より本症ではT細胞subclass間に変調が存在し重症のものほどそれが著しいと考えられた.
  • 鈴木 昌樹, 水野 美彦, 加我 牧子, 近江 一彦, 鈴木 陽子
    1978 年 10 巻 4 号 p. 273-283
    発行日: 1978/07/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    微細脳障害, 学習障害の21例にFrostig視知覚発達検査を施行した.全知覚指数 (PQ) は62から111までの範囲にあり, 平均値± 標準偏差は83.4±13.8であり, 全体として低い傾向にあったが, 全PQが算出できる10才以下の症例18例の中, 6例 (33.3%) は90以上と, 全PQとしては正常範囲内にあった.
    しかし下位検査についてみると, 全例少なくとも一つの下位検査で評価点 (SS) 8以下と異常を示していた. そして4例は五つの下位検査すべてに異常がみられた.
    各下位検査の異常頻度をみると, 下位検査1 (視覚と運動の協応) 18/21, 下位検査II (図形と素地) 9/21, 下位検査III (形の恒常性) 9/21, 下位検査IV (空間における位置) 12/21, 下位検査V (空間関係) 8/21と1がもっとも高く, IVがこれに次いでいた.
    症状との関係をみると, まず多動性行動異常のある群とない群では有意の差はみられなかった. 次に, 不器用で神経学的微症状のみられる群とそうでない群を比べると, 前者の方が本検査の異常頻度が高く, ことに下位検査IVでは5%以下の危険率で有意の差を示した.
    読書障害 (dyslexia) の群では9例中7例が下位検査Vで8以下の異常値を示したのに, 読書障害のない7例は全例この下位検査が正常であり, 1%以下の危険率で有意であった. このことは読書障害の成因に視空間の障害が関与していることを示唆するものであった.
    12例についてBender Gestalt Testとの関係について検討を行なった.本検査によるPQと、Bender Gestalt TestのKoppitz得点とはきわめてよく相関していた.しかしFrostig検査の全PQが正常であっても, 少なくとも一つの下位検査では異常がある点からみて, Frostig検査の方がBender Gestalt Testよりは鋭敏であると考えられた.
    ITPAの下位検査との関係ではFrostigの下位検査Wと, ITPAの視覚構成 (絵さがし) との間に危険率2.5%で有意の関係がみられ, 両検査の神経心理学的意義を考えるのに示唆に富んだ所見であった.
    聴覚障害児8例についても本検査を行なった.5例は少なくとも一つの下位検査に異常がみられ, これはいずれも学習上の問題のみられた症例であった.
    以上の成績より本検査は, 微細脳障害, 学習障害における視覚認知に関連する問題点を発見し, 治療教育の方針を定めるのに, 有意義な検査と考えられた.
  • 加我 君孝, 田中 美郷
    1978 年 10 巻 4 号 p. 284-290
    発行日: 1978/07/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    聴性脳幹反応 (BSR) および行動観察による乳幼児聴力検査を, 各月齢, 年齢の乳幼児90名と成人10名を対象として行なった. BSRは波形とその各waveの潜時の変化, 域値を調べた. 行動観察による聴力検査は, 生後1~3ヵ月は行動反応聴力検査 (BOA), 4ヵ月-2才では条件詮索反射聴力検査 (COR), 3~4才では遊戯聴力検査 (Play audiometry), 5才ならびに成人では標準純音聴力検査を行なった. 結果は次の通りである.
    1. BSRの波形は, 乳児期では各波の分化が十分ではないが, 発達とともに変化し, 約2才で成人の波形に近づく.
    2. BSRの各波の頂点潜時は, 乳幼児期では成人に比べ, どの波も延長しているが, 反応潜時の遅いwaveほど, 潜時の延長は著明であるが, 発達とともに短縮し, waveVは約2才で成人に近づく.wave Iは, 他のwaveに比し潜時の延長の程度が最も少ない.
    3. BSRの域値はwaveVを指標として判定し, 生後1ヵ月では45dBと高いが発達とともに低下し, 1才で20dB, 4才で10dB, 成人で5dBと減少した.
    4. 行動観察による聴力検査の域値は, 生後1ヵ月で90dB, 6ヵ月で46dB, 12ヵ月で35dB, 2才で20dB, 4才以上で0dBと発達とともに低下した.
