脳と発達
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10 巻, 5 号
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  • 自験例ならびに文献報告例の分析と成人例との対比
    三輪 聡一, 村田 高穂, 奥村 厚, 森 惟明, 半田 肇
    1978 年 10 巻 5 号 p. 350-358
    発行日: 1978/09/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    小児の脳底動脈閉塞症例を報告し, 小児文献報告例の分析と成人例との対比を行なった. 症例は13才男子で, 発症4日前より軽度の発熱, 頭痛, めまいがあり, 右片麻痺, 構語障害, 軽度の意識障害で突然に発症した. 脳血管撮影にて前下小脳動脈と上小脳動脈間の脳底動脈の閉塞, CTスキャンにて橋左腹側部に低吸収域を認めた. 動脈硬化症, 心臓からの塞栓症などによる閉塞症とは考えられず原因は不明であった. 血流改善剤を主とする保存的療法にて症状は軽快, 退院した. 16才以下の小児における本症は極めて稀で本例を含め18例にすぎない. 成人例と比較すると, 1) 成人例同様男子に多い, 2) 成人例では脳動脈硬化症が主要病因であるのに対し, 小児例では特発性および先天性のものが多い, 3) 臨床症状は意識障害, 片麻痺または四肢麻痺, 瞳孔異常が主徴候で, 成人との間に差異は認められない, 4) 成人例では脳底動脈近位部の閉塞が多いが, 小児例では中部に多い, 5) 確定診断にはCTスキャンと椎骨動脈撮影が必要である. 予後は, 成人例では極めて不良であるが, 小児例では比較的良い.
  • 矢野 英二, 北原 佶, 有馬 正高
    1978 年 10 巻 5 号 p. 359-371
    発行日: 1978/09/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    乳児の頸定遅延の要因について分析するため, 正常乳児250例, 異常児152例の頸定の時期を検討した. また, 正常乳児28例, 脳性麻痺児 (以下C. P. 児) 16例, 精薄児 (M. R. 児) 11例, Werdnig-Hoffmann病 (W.-H. 病) 4例, Congenital Progressive Muscular Dystrophy (CMD) 3例, 水頭症4例については, Traction Responseの表面筋電図学的研究を行なった. またLandau responseと頸定の相関についても検討した.
    1) 正常乳児250例の頸定の時期は (3.20±0.51月) で, 3ヵ月にピークがあり, 153例 (61%). 4ヵ月までには, 1例を除き全例可能となった.
    2) C. P. 児 (6.11±3.82月), M. R. 児 (5.30±2.31月), Down症候群 (5.68±1.74月) CMD (5.63±2.95月) の患児では半数以上に頸定の遅延を認めた (mean±SD).
    3) Traction responseの表面筋電図学的検討は, 頸定の完成した正常児群では, 中間位までに活発な筋放電を認め, 垂直位では, 消失するパターンを得た. 3生月未満の末頸定群でも, 引き起こしと同時に前頸筋に放電が得られたが, 垂直位になっても持続する例がかなりみられた. 頸定が完成している乳児でも, 未完成の乳児でも, 引き起こしで放電が誘発されるので, 2ヵ月未満の成熟乳児の頸定の未完成が立ち直り反射の未発達によるとする記録は得られなかった. C. P. 児群では, 全般的にVoltageが高く, 不規則で, 特に垂直位の状態においても不安定な筋放電の持続を認め, 筋トーヌスの保持機能に障害があるものと推測された. 重度精薄の患児では, 抗重力筋の収縮がほとんど起こらず, 反射機構に何らかの異常があると考えられた. W.-H. 病およびCMDでは, 全体的に筋活動が著明で, 垂直位でも持続的な筋収縮を認め, 頭部立位保持の努力がうかがわれた.
    4) Landau responseと頸定の相関では, 正常乳児未頸定群, 頸定群ともにNeck extentionは可能であるが, C. P. 児, M. R. 児の未頸定群では, 約半数にしか達していない. 一方, C. P., M. R. 児の頸定群では, 全例可能であった.
