呼吸障害, 重症仮死などの, high risk新生児に, 早期より積極的に髄液検査, CTを施行し, 頭蓋内出血と診断された36症例 (脳室内出血14例, 脳内出血4例, 硬膜下出血2例, クモ膜下出血16例) につき検討し, 次の結果を得た.
1) 臨床症状としては, 痙攣 (39%), 筋緊張低下 (58%), 無呼吸発作 (47%), 徐脈 (58%), を高頻度に認めたが, 頭蓋内出血に特徴的とはいいがたい.
2) 臨床検査所見としては, 著明な貧血 (17%), 10%以上のヘマトクリット値の低下 (11%), 高血糖症 (42%), などが認められた.
3) 髄液分光分析を施行しえた脳室内出血 (12例), 脳内出血 (4例) では, 全例にoxyhemoglobin peak (415nm) が認められた.これに対して, 14例のクモ膜下出血では, oxyhemoglobin peakが認められたのは3例のみで, 他の11例はbilirubin peak (460nm) が認められた.
4) 髄液/血液糖比が0.4以下のhypoglycorrachia (髄液糖減少) が, 脳室内出血にのみ, 高率 (56%) に認められた.
5) 髄液糖減少の出現には, 通常出血後数日~2週間を要し, 早期診断には, 髄液分光分析がより適しているものと思われた.
以上の結果から, 呼吸障害, 重症仮死などのhigh risk児に, 上記の臨床症状, 検査所見が認められ, 頭蓋内出血が疑がわれた場合は, まず髄液検査を施行し, 髄液分光分析を行なう.oxyhemoglobin peak, 髄液糖減少が認められた場合には, 治療方針を明らかにするために, CTにより, 正確な頭蓋内出血の部位, 程度の診断を行なうべきである.
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