    5. BSRと行動観察による聴力検査の域値が近似したのは1.5~2才である. この年齢以下では, BSRの方が常に域値が低く, かつ月齢が小さいほどBSRとCOR, BOAの域値差が大きい. また, この年齢より上では, BSRの域値の方が高い傾向にあった.
  • 高谷 清, 橋本 加津代
    1978 年 10 巻 4 号 p. 291-296
    発行日: 1978/07/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    点頭てんかんに治療を行ない, その治療効果を検討した.点頭てんかん全例にACTH (Cortrosyn-Z) を1日0.25mg (1才以下), 0.5mg (1才以上) 毎日連続筋注を30日間行なった. これにnitfazepam (Benzalin) を併用した.これで効果のないものには他の薬剤を加え, さらに種々の薬剤によって効果の認められない症例にはケトン食療法を行なった.
    対象は点頭てんかん47例, Lennox症候群11例で, 点頭てんかん47例中ACTH+nitrazepamによって発作消失したものは20例, 他の薬剤を加えて発作消失したもの6例, ケトン食で発作消失したもの4例, 計30例 (63.8%) であった.
    ACTHの治療効果がはっきりしている17例について, 発作消失までの日をみると3日目から9日目に9例, 10日目から19日目まではみられなくて, 20日目から30日目までに8例消失した. 特発群5例はいずれも10本目までに発作が消失し, 知能障害群10例, 脳性マヒ群2例は10本目までのグループと20本以後のグループに分れていた.
    以上によりACTHは2週間連用で漸減にうつるのではなく, 30日連用するのがよいと考える.
  • REM睡眠期の急速眼球運動について
    橋本 俊顕, 大原 克明, 日浦 恭一, 鈴江 純史, 小林 美子, 河野 登, 高橋 民夫, 福田 邦明, 遠藤 彰一, 宮尾 益英
    1978 年 10 巻 4 号 p. 297-302
    発行日: 1978/07/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    点頭てんかん患児8例と中枢神経系に異常のみられない対照児9例の終夜睡眠ポリグラフを記録し, REM睡眠中の水平急速眼球運動について分析した・点頭てんかんは特発性群と症候性群の二群に分類し検討した.
    特発性群ではREMs/min.6.12±0.41, REM density20.89±1.63%, REMs burst/min.0.39±0.12, time interval between REMs (I) /min: I<1sec.1.63±0.28, 1sec.≦I<2sec.1.09±0.04, 1≧2sec.3.57±0.27, 症候性群ではREMs/min.3.00±0.49, REMdensity11.41±1.21%, REMsburst/min.0.08±0.03, I/min.: I<1sec.0.43±0.28, 1sec.≦I<2sec.0.42±0.06, I≧2sec.2.28±0.25であり, 特発性群のREMsburst/minを除き両群とも対照群 (REMs/min9.15±1.69, REM density26.67±4.01%, REMsburst/min.0.43±0ユ2, I/min: I<1sec.2.84±0.91, 1sec.≦I<2sec.1.66±0.33, I≧2sec.4.27±053) より低値を示し, 特に症候性群で著明であった (p<0.01).
    動物実験によれば, 橋ネコでは単発性のREMしか出現しない. 更に正常ネコの上丘および中脳被蓋の破壊ではREM群発が消失し, 除皮質したものではREM群発の増加がみられるという (Jeannerodら, 1965). このことより点頭てんかんでは橋, 中脳被蓋, 網様体 (特に橋網様体) の障害が重要な意義をもつものであると推測され, 症候性群においてはその程度が高度であると考えられた.
    一方REMの頻度と予後との関係では, REM数の少ないものはDQが低く, 発作の消失, 脳波の改善も不良であり, 本症においてREM睡眠中のREMの頻度を調べることは予後の判定に有用であると考えられた.
  • PrirnidoneならびにPrimidone由来のPhenobarbital血中濃度をめぐって
    三浦 寿男, 皆川 公夫, 加藤 譲, 金子 次雄, 須藤 芳正
    1978 年 10 巻 4 号 p. 303-312
    発行日: 1978/07/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    Primidone (PR) 持続投与による熱性けいれんの再発予防効果を, PRおよびPR由来のphenobarbital (PB) 両者の血中濃度面より検討し, 合わせてPRの体内挙動の一端についても検索した.