    5) 頭部の垂直保持機構に関しては, 少なくとも, 筋肉, 結合織, 骨, 靱帯などの支持組織の発達が十分であり, また中枢神経系, 特にRighting reflexを中心とした姿勢反応の成熟が必要で, 加えて, 安定した筋トーヌスの保持機能の発達が大きく関与しているものと考えられた.
  • 玉川 公子, 佐々木 日出男, 舟橋 満寿子, 篠原 猛, 森松 義雄
    1978 年 10 巻 5 号 p. 372-381
    発行日: 1978/09/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    発達のごく早期に広汎な脳損傷をうけ, 運動発達, 知的発達がほとんどみられないまま, 持続的にいわゆる植物状態を示す “失脳状態” の小児19例の頭皮上脳波所見につき検討し, さらにそのうち10例について剖検所見と対比し次の結果をえた.
    1. 覚醒時背景脳波は非律動性徐波活動を示した. また背景脳波が平坦波を示した症例では, 半球病変が特に高度であった.
    2. 睡眠記録では, 瘤波・紡錘波を欠き, また背景活動が覚醒時と区別がつかない例も認められ, 睡眠発現機構に何らかの異常の存在が推定された.
    3. 薬物速波を欠くものが多かった.
    4. 発作活動は多焦点性で半球の広汎な病変と対応していた.
    5. 経時的に徐波化, 非律動化が進み, 病変の進行が考えられた.
  • 中村 富久美, 工藤 亨, 南 良二, 軽部 幸治, 津川 敏, Kiyotaka HORINO
    1978 年 10 巻 5 号 p. 382-388
    発行日: 1978/09/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    症例1は2才女児で6ヵ月頃より精神運動発達の遅滞がみられ, 1才6ヵ月ころには退行性変化をきたし, さらに痙攣が出現した. ガルゴイル様顔貌はなく, 肝・脾腫, cherry red spotはみられない. 椎体の変形, 末梢リンパ球の空胞化を認め, 末梢白血球の4-methylumbelliferyl-β-D-galactosidase (β-galactosidase) 活性は対照の2.1%であった.
    症例2は症例1に次いで2回目の妊娠であり, 妊娠第17週に羊水穿刺をおこない第24週に中絶した胎児である. β-wgalactosidaseは羊水上清で対照と差がなく, 培養羊水細胞では対照の2.3%と低値であった.
    胎児の肝・脳におけるβ-galactosidaseは各々6%, 10%であり, また, GM1-ganglioside-β-galactosidase (GM1-β-galactosidase) は1.1%, 1.3%と著明な低下をみた.
    電顕的に大脳基底核部の神経細胞内にmembranous cytoplasmic bodyあるいはzebra body様構造物を認めたが, 生化学的検索で脳のtotal N-acetyl-neuraminic acid (NANA) は対照に比しわずかに増加していたがその分画で, GM1-gangliosideの占める割合は対照と差がみられなかった.
  • 加我 牧子, 水野 美彦, 鈴木 昌樹
    1978 年 10 巻 5 号 p. 389-396
    発行日: 1978/09/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    癩癇大発作後, 喚語困難が著明な健忘失語を呈した11才男子症例. 失読, 失書, 失算, 左右失認, 手指失認, 構成失行等の優位半球頭頂後頭葉障害に起因するとされるGerstmann症候群を合併していた.
    言語理解, 言語表出とも障害され, 文字言語では読み書きとも仮名より漢字の障害が強く, 回復も仮名の方が早かった. 読字より書字が先に回復し, 言葉より計算が先に回復した. 日常会話はほぼ2ヵ月で殆んど不自由がなくなったが, 1年後にもなお国語, 英語は不得手である. 小児癩癇はきわめて多い疾患であるが, 発作後の失語症は記載されているわりには頻度が低く, 日常臨床で遭遇することは比較的稀である. その原因は不明であるが, 大脳機能障害として病態を把握し, 病変部位, 性質の診断を行なうことが治療上重要である.
