脳と発達
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11 巻, 4 号
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  • 高松 徳光, 飯沼 一宇
    1979 年 11 巻 4 号 p. 278-284
    発行日: 1979/07/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    Na塩型Phenytoin (PHT, Aleviatin) 及び, 我国で一般に用いられている遊離酸型PHTの2種の剤型を, 19例のてんかん患者に投与し, その血中濃度の上昇の度合い, 平衡状態に至った時点での血中濃度の差の有無を検討した.
    15例においては遊離酸型PHTを2週間投与し, その後2週間休薬した後, Na塩型PHTを投与した.
    1例においては, Na塩型PHTを1週間投与後, 休薬せずに直ちに遊離酸型PHTに変更した.
    3例においては, 以前から遊離酸型PHTを服用しており, 休薬せずNa塩型PHTに変更した.
    まず血中濃度の上昇の速さを見る為に, 15例において, 服薬後第2日目及び第4日目の血中濃度の値, あるいは上昇の度合いを比較した場合, Na塩型PHTが遊離酸型PHTよりすぐれていたのは3例, 遊離酸型PHTがNa塩型PHTよりすぐれていたのは5例であった.
    次にNa塩型, 遊離酸型PHTの血中濃度の差の比較は, 平衡状態に至った時点に行なった3回の測定値の平均を統計学的に比較した. これによると, Na塩型PHTが遊離酸型PHTより高値を呈したのが2例 (1例はP<0.01, 1例はP<0.05), 遊離酸型PHTがNa塩型PHTより高値を呈したのが4例であり (P<0.05), 残り13例は統計学的に有意差がなかった.
    以上の結果よりNa塩型PHTの吸収効率が遊離酸型PHTよりすぐれているとは限らなかったが, これは投与されたNa塩型PHTの粒径が平均260μと欧米の製品に比し3-5倍大きかったことが原因と思われた.
  • 小松 せつ, 成瀬 浩, 永山 素男
    1979 年 11 巻 4 号 p. 285-294
    発行日: 1979/07/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    出生時の仮死状態の脳発達過程に及ぼす影響の研究を行ない, 特に出生時仮死状態が脳の蛋白質代謝障害を示すことを見出した. 実験動物としては, 次の3群のラットを用いた.
    A群満期仮死群: 満期対照群
    正常満期出産により, 最初の仔1匹を娩出させたあと帝王切開をおこない, 胎仔を含んだ子宮を母ラットから切り離し, 仮死状態で一定時間室温に放置した. 処置をおこなわない仔ラットを満期対照群とした.
    B群早産仮死群: 早産対照群
    自然分娩の予定時刻より3-6時間前に帝王切開をおこない, 仔ラットの半分を仮死状態で10分間子宮内に放置したあと呼吸を開始させた. 他の半分の仔ラットは速やかに子宮からとり出し直ちに呼吸を開始させた. 後者を早産対照群とした.
    C群低蛋白仮死群: 低蛋白対照群
    妊娠ラットを9%の蛋白質を含む餌で飼育し, 以下の処置はA群と同様に行なった. 処置を行なわない仔ラットを低蛋白対照群とした.
    これら3群の動物を用いて, 生後3日目のラットについて脳蛋白質へのC14-ロイシンのとりこみ率を測定した.A群のとりこみ率は, 仮死状態が30分に及んでも変化がなかったが, B群およびC群の仮死群においては各対照群に比してとりこみ率は著明に低下した.
    またC14-ロイシン及びC14-リジンを用い, 生後3日, 7日, 14日, 53日の早産仮死群について脳蛋白質のハーフライフを測定した.早産仮死群のハーフライフは満期対照群に比して著明に延長した. 即ち, 発達時の脳蛋白質代謝の阻害が見出されたのである.
    これらの蛋白質代謝の阻害の化学的背景の一つとして, これらの阻害がエネルギー源の減少にもとつくか否かを知るために, 出生直後の脳のATP量を測定した結果, ATP量との関連はみとめられなかった. 幼弱動物は無酸素症に対して高い抵抗性をもつというのが一般的な概念であるが, 一方我々の実験において, 早産または低栄養の胎仔の場合は出生時仮死に対して脆弱であることを, 蛋白質代謝阻害の側面から見出した.
