脳と発達
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41 巻 , 3 号
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巻頭言
特集 第50回日本小児神経学会総会
会長講演
  • 大澤 真木子, 猪子 香代, 武藤 順子
    2009 年 41 巻 3 号 p. 163-170
    発行日: 2009年
    公開日: 2016/05/11
    ジャーナル フリー
     筋強直性ジストロフィー (MyD) は筋萎縮, 筋強直, 多臓器障害を特徴とする. 第19染色体長腕のmyotonin protein kinase遺伝子 (DMPK) の3' 側非翻訳領域の不安定CTG三塩基反復配列が50回以上に伸長していることによる. 先天型MyD (CMyD) では, 多くは母がMyDである. CMyDは年齢により症状は変化するが, 幼児期・学童期には知的障害が問題であり, WISC-IIIでは言語性より動作性検査が低い. 前者では理解の評価点が低く包括的な判断, 社会性に困難があり, 後者では組合せが低く, 絵を全体的に認知し操作することに困難がある. K-ABCでも継時処理, 習得度課題に比し, 同時処理の課題の評価点が低く, 視空間認知, 集中力, 対人関係, 意欲の問題などが認められた.
シンポジウムⅣ:小児神経学的側面から見た脳神経外科的アプローチ
  • 伊達 裕昭, 大井 静雄
    2009 年 41 巻 3 号 p. 172-174
    発行日: 2009年
    公開日: 2016/05/11
    ジャーナル フリー
  • 荒木 尚, 横田 裕行
    2009 年 41 巻 3 号 p. 175-180
    発行日: 2009年
    公開日: 2016/05/11
    ジャーナル フリー
     虐待による頭部外傷は乳幼児期の外傷死における事由の第1位であり, 外傷による後遺症発生率に比べて著しく死亡の割合が高いことが特徴である. 虐待診断は常に不確実であり, 容易ではない. また, 偽陽性, 偽陰性ともに悲劇を生じるため, 小児科医を始めとして, 脳神経外科, 整形外科, 眼科など複数の診断科による意見の集約が必要であり, 医療者は慎重に対峙しなくてはならない. 身体所見および頭部CT所見は診断上重要であり, 薄い急性硬膜下血腫と付随する片側あるいは両側のびまん性脳腫脹が特徴的である. また, 網膜出血も重要な所見である. 乳幼児硬膜下血腫の意義については, 北米と本邦との間で解釈の相違が存在し議論が多い. 受傷機転や病態生理など未解決の問題が多く存在し, 現在も多くの臨床あるいは基礎研究による病態解明のアプローチがなされている. また, 虐待への対応は, 行政や地域社会との連携が重要であり, 診断や治療方針が広く包括的に理解されるためのガイドラインの作成などが期待されている.
  • 田母神 令, 大井 静雄, 野中 雄一郎, 阿部 俊昭
    2009 年 41 巻 3 号 p. 181-184
    発行日: 2009年
    公開日: 2016/05/11
    ジャーナル フリー
     小児脳血管障害の発症は非常に稀である. 当院に総合母子健康医療センターの設立以来7年間でデータベースに登録された症例数より脳血管障害における疾患の特殊性と治療上の諸問題について検討した. 登録症例数は1,009例で脳血管障害は92症例, 頻度は約8%であった. 疾患分類の内訳は脳室内出血32例と最多で, もやもや病20例がこれに次いだ. 小児脳卒中の観点から考慮すると64例と約7割を占め, 出血性脳卒中は虚血性の約2.5倍の発症率であった. したがって, 小児血管障害は脳卒中にて発症することが非常に多く, しかも稀な疾患である. 充分な診療が可能であることが大前提であり, 総合医療体制が不可欠である. 今後もデータの収集解析を行い, その充実化に努めたいと考える.
  • 宮嶋 雅一, 新井 一
    2009 年 41 巻 3 号 p. 185-190
    発行日: 2009年
    公開日: 2016/05/11
    ジャーナル フリー
     頭蓋内くも膜囊胞は髄液と同性状の液体で占拠された囊胞で, その被膜がくも膜で構成される囊胞であると定義される. 囊胞の大きさにより周辺脳組織を圧迫するほか, 髄液循環を障害して水頭症を合併することがある. くも膜囊胞の手術適応と手術方法に関しては, 多施設前方視的研究が行われていないため, 明確な治療指針は未だ確立されておらず, 個々の患児に, 個々の施設の基準で治療適応が決定され, その施設ごとの方法で治療が行われているのが現状である. 本稿では治療適応と方法について整理し, 最近の神経内視鏡による治療を紹介する.
  • 栗原 淳, 四條 克倫, 西本 博
    2009 年 41 巻 3 号 p. 191-196
    発行日: 2009年
    公開日: 2016/05/11
    ジャーナル フリー
     潜在性二分脊椎症には脊髄脂肪腫や先天性皮膚洞など様々な病態が存在するため, その治療指針に関しては病態別に検討をする必要がある. また, これらの疾患には仙尾部の皮膚異常 (skin stigmata) を高率に伴うため, 早期診断にはskin stigmataに十分注意をする必要がある. 本検討では潜在性二分脊椎症のうち脊髄脂肪腫, 先天性皮膚洞, 終末脊髄囊瘤, meningocele manquéについて, それぞれの病態における治療上の問題点と今後の展望について自験例の分析をもとに検討を行った. また, 日常臨床でよく遭遇する仙尾部皮膚陥凹のMRI所見について併せて報告する.