  • 舘 延忠, 堀野 清孝, 城 守, 篠田 実
    1978 年 10 巻 5 号 p. 397-402
    発行日: 1978/09/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    15才男子のKears-Shy症候群を報告した. 9才時より両側眼瞼下垂を認め, 眼球運動障害も認めた, 11才時に両側感音性難聴を認め徐々に増悪していった. 同時に耳鳴, 髄液蛋白増加も認めた, 15才時に右手のミオクローヌス様運動と脳波異常, 網膜色素変性, 心筋伝導障害を認めた, 骨格筋, 肝の生検, 光顕上では異常を認めなかったが, 電顕上では異常なミトコンドリアを認めた. ミトコンドリアの異常は, 肝において著明であった. 本症候群は心筋伝導障害を伴ない, 完全房室ブロックにより突然死が来る事が報告されている. 本症候群は, 従来, 内科領域で報告されてきたが, ほとんど, 小児期に発症しているので心筋障害を予知するためにも, 小児科領域での症例の集積がなされるべきと思われる.
  • 小林 啓志, 杉山 義昭, 外山 孚, 伊藤 寿介
    1978 年 10 巻 5 号 p. 403-408
    発行日: 1978/09/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    生下時より播種性皮膚血管腫と4ヵ所の頭蓋骨血管腫を伴うテント上硬膜動静脈瘻のみられた男性症例を6年間その経過を観察した. 両側中硬膜動脈と右後頭動脈と, 静脈洞交会の上方て球状に拡大した上矢状静脈洞との間に吻合があり, これより尾側の上矢状静脈洞は造影されなかった. 造影剤は上矢状静脈洞内を前方に逆流し, 拡大蛇行した上大静脈から浅中大脳静脈を経て脳底部に還流した. 島静脈も著明に拡大していた.
    生後2ヵ月に気脳写, 脳室写を行ない, 閉塞性水頭症と診断され, 脳室腹腔短絡術が施行された. 7オの現在特別の心身の発育障害はなく, 元気に通学している. 硬膜動静脈瘻の血管写像の特異性を述べ, 成因および播種性血管性病変の合併につき文献的に検討を加えた.
  • 武部 幸侃, 野村 由美子, 東 卓司, 高田 正俊, 羽根田 敏
    1978 年 10 巻 5 号 p. 409-415
    発行日: 1978/09/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    上気道感染症後に急激に異常眼球運動 (dancingeyes, opsoclonus), 全身の持続的なミオクロヌスが出現したMyoclonic encephalopathy of infants (Kinsbourne) の二乳児例を報告した.二症例共に入院時, 髄液細胞数の軽度の増加を認め, 症例2では発症後5ヵ月間増多が続いた. 症例1では抗核抗体が陽性で, ステロイド投与で陰性, 中止で陽性化した. 内分泌学的, X線学的に神経芽細胞腫は発見されず, ウイルス学的検索でも有意の抗体価の上昇を示したウイルスはなかった. 治療はACTHの連日投与後, ステロイド剤の間欠投与が有効と思われた. 本症は悪性腫瘍, 感染など種々の原因で発症する症候群であり, opsoclonusの責任病巣は脳幹と推察され, 今回の二例からは本症は脳炎の一種と考えられた.
  • 水野 美彦, 加我 牧子, 鈴木 昌樹, 福岡 和子, 瀬川 昌也
    1978 年 10 巻 5 号 p. 417-422
    発行日: 1978/09/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    9才1ヵ月の時痙性歩行て発症した筋萎縮性側索硬化症 (以下ALSと略) の一女児例を報告する. 患児は発症時より内反尖足の傾向を有し, 症状ば緩徐進行. 12才の時, 上肢にも症状出現12才1ヵ月入院時痙性歩行, 内反尖足, 四肢遠位部筋萎縮手指線維性攣縮, 腱反射亢進, 病的反射陽性などの所見が認められた. 検査所見では筋電図で四肢遠位部にfasciculationが認められ, 腓腹筋生検では脊髄前角細胞障害の像が認められた. diazepamが歩行障害に多少の効果を示した.10才以前発症のALSは文献的に報告を見ない.
  • 前川 喜平
    1978 年 10 巻 5 号 p. 423-424
    発行日: 1978/09/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
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