新生仔期の低酸素症がその後の脳組織発達におよぼす影響を
3H-チミジンオートラジオグラフィーにより細胞増殖動態面から検討した.
実験ではJcl: ICR系生後2日目の哺乳マウスに30分間無酸素負荷を行い, 生存マウスを低酸素群とし, 無処置同胞マウスを対照群とした.
低酸素群の体重・体長は生後20日目までは増加が不良で対照群に比し有意に低値を示したが, その後は回復し有意差はなくなった. 脳重量も生後10日目では対照群に比べ11%減少していたが, 生後20日目には有意差はなくなった.
負荷直後の低酸素群マウスの視床・小脳には神経細胞の変性が存在した. 低酸素群の分裂指数や標識率は, 生後5日目までは対照群より下まわっていたが, 7日目および10日目では対照群より高値をとり, 15日目以後には両群ほぼ等しくなった
生後2日目の低酸素群小脳外顆粒層細胞の世代時間は対照群に比べ約2時間延長したが, それは主としてG
2期の延長によるものであった. 一方, 生後7日目では低酸素群のそれは対照群に比し約2時間短縮しており, G
1期の短縮がその主因であった.
以上より, 細胞増殖動態の面で, 生後2日目における30分間の低酸素負荷がおよそ5日目まで抑制をもたらすこと, その後はcatch up現象が生ずること, そしてその抑制と回復は別の機構により行われることが示唆された.
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