傾眠傾向を呈した多発性硬化症の9歳女児例を経験した. 入院時の神経学的所見では, 傾眠, 情緒不安定, 視力低下, 輻輳障害, 協調運動障害を認めた. 髄液検査でIgG, ミエリン塩基性蛋白の上昇を認め, 脳波では前頭葉を中心に間欠性高振幅徐波を認めた. 脳MRIでは網様体を含む脳幹部, 視床, 側脳室周囲白質に多発性の脱髄斑を認めた. 患児は2年前に両側視神経炎・乳頭炎で治療を受けており, 今回のエピソードと合わせて多発性硬化症と診断した. ステロイドパルス治療を行い, 神経症状, MRI所見の改善を認めた. 小児の多発性硬化症では成人例と異なり脳症類似の症状を呈することがあるが, その原因として, 視床を含む脳幹網様体の障害が示唆された.
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