脳と発達
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29 巻, 3 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
  • 厚東 篤生
    1997 年 29 巻 3 号 p. 182
    発行日: 1997/05/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
  • 田中 晴美
    1997 年 29 巻 3 号 p. 183-189
    発行日: 1997/05/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    母体の環境因子による脳発達障害に関して, 防止あるいは減少を最終目的として検討を行った. 胎児性アルコール症候群およびその不全型ラットにおいて, エタノールと同時に投与した亜鉛によりある程度の脳機能修復の所見を海馬のニューロンにみた. 妊婦の高カフェイン摂取と関連して, その子供に行動異常を伴う脳障害の存在が推定された. X線小頭症ラットにおいて, 酸素ラジカルの除去作用を有するビタミンEの投与を行うと, 大脳異常は量的にはかなりの程度まで防禦された. 銅のキレート剤である2塩酸トリエンチンによるマウス胎仔大脳中の低銅状態と関連した脳発達障害出現の可能性は, Wilson病妊婦では低い. 胎児性タバコ症候群において, 1日20本以上のタバコにより脳発達障害が認められた.
  • 瀬川 昌也
    1997 年 29 巻 3 号 p. 190-192
    発行日: 1997/05/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    The basal ganglia modulate voluntary movements involving the neural circuit of the cortex-basal ganglia-thalamus-cortex.
    The basal ganglia receive all of the afferents at the striatum and project the efferents from two output structures, the medial segment of the globus pallidus and pars reticulata of the substantia nigra. Besides the cortex, the basal ganglia receive imputs from pars compacta of the substantia nigra (SNc) and centromedian nuclei of the thalamus.
    The afferent from the SNc is the nigrostriatal (NS) dopamine (DA) neuron and has important roles in functional modulation of the basal ganglia. As for efferents, the basal ganglid also have output projections to the superior colliculus and pedunculo- pontine nuclei. In the basal ganglia, the striatum has two efferent pathways; one is the direct projection which projects directly to the output structure and the other is the indirect pathway which projects to the output structures via the lateral segment of the globus pallidus and the subthalaniic nuclei, changing synapses at these nuclei.
    The lesions in the basal ganglia show various movement disorders or involuntary movements depending on their foci. Basal ganglia lesions also develop symptoms age dependently; a certain lesion develops dys-tonia in younger brains, while revealing parkinsonism in adult or older brains. This age dependency depends on the difference in the course of the functional maturation of each component and pathway of the basal ganglia.
    At this symposium we tried to show the basic pathophysiologies of age dependency by discussing basal ganglia disorders in children compared to those in adults and referring to the basic science of the basal ganglia.
  • 成人例
    橋本 隆男, 柳澤 信夫
    1997 年 29 巻 3 号 p. 193-198
    発行日: 1997/05/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    パーキンソン病の寡動は, 淡蒼球内節の活動充進により視床-大脳皮質の興奮性投射が過剰に抑制され, 大脳皮質の興奮性が低下することにより生じる. これに対し, 舞踏病並びに類似の病態であるバリスムでは, 淡蒼球内節から視床に対する抑制が低下し, 視床から大脳皮質への投射が脱抑制を受け皮質が過剰興奮となると考えられる. 素早い不随意運動を駆動するphasicな神経活動もまた基底核で生じる可能性がある. 特発性ジストニアでは, 安静状態, 運動負荷時ともにレンズ核, 外側前運動野, 補足運動野の活動充進が認められている.関連する基底核-視床系の異常はいまだ明らかでない.
  • 小児例
    野村 芳子
    1997 年 29 巻 3 号 p. 199-205
    発行日: 1997/05/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    大脳基底核の障害による不随意運動には舞踏運動, バリスム, アテトーゼ, ジストニー, 振戦, チック等があり, それぞれ発現する年齢および経過には特徴がある. 例えば姿勢ジストニーは小児期にみられるが, 動作ジストニーは遅れて出現する. このような臨床像の年齢依存性は, 罹患される大脳基底核内個々の伝達回路, および出力系の発達過程が異なることによると考えられる. 本文では, 著明な日内変動を呈する遺伝性進行性ジストニー (瀬川病), 若年性パーキンソニズム, 特発性捻転ジストニー, 舞踏運動, バリスム, チックの病態を述べ, 主に20歳までに発症する大脳基底核疾患の病態の特異性についてその年齢依存性の観点から解説する.