  • その手技について
    中川 義信, 神山 悠男, 松本 圭蔵, 河野 威
    1979 年 11 巻 4 号 p. 295-299
    発行日: 1979/07/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    脳血管撮影法は頭蓋内疾患ことに血管性病変を検討するうえで必須の診断手技である. しかし新生児・乳児に対する脳血管撮影ことにカテーテル法による方法は技術上の困難さのみならず合併症を危惧して敬遠される傾向がないとはいえない. われわれは過去2年間に大腿動脈よりカテーテルを挿入し, 51名の新生児および体重10kg以下の乳児に対し選択的脳血管撮影を積極的に行なってきた. すなわち全身麻酔下に右鼠経部の皮膚切開を行ない, 大腿動脈を露出したのち, 全身ヘパリン化を行ない, カテーテルの挿入を行なった. 次いで透視下にカテーテルを大腿動脈, 大動脈弓を通し右総頸動脈へ挿入し右頸動脈撮影を行ない, さらに必要があれば左頸動脈, 左椎骨動脈撮影の順序で検査を進めた. 撮影が終了すれば, 血管壁を8-0ナイロン糸を用いて縫合し修復した. 2つ以上の動脈撮影 (two vessel study) は47例に. 3つ以上の動脈撮影 (three vessel study) は24例に行なった. また血管撮影により神経学的に障害が生じたと思われる例はなく, その他この手技により生じたと思われる合併症は経験しなかった. ただし椎骨動脈撮影後に一過性の心停上をみた一例があったが, 適切な処置により何ら障害を残さず回復した.
  • 第3編臨床発作出現時期と臨床発作像
    堀田 秀樹
    1979 年 11 巻 4 号 p. 300-311
    発行日: 1979/07/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    点頭てんかん2例, E. I. E. E. 1例を対象とし, 計5回の終夜睡眠ポリグラフィーを行ない, 臨床発作の出現時期, 臨床発作像について検索し, 次の結果をえた.
    1) 点頭てんかんの例では臨床発作が覚醒後間もなくに出現した. 1例においては, REM睡眠期のうち真夜中に出現したものに臨床発作時と同様の脳波像, 眼球運動がみられたが, 臨床発作には至らなかった. E. I. E. E. の例では臨床発作はNREM睡眠時に出現することが多いが, 覚醒およびどの睡眠段階からでも出現し, 発作終了後REM睡眠又は覚醒に移行する場合が多かった.
    2) 臨床発作時脳波は点頭てんかんの例では発作性過同期化を示し, E. I. E. E. の例では徐波と棘波の混在したものが全領野に群発性に出現し, 臨床発作の前後では脳波の平坦化が著明であった.
    3) 臨床発作の持続時間は点頭てんかんの例では1秒前後で発作間隔は3-10秒に1回であった. シリーズ内の個々の臨床発作の経過をみると発作持続時間は徐々に長くなり, 一定のレベルに達したあと徐々に短かくなるものが多く, その他に最初が最も長く, 徐々に短かくなるものもみられた. 発作間隔はほとんどの場合発作持続時間が長いと短かく, 発作持続時間が短いと長い傾向にあった. E. I. E. E. の例では発作持続時間は平均5-7秒であり, 発作間隔は平均20秒前後で, 1シリーズ内の臨床発作の経過をみると発作持続時間には一定の傾向がなく, 発作間隔については臨床発作が終末に近づくほど短かくなる傾向にあった.
    以上の結果より点頭てんかん, E. I. E. E. とも臨床発作の焦点は皮質下であり, 臨床発作出現時期より橋・中脳網様体に存在するカテコールアミン作動性ニューロンと密接な関係があると推定された.
  • 脊髄腔造影, 脳室撮影, CT cisternography
    中村 茂俊, 山田 博是, 景山 直樹
    1979 年 11 巻 4 号 p. 313-320
    発行日: 1979/07/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    非イオン性水溶性造影剤metrizamide (Amipaque) を用いて脊髄腔造影, 脳室撮影, CT cisternographyを行なった. 症例は生後9日から7才までの小児32例で, 3分の2は1才以下の症例であった.
    脊髄腔造影はすべて腰椎穿刺によりmetrizamideを注入した. 腰部の造影には低濃度の造影剤を用いても良好な造影が得られたが, 頸部の造影にはより高濃度の造影剤を必要とした. 脳室撮影は大泉門からの脳室穿刺を行ない, 高濃度の造影剤を少量用いた. CT cisternographyには低濃度のmetrizamideを注入した例が多かった.
    副作用として, 頭痛, 嘔吐, 体温上昇がみられたが頻度は少なく一過性で, 重篤な合併症はみられなかった. metrizamide注入前後の髄液の性状変化についても検討した. metrizamideは安全性が高く副作用の少ない造影剤であるので小児領域のcontrast studyに適していると思われた.
  • 須田 年生, 二瓶 健次, 鴨下 重彦
    1979 年 11 巻 4 号 p. 321-327
    発行日: 1979/07/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    全外眼筋麻痺, 運動失調, 腱反射消失を伴った特発性多発性神経炎の13才女児例を報告し, 60例の文献的考察を行なった. 患児は, 上気道感染の8日後に複視, 構音障害, 嚥下障害, 歩行時のふらつき, 手足のしびれ感を主訴として入院した. 外眼筋麻痺, 眼瞼下垂, 咬筋, 顔面筋, 頸部屈筋の筋力低下, 小脳性運動失調, 深部腱反射の消失を認め, Fisher症候群と診断した. 筋電図は, 下肢筋で多相性で高振幅NMUを示した. 髄液における蛋白細胞解離は, 発症より第18病日目に初めてみられ, 第74病日まで続いた. 第35病日には, 躰幹の運動失調および構音障害は消失した. 第43病日には, 知覚麻痺が消失した. 軽度の外転神経麻痺と腱反射消失が第100病日まで続いたが, 以後軽快し, 完全治癒した. 再発は2年以上ない.
