重症感染症を契機に中枢性尿崩症が顕在化した42歳の重症心身障害者を経験した.血清Naは140-147mEq/
lを日常は推移していたが, 重症肺炎に罹患時に血清Na値が急激に上昇し, 一日尿量はその水分摂取量を超過した.少量の酢酸デスモプレシン (desmopressinacetate;DDAVP) 投与で症状が改善し, 中枢性尿崩症と診断した, DDAVP点鼻は開始後7カ月で中止できたが, 中止後10カ月が経過した時点でも血清Naは140-147mEq/
lを推移し, 水制限試験や高張性食塩水負荷試験から潜在性部分型中枢性尿崩症と診断した.広範な脳障害を有する重症心身障害者は, 潜在的に視床下部一下垂体系機能不全を伴うことが示唆され, 水分出納と電解質等の推移に日頃より十分留意する必要があると考えた.
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