点頭てんかん29症例について, 聴覚神経系の障害の有無を検索した.障害の性質や部位を明らかにする目的で, 聴覚発達の評価を,(1) 聴性行動の発達指数を田中・進藤による「乳幼児の聴覚発達チェック項目」で示し, かつ,(2) 音に対する行動反応の域値を条件詮索反射聴力検査で測定することで行ない, 一方, 他覚的には,(3) 聴性脳幹反応で末梢から脳幹の聴神経系の障害の有無を検索し,(4) 音および光刺激による大脳誘発電位で, 大脳レベルの反応の有無を調べ, 検討した.その結果,(1) 聴性行動の発達指数は全例に遅れがあり, 重度遅延75.9%, 中等度遅延24.1%であった. (2) 条件詮索反射聴力検査では中等度以上の域値上昇を86.2%に認め, 行動面からは, 見かけ上, 末稍性難聴に類似しているが,(3) 聴性脳幹反応では, 末梢性難聴3.4%, 脳幹障害24.2%, 正常72.4%であった. (4) 大脳誘発電位は, 音刺激に反応のある者が20.7%, 光刺激で反応のある者が41.4%であった.
以上より, 点頭てんかんでは, 行動観察上は, 見かけ上, 末梢性難聴のように音に対する反応の乏しいものが多いが, 約1/4の症例は脳幹障害を有し, 約3/4の症例ではそれ以外の部位の脳障害が疑われた.
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