    文献上, 60例のFisher症候群のうち, 15才以下の例が22例ある. 鑑別疾患としては, Guillain-Barre症候群, 脳幹脳炎, 急性小脳失調が挙げられ, 臨床像は互いに異なるが, 病因及び予後の点で, Fisher症候群との類似点をもつと思われる. 本症候群は, 全外眼筋麻痺 (45/57), 強度の運動失調 (60/60), 腱反射消失 (60/60), 再発例が少ない (2/60) といった臨床的特徴をもち, 比較的, 小児期に発生頻度が高いことを指摘した.
  • 折口 美弘, 高本 京子, 大田 典也
    1979 年 11 巻 4 号 p. 328-334
    発行日: 1979/07/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は3才男児で, 3才2ヵ月の時, 感冒様症状があり, 数週間後脱力と歩行障害があり多発性ニューロパチーの診断をうけ, ステロイド剤投与. 約3ヵ月で軽快. 初発から4カ月後にはステロイド剤を中止し, 全く異常を認めなかったが, 服薬中止後2ヵ月 (初発より6ヵ月後) して, 再び同様の症状が発現した. 再発時ステロイド剤使用前に, recurrent poly-neuropathyの診断の下に右腓腹神経生検を行ない, 有髄線維殊に大経線維の減少, 貪食細胞の出現とonion-bulbの初期段階の所見を得た. 無髄線維には変化は認められなかった.
    再びステロイド剤を使用し, 1週目よりつたい歩き可. 3週目には約20mの独歩可能になり, 5ヵ月目よりステロイド剤を中止しているが, 現在全く異常を認めていない.
    この例のように1回目の再発でonion-bulbが認められたことよりonion-bulb形成はこの疾患でかなり早期にすでに存在するといえる.
  • 小川 加代子, 泉 達郎, 福山 幸夫
    1979 年 11 巻 4 号 p. 335-342
    発行日: 1979/07/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    知能障害, てんかん, 透明中隔嚢胞, 多発小奇形を有し, 経戸中に新生児低血糖症及びケトーシスを伴う低血糖症を示し, GH, ACTHの分泌不全の関与が考えられる症例を報告した. この症例を通して, 中枢性起源の低血糖症に関し, 一次性の脳障害が, 視床下部・下垂体系の機能不全を介して, ケトーシスを伴う低血糖症として発現することを考察した.
  • 松島 昭広, 多賀 俊明, 折居 忠夫, 松田 佳子, 勝沼 信彦
    1979 年 11 巻 4 号 p. 343-352
    発行日: 1979/07/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    Carbamyl phosphate synthetase (CPS) 低下を伴えるOrnithine transcarbamylase (OTC) 欠損症による先天性高アンモニア血症の6才7ヵ月女児例を報告した.
    患児は4才11ヵ月頃より, 嘔吐, 夜間に興奮状態を繰り返えし認めた. 高アンモニア血症, オロット酸尿, 血清グルタミン等の上昇を認め, 肝尿素サイクルの各酵素活性では, CPS活性が対照の5%, OTC活性は2.5%と著明な低下を認めた. OTCについては酵素学的性状の検索にてmutant enzymeを示唆する結果は得られなかった. 本症例の如く, CPS活性の著明な低下を伴える例はなく, OTC欠損症のさらなる解明に貴重な症例と考える.
    適当なカロリー補給と蛋白価を考慮した低蛋白食, 経口的アミノ酸投与により症状の発現阻止と血中アンモニア値のコントロールを行ない, 7才の現在, 正常な精神運動発達を認めている.
    母親はアンモニア負荷試験によりheterozygous carrierを示した.
  • 玉井 勇, 武井 忠夫, 前川 喜平
    1979 年 11 巻 4 号 p. 353-359
    発行日: 1979/07/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    点頭てんかんと診断した1才2ヵ月の男児および7ヵ月の女児に合成ACTHを, 前者には0.5mg/日筋注を29日間, 後者には0.25mg/日筋注を14日間施行し, 治療の開始前・終了時, 終了後1-2ヵ月後に頭部のコンピューター断層撮影 (CT) および脳波の観察を行なった所, 治療終了後, 脳波は著明に改善したがCT写真上明瞭な脳の萎縮像が認められた. これは治療終了後1-2ヵ月ではやや回復を見たものの, 治療開始前に比較してなお萎縮像は持続した.
    乳児期における本療法については, 脳波所見のみでなく, 精神運動発達の方面から今後さらに検討を要すると思われた.
  • 中村 隆一
    1979 年 11 巻 4 号 p. 360-362
    発行日: 1979/07/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
  • 桜川 宣男
    1979 年 11 巻 4 号 p. 363-364
    発行日: 1979/07/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
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