先天性水頭症と診断された男児を, 血中・髄液中抗トキソプラズマIgMの上昇, 胎盤のトキソプラズマ嚢腫の証明, polymerase chain reaction (PCR) 法によるトキソプラズマの特異的DNA (SAG1) の検出 (胎盤, 陽性;髄液, 血液, 尿, 母乳, いずれも陰性) により先天性トキソプラズマ症と診断した.生後早期より新生児用Ommaya貯留槽からの髄液排除を行うとともに抗原虫剤による治療を開始した.治療開始後, 血清および髄液トキソプラズマ抗体価の低下とともに髄液蛋白, 神経特異エノラーゼ (NSE), LDH値の低下および髄液糖の上昇を認めている.本症は早期に診断し適切に治療することにより重篤な症状を予防しうる疾患であり, PCR法による迅速な診断法はきわめて有用であった.しかし, 本症例のように髄液でPCR陰性を示す可能性もあり, 先天性トキソプラズマ症の診断には胎盤の検索も必要と考えられた.
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