我々は環軸椎亜脱臼により, 高位頸髄圧迫症状を呈し, MRIにより確定診断出来たDown症候群の3歳女児の症例を経験した.
症例は, 呼吸困難と四肢の筋緊張低下を主訴に, 小児科入院となった.蛙肢位を呈し, 呼吸は浅く, 血液ガスでは, pH7.371, PO274.6mmHg, PCO252.6mmHg, BE3.5と呼吸性アシドーシスの所見を認めた.前屈位, 後屈位の頸椎側面レントゲン写真より, 環軸椎の前方亜脱臼を認めたため, 四肢の筋緊張低下および呼吸困難は, 高位頸髄圧迫症状によるものと推察した.頸髄MRIを施行したところ, C1からC2にかけての頸髄の著明な圧迫所見を認めた.環軸椎の亜脱臼をきたし脊髄の圧迫症状を呈したとする報告は, 幼小児期ではまれである.
Down症候群に環軸椎不安定性が高率に合併することは, 文献的にも知られた事実である.したがって, Down症候群の患児を扱う場合, このような潜在的な危険性を, 有している事実を常に考慮すべきであると考える.
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