  • ジストニーに対する定位脳手術の経験から
    島 史雄, 石堂 克哉, 加藤 元博
    1997 年 29 巻 3 号 p. 206-212
    発行日: 1997/05/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    特発性ジストニーの小児期発症例は頸部, 躯幹, 四肢に広がる全身性ジストニーに, 思春期以後発症例は顔面, 頸部, 上肢に限局する局所性ジストニーになる傾向がある. これら各種のジストニー37例を対象に, 視床VL核手術または後腹側淡蒼球手術を行った. 小児型ジストニーは淡蒼球手術で著しく改善されるが視床手術で変化を受けにくいのに対し, 成人型ジストニーは視床手術で軽減され淡蒼球手術には反応がない症例が多かった. 淡蒼球内節は, 視床に向かう上行性遠心路と歩行や姿勢中枢である脚橋被蓋核領域に向かう下行性遠心路がある. 特発性ジストニーは, 発達時期が異なる二つの淡蒼球遠心路を背景に, 発症年齢により症状分布に差異が生じると思われる.
  • 彦坂 興秀
    1997 年 29 巻 3 号 p. 213-219
    発行日: 1997/05/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    我々は, 視覚誘導性サッケードと記憶誘導性サッケードの課題を用い, 発達と加齢に伴う眼球運動の変化を調べた. その結果, たとえばサッケードの潜時は, 5歳から15歳くらいの問に急激に減少し (発達), 30歳をすぎてから徐々に延長する (加齢) ことがわかった. また, 小児と高齢者では共通して, 抑制すべきときにサッケードを抑制できず, 記憶に基づいてサッケードをおこすべきときにそれができないということがわかった. このようなサッケードの抑制と発現の障害は, ヒトの大脳基底核疾患では年齢にかかわらず一層顕著に見られた. これらは, 大脳基底核の機能を局所的に障害したサルの眼球運動障害によく似ていた.
  • 児玉 和夫
    1997 年 29 巻 3 号 p. 220-226
    発行日: 1997/05/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    出産時脳障害による不随意運動を自験例の臨床経過から分析した. これらの症例はいずれも成熟児仮死分娩であった. 新生児期から乳児期初期にかけての頭部CTやMRIでは, 視床・被殻を中心とした基底核の変化を示す群と, 広範な低吸収域を示す群があった. 後者はその後画像上は改善していった例と, 白質が嚢胞状に崩壊していく例とに分かれた. 基底核変化群ではアテトーゼ様の不随意運動が中心になるが, 大脳白質障害が目立つと痙性麻痺の要素が混じてくる. こうした症状はほぼ正常から最重度までかなりの幅を持っていた. 出生直後の短時間窒息状態のケースでは画像上の変化はなく, 脳性麻痺にもならなかったが発達過程では手指操作での協調性の乱れがみられた. これらから出産時仮死による脳障害は臨床的には全か無かではなく, 一定の境界領域を持つと思われる. 最重度と思われた例でも一定の知的反応を示していた. 新生児期の経過と臨床像の推移を比較することは, 障害の診断, 発達予測, リハビリテーションにおいて重要であることを強調したい.
  • 麻生 昌子
    1997 年 29 巻 3 号 p. 227-233
    発行日: 1997/05/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    初発けいれんが熱性けいれんであった脳損傷児49例について, その臨床像や治療経過, けいれん予後等を後方視的に詳細に調査, 検討し, 以下のような結果を得た.脳損傷児における初発熱性けいれんでは, 半身または焦点けいれんや, 20分以上持続するけいれんが一般の場合より多かった. 4割の症例がてんかんに移行し, そのうちの8割が初発から2年以内にてんかんに移行した. また脳波上のてんかん発射の有無は, けいれん重積やてんかん発症の明確な指標とはなり得ず, てんかん発症の予防に対する抗けいれん剤の効果も疑問であった. 寝たきりの重症心身障害児例は49例中3例 (6%) であった. 発症したてんかん発作が抑制困難であった例は31.5%であり, 脳損傷児のてんかんとしては予後良好例が多かった.
  • 飯沼 和枝
    1997 年 29 巻 3 号 p. 234-238
    発行日: 1997/05/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    平成6年7月の時点で, 長野県内に在住していた最重度の心身障害 (大島分類1~4度に該当) を持つ学童の実態調査を行った. 最重度児童数は165名で, 養護学校在籍者の19.8%(小学生24.8%, 中学生12.2%) に相当した. 有病率は該当人口1,000人当り0.71, 小学生0.83, 中学生0.49で, 小学生の方が多かった.在宅療養児は43名, 26%であった. 平均在胎週数は38.5週, 平均出生体重は2,772gで, 超低出生体重児はいなかった. 障害の原因としては, 仮死産を中心とする周産期異常は27.3%で, 従来の報告より少なかった. しかし内訳をみると, 小学生群で低出生体重早産児の割合が増加していた. また妊娠出産経過に異常が認められなかった原因不明例が26.1%あり, その23.3%はlight-for-dates児であった. 関係者の懸命な努力にもかかわらず現時点で原因は不明であるが, 病歴調査などからすると原因の大部分は出生前にあると考えられた. そう考えると先天異常, 母子感染症, 出生前因子にこの原因不明を加えた広義の出生前因子は, 後天性を除くと68%となった. 以上から新生児脳障害の発生原因は, 周産期の一時的な低酸素, 虚血のみではなく, かなりの部分が出生前にあると推測できた.