    38.0℃ 以上の発熱に際して2回以上のけいれん発作の既往があり, PR15-20mg/kg/dayを単独で継続服用せしめ, 現在までに6-12ヵ月経過を観察し, この間38.5℃ 以上の発熱を認めた対象は, PR投与開始時年齢1才4ヵ月-6才の29例 (単純型15例, 複合型14例) である. このうち, 熱性けいれんの再発予防が可能なPB血中濃度16μg/ml以上のものはわずか3例にすぎず, PR血中濃度は4.9-18.9μg/mlであったが, 経過観察中熱性けいれんの再発をみたものは1例のみであった.
    また, これらの対象群では, PR投与量 (mg/kg/day) 18.0±2.4, PR血中濃度 (μg/ml) 9.0±3.5, PR血中濃度 (μg/ml) /投与量 (mg/kg/day) ・比0.50±0.17, PB血中濃度11.5±4.6, PB血中濃度/PR投与量・比0.64±0.23, PB/PR血中濃度比1.4±0.5であった.以
    上, (1) PRの常用量継続投与により, 熱性けいれんの再発予防が可能であるが, これにはPR自身が抗けいれん作用を有することが予測される. この際, 過動, 不穏, 不眠などPR持続投与を中止すべき副作用, ならびにPR血中濃度10-12μ9/ml以上を示すものにも, 眼球振盪, 運動失調, 静穏, 眠気および嗜眠などの中毒症状を認めない. (2) PR単独使用時には, 臨床上一般に行なわれるdiphenylhydantoinとの併用時に比べ, PR由来のPB血中濃度, あるいはPB/PR血中濃度・比が有意に低値を示す.
  • 木暮 龍雄
    1978 年 10 巻 4 号 p. 313-319
    発行日: 1978/07/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    9才, 男子. 先天性魚鱗癬様紅皮症, 重度精神運動発育遅滞, てんかん, infantilismを認めた1症例について, 主として脳波, 及びCTスキャンを中心として臨床的に検索し興味ある結果を得た. 本症例はRud症候群と思われ, 本邦において報告が稀少なので, 文献上の検討を併せて行ない, 報告する.
  • 小西 ユミ子, 水野 悌一, 鴨下 重彦, 遠藤 久子, 長嶋 和郎
    1978 年 10 巻 4 号 p. 327-334
    発行日: 1978/07/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    本症候群の剖検例は, 世界でも未だ10例に満たない.記された病理所見も, 生前の著明な緊張アテトーゼ症状に反して, 脳所見が軽微であることもよく知られている.
    報告の中で, 例外的に高度の内脳水腫であった1例があるが, ほとんどは, 大脳皮質の神経細胞の軽い脱落とかグリオーゼ, 小脳穎粒層の菲薄化など, 非特異的なものばかりである.
    また腎臓に相当大きな, 尿酸結石や, それを含む嚢様のものがあった例でも, 中枢神経系にまで結晶構造物をみたという症例は, 1例しかない.
    今回のわれわれの症例では, 大脳レンズ核をはじめ, 脳下垂体, 甲状腺, 胸腺, 腎錐体部・尿細管など, 同一性状を示す微小結晶構造物を, 従来の報告に比べて広範囲に認めたので, 考察を加え報告する.
  • 三杉 信子, 小宮 和彦, 西野 朋子, 三杉 和章
    1978 年 10 巻 4 号 p. 335-337
    発行日: 1978/07/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    先天性筋ジストロフィー症 (福山型) は福山らによって報告された高度の知能障害と中枢神経の異常を伴う先天性筋疾患である. その成因については常染色体性劣性遺伝と考えられているが, 最近の剖検例の報告からは胎内感染を示唆する所見も得られている. われわれは先天性筋ジストロフィー症と考えられる1例にsystemiclupus erythematosus (以下SLE) の糸球体内皮細胞や小児の多発性筋炎の筋肉内血管に認められているtubular structureを見出したので報告する.
  • 前川 喜平
    1978 年 10 巻 4 号 p. 338-339
    発行日: 1978/07/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
  • 野村 芳子
    1978 年 10 巻 4 号 p. 340-342
    発行日: 1978/07/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
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