  • 安原 隆雄, 伊達 勲
    2009 年 41 巻 3 号 p. 197-202
    発行日: 2009年
    公開日: 2016/05/11
    ジャーナル フリー
     神経疾患に対する細胞移植・再生療法は, 分子生物学的技術の発展により, 新しい治療戦略として注目されている. 脳虚血に対して我々はこれまで, カプセル化細胞移植や成体由来神経幹細胞移植を中心に多くの研究報告を行ってきた. また, もやもや病に対する間接血行再建術時にVEGF遺伝子導入を併用する治療法や, くも膜下出血後の脳血管攣縮に対するタンパク質セラピー法についても研究を行った. 本稿では, 最近の脳性麻痺モデルを用いた基礎研究を交えて, 我々が行ってきた脳虚血に対する研究を解説する. 最後に, 細胞移植・再生医療分野の臨床研究をレビューし, 神経疾患に対する細胞移植・再生療法について今後の方向性を検討する.
シンポジウムⅦ:小児神経疾患とエピジェネティクス
  • 久保田 健夫, 伏木 信次
    2009 年 41 巻 3 号 p. 203-207
    発行日: 2009年
    公開日: 2016/05/11
    ジャーナル フリー
     エピジェネティクスとはDNAのメチル化修飾等を基盤とする遺伝子発現調節機構のことである. エピジェネティクスが関わる疾患の最初の報告は小児神経疾患であった. DNAのメチル化, 蛋白質によるメチル化の認識, クロマチンの構造変化, 発現抑制パターンの確立といった理解が進み, Angelman, Prader-Willi, Rettなどの小児神経分野の症候群がこれらのステップの異常に起因していることが判明した. 最近, 胎生期の栄養や生後の子育てといった環境でエピジェネティクスが変化することが明らかにされ, エピジェネティックな異常は種々の後天性疾患でも生じていることが示唆されはじめた. エピジェネティクスは可逆性を有する遺伝子調節メカニズムであり, モデルマウスを用いたRett症候群研究では生後の治療で神経障害が完治したとの報告もある. エピジェネティクス疾患は可逆性に根ざした治療が可能であることから, 種々の疾患におけるエピジェネティクス病態の解明が期待される.
  • 斉藤 伸治
    2009 年 41 巻 3 号 p. 208-213
    発行日: 2009年
    公開日: 2016/05/11
    ジャーナル フリー
     Angelman症候群 (AS) は重度精神遅滞とてんかんを主要な症状とする疾患である. 原因遺伝子UBE3Aは神経細胞において母由来対立遺伝子のみが活性であり, ゲノム刷り込み現象の対象となっている. UBE3Aの機能喪失は複数の遺伝学的機序により引き起こされ, これらを明らかにすることが, 遺伝学的診断となる. ASにおける中枢神経障害の機序は不明であるが, 最近の研究により, 脳発生におけるシナプス可塑性やGABA系の障害の関与が示された. ASはエピジェネティクスとシナプス形成や高次脳機能との関連を知る上で貴重なモデルであり, さらに, エピジェネティクスを介した治療法開発のモデルとして期待されている.
  • 吉川 和明
    2009 年 41 巻 3 号 p. 214-218
    発行日: 2009年
    公開日: 2016/05/11
    ジャーナル フリー
     Necdinは, ニューロンの分化と生存を促進する多機能性蛋白質である. ヒトNecdin遺伝子は染色体15q11-q13領域に存在し, ゲノムインプリンティングによって父性染色体のみから発現している. この領域が父由来染色体上で欠損すると神経発達異常症であるPrader-Willi症候群が発症する. 父性Necdin遺伝子を欠損させたマウスでは種々のニューロンで異常が見られる. Necdinは, ゲノムインプリンティング機構が確立された哺乳類 (有胎盤類) において, ニューロン発達に関与する遺伝子として創出されたものと推定される.
  • 伏木 信次
    2009 年 41 巻 3 号 p. 219-223
    発行日: 2009年
    公開日: 2016/05/11
    ジャーナル フリー
     プラスチックの原材料であるビスフェノールA (BPA) は環境中のみならず人体からも検出される. 私たちはマウス胎仔脳の形成過程に母体を介したBPA曝露がどのような影響を及ぼすかを解析した. その結果, 大脳新皮質の神経細胞分化や移動に対してBPAが促進的に作用し, 最終的に皮質構築や皮質視床投射の異常をもたらすことを見出した. さらにゲノムDNAのメチル化状態の変化をRestriction Landmark Genomic Scanning法によって網羅的に調べたところ, 胎齢12.5日で0.9%, 胎齢14.5日では0.7%のスポットがBPA曝露による変動を示し, メチル化の減少ならびに増加がともに見られた.
症例報告
  • 佐藤 研, 中川 栄二, 野々田 豊, 新井 麻子, 佐久間 啓, 小牧 宏文, 須貝 研司, 佐々木 征行
    2009 年 41 巻 3 号 p. 224-228
    発行日: 2009年
    公開日: 2016/05/11
    ジャーナル フリー
     亜急性硬化性全脳炎患者に対し, 1人にinterferon-α (IFNα) とribavirin, 2人にIFNαの脳室内・髄腔内注入療法を実施した. 3例とも明らかな臨床効果は認められなかったが, リザーバーの劣化, 細菌性髄膜炎, および脳圧亢進によると思われる大脳白質障害のため, リザーバーの入れ替えや治療中止を余儀なくされた. 治療実施にあたっては, これらの合併症についても十分に考慮すべきである. IFNαの脳室内・髄腔内投与に加えて, 最近はribavirinの脳室内投与も行われるようになっているが, 未だ十分なエビデンスがあるとは言い難い. 標準的な治療方法が確立されていない点が問題であり, IFNα投与のプロトコールや治療の中止時期について統一した基準が必要である.
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