  • (1) 正常早産児の特徴
    呉本 慶子, 早川 文雄, 渡辺 一功
    1997 年 29 巻 3 号 p. 239-243
    発行日: 1997/05/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    受胎後25週から30週までの正常予後の早産児を対象に生理的に出現する律動的αおよびθ群発をトポグラフィックに検討した.
    前頭部のα群発は25~26週に最も多く出現し, 30週までに急激に減少した. 側頭部のθ群発は27~28週に最も多く出現し, 前頭部, 後頭部の群発に比し出現頻度が高かった. 後頭部のθ波群発は前頭部と同様に25~26週の未熟な時期に多く出現し, 成熟するに従い著しく減少した. 片側性に, または両側性に出現する頻度を検討したところ, いずれの部位の群発も高頻度に出現する時期には片側性に出現した. 前頭部のα群発は25~26週に左側優位にみられたが, 後頭部のθ群発は25~26週に右側優位であった.
  • (2) 背景脳波活動低下所見との関係
    呉本 慶子, 早川 文雄, 渡辺 一功
    1997 年 29 巻 3 号 p. 244-248
    発行日: 1997/05/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    早産児にみられる律動的αおよびθ群発の出現頻度と背景脳波の活動低下所見との関係を検討した. 前頭部の律動的α群発は, 背景脳波が正常である場合に受胎後25~26週で最も多く出現した. この時期には活動低下所見の悪化に応じて出現頻度は減少した. 後頭部の律動的θ群発も高頻度に出現する時期である25~26週で, 活動低下所見の悪化に伴い出現頻度が有意に減少した. 側頭部のθ群発は, 25~26週と27~28週では活動低下所見に一致して出現頻度が減少した. 29~30週では高度活動低下例のみに減少を認めた.律動的αおよびθ群発の出現頻度は背景脳波活動の低下を鋭敏に反映し, これらの脳波活動を評価することは, 早産児脳波の判読の一助になると考えられた.
  • 金子 真人, 宇野 彰, 加我 牧子, 稲垣 真澄, 春原 則子
    1997 年 29 巻 3 号 p. 249-253
    発行日: 1997/05/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    漢字・仮名双方に読み書きの障害を認めた7歳の学習障害児における平仮名1文字の読み書き過程を検討した. 本例は呼称や復唱などの音声言語系は良好であり, 仮名1文字の読み書きに五十音表を用いることが観察された. 漢字の読み書きは仮名の読み書きよりも重篤で, 文字の読み書きである文字言語系に障害がみられた. 仮名1文字の読み書きは, 五十音表を積極的に用いることで正確になっていた. 五十音表は文字言語系と音声言語系の両方の過程をもつと考えられ, 本例は神経心理学的検査で視覚一視空間認知機能に低下が認められたため良好な音声言語系を主な手がかりとして五十音表から仮名文字の想起が行われたと考えた.
  • 重里 敏子, 樋口 隆造, 白井 高司, 宮代 英吉, 牟田 好博, 大西 晃生
    1997 年 29 巻 3 号 p. 254-260
    発行日: 1997/05/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    新生児期から弛張熱が1カ月間続き, その後発汗低下, 激しい顔色の変化, 自咬症による指と舌の変形を呈した. 1歳2カ月時, 発熱とけいれんが出現し, 昏睡となりheat strokeと思われる急性脳症を発症し脳障害を残した. 腓腹神経では無髄線維数の著明な低値, 小径有髄線維数の低値がみられ, 下腿皮膚の汗腺の支配神経線維は全く認められなかった. 臨床症状, 組織所見から遺伝性感覚・自律神経性ニューロパチーIV (hereditary sensory and autonomic neuropathy IV, HSAN-IV) と診断した. その後骨折を繰り返したが, 高体温の繰り返しはない.HSAN-W型では痛覚と発汗の障害が主症状であるが, 本例はheatによる脳症のような中枢神経障害を発症した症例である. 発熱に対する日常の管理が重要であった.
  • 笹川 睦男, 来生 陽子
    1997 年 29 巻 3 号 p. 261-263
    発行日: 1997/05/01
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    ミオクロニー発作, 失立発作, 欠神発作などの小型発作が重積し, valproic acid, ethosuximide, acetazolamideなどの抗てんかん薬に抵抗性であったが, ガンマグロブリン (180mg/kg/day) の著効したDoose症候群の4歳の女児を報告する. 2週間隔で静注し, 第3回静注後には発作が完全に抑制され, 脳波上の広汎性棘・徐波複合は消失した. Doose症候群の予後は多彩で, 小型発作重積が長期におよぶと予後不良のため, 治療法の1つとしてガンマグロブリンが試みられるべきである.
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