ラット発育期脳 (生後4日, 7日, 10日目脳) および成熟脳から海馬切片を作成し, 静止時におけるエネルギー消費率, 酸素消費率を測定した. さらに神経活動とエネルギー代の相関をしらべるために各切片のSchaffer側枝を刺激し, CA
1野の錐体細胞層からシナプス電 (集合電位, PS) を記録した. 4日, 7日, 10日目および成熟脳からの海馬切片のエネルギー消費率はそれぞれ1.09, 2.93, 3.42, 4.75~Pmmol/g DNA/分であり, 酸素消費率は0.13, 0.24, 0.47, 0.80~O
2mmol/g DNA/分であり, いずれも脳発育とともにエネルギー代謝率は増大したが, 幼若脳はエネルギー産生をより嫌気的代謝に, 成熟脳はより好気的代謝に依存して行く過程を数量的に表示できた. 各切片を無酸素, 無グルコース条件下においた時の神経活動シナプス電位 (PS) の維持と高エネルギーリン酸レベルの相関から, PSの維持には各切片のATPレベルの維持の他に幼若脳, 成熟脳ともにグルコースの存在が必須であることが明らかとなった.
抄録全体を表示