脳と発達
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41 巻 , 5 号
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巻頭言
総説
  • 横地 健治
    2009 年 41 巻 5 号 p. 327-333
    発行日: 2009年
    公開日: 2016/05/11
    ジャーナル フリー
     脳性麻痺の成因・病巣・症候についての近年の知見を述べる. 新生児仮死に起因するアテトーゼは, 視床VL核・被殻が主病巣であり, 拮抗筋の過剰収縮と過剰連合運動が本質的な問題と考えられる. 視床VL核病変例では, 見かけ上の不随意運動のない軽症例もある. 脳室周囲白質軟化では, 多様な下肢肢位パターンをとり, 失調, 動作時過開口, 振戦もみられる. 多様な中枢性視覚障害・視覚認知障害や突発的に眼球下転する異常眼球運動もみられることがある. 痙性両麻痺の乳児期早期の診断は, 膝分離伸展・下肢挙上の欠如により可能となる. 一側中大脳動脈梗塞と出血後静脈梗塞から片麻痺がもたらされる. 新生児仮死は境界域梗塞型障害ともなる.
原著論文
  • 山口 志麻, 高田 哲
    2009 年 41 巻 5 号 p. 334-338
    発行日: 2009年
    公開日: 2016/05/11
    ジャーナル フリー
     通常学級に所属し特別な支援を要する子ども達の障害別内訳と乳幼児健診での通過状況を検討した. 対象は, 平成16年4月より17年3月までにA市教育委員会の発達障害専門の支援センターに来訪した小中学生503人のうち, 基礎データに欠損がなく専門医による医療相談を受けた285人である. 全例に対し, 生育歴の聞き取り, 行動観察, WISC III等を実施し, 小児神経科医, 児童精神科医の医療面接を行った. 対象者の71.6%が広汎性発達障害, 知的障害 (精神遅滞 : 境界域を含む), 自閉性障害 (知的障害合併) で, これらの子どもの25.3~50%が乳幼児健診で異常を指摘されていた. 一方, 学習障害, 注意欠陥/多動性障害児での指摘率は極めて低く従来の乳幼児健診での捕捉は年齢的に難しいと考えられた. 乳幼児健診の見直しと健診後の支援体制の確立が必要であることが示唆された.
  • 小国 美也子, 小国 弘量, 伊藤 進, 伊藤 康, 大澤 真木子
    2009 年 41 巻 5 号 p. 339-342
    発行日: 2009年
    公開日: 2016/05/11
    ジャーナル フリー
     小児難治性てんかん症候群に対するケトン食療法の効果を後方視的に検討した. 54例 (男19例, 女35例) を対象とした. てんかん症候群分類, 施行時年齢, 経時的発作効果, 副作用を検討した. 発作消失を著効, 50%以上発作減少を有効とした. ケトン食療法施行年齢は生後6カ月から15歳 (中央値4歳), 持続期間は, 1カ月から最長7年で, 1年未満が29例 (54%) で半数を占めた. ケトン食療法開始後1年での著効例は10例 (18.5%), 有効例は19例 (35%) であった. 副作用として重篤なものはなかったが, 5例では有効にもかかわらずケトン食療法を維持することができなかった. ケトン食療法を長期維持するためには食事内容の改善が望まれた.
  • 柏木 充, 鈴木 周平
    2009 年 41 巻 5 号 p. 343-348
    発行日: 2009年
    公開日: 2016/05/11
    ジャーナル フリー
     小児の不器用さの簡易判定法を予備調査より作成し, その有用性について検討した. 判定法は, 問診情報と微細神経学的徴候より構成される. 前者は, 球技やはしの使い方等の日常の運動面に関する12項目の問診結果より, 後者は, 閉眼片足立ちや上肢変換運動等の5項目中の陽性項目数より判定される. 発達障害児を含む43例を我々の判定法で不器用さの有・疑・無群に分け, 運動検査Movement Assessment Battery for Childrenの結果と比較した. 有群15例中14例, 疑群11例中6例が障害境界以上, 無群では17例中14例は障害なしであり, 判定法と運動検査の結果は概ね一致した. この簡易判定法は有用で, 発達性協調運動障害を診断する指標となると考えた.
症例報告
  • 下野 九理子, 加藤 久美, 北井 征宏, 新谷 研, 富永 康仁, 沖永 剛志, 毛利 育子, 谷池 雅子, 大薗 恵一
    2009 年 41 巻 5 号 p. 349-352
    発行日: 2009年
    公開日: 2016/05/11
    ジャーナル フリー
     脳幹部海綿状血管腫に合併したレム睡眠の欠如を呈する15歳女子例を報告する. 頭部MRIでは橋~延髄背左側に海綿状血管腫を認め, 失調や顔面神経麻痺, 動眼神経, 外転神経麻痺を認めた. 15歳時, 睡眠時無呼吸の疑いにて終夜睡眠ポリグラフィー (PSG) を行った. 全睡眠時間を通じてレム期に特徴的な脳波を認めることはなく, レム睡眠を示唆する心拍数や呼吸の変動も見られなかった. さらに閉塞性無呼吸とチェーンストークス様呼吸を認め, 鼻マスクによる陽圧人工換気を導入した. その後のPSGにても明らかなレム期に相当する睡眠stageを認めなかった. このことから血管腫によりレム睡眠発生に重要な部位が障害されていた可能性を考えた.
  • 水口 浩一, 星野 英紀, 浜口 弘, 久保田 雅也
    2009 年 41 巻 5 号 p. 353-356
    発行日: 2009年
    公開日: 2016/05/11
    ジャーナル フリー
     Canavan病はAshkenazi Jewsに多いが, 日本では非常に稀である. 当院にて本疾患の約21年にわたる長期経過を追えたので報告する. 症例は21歳女性, 生後4カ月以降, 発達遅滞あり. 4歳から座位不能の退行, 画像的特徴と尿中N-acetyl-aspartateの排泄増加から疑われ, 皮膚線維芽細胞でのaspartoacylase活性の欠如からCanavan病と診断された. 進行性の経過をとり, 様々な医療ケアが必要となるが, 生命予後と意思表示能力は保たれている. 人種による表現型の多様性があるのかもしれない.
  • 星野 愛, 熊田 聡子, 横地 房子, 八谷 靖夫, 花房 由季子, 冨田 直, 沖山 亮一, 栗原 栄二
    2009 年 41 巻 5 号 p. 357-360
    発行日: 2009年
    公開日: 2016/05/11
    ジャーナル フリー
     気管支喘息大発作に伴う低酸素性虚血性脳症の回復期に歩行障害を認めた17歳女性例を経験した. 表面筋電図, 体性感覚誘発電位, 皮質経由・長ループ反射の解析により, 本例の症候は動作時ミオクローヌス (Lance-Adams症候群) と診断した. 前医でのvalproate sodium・clonazepamに加えpiracetam 15g/日投与では効果に乏しかったが, 当院にてpiracetamを21g/日まで増量したところ, 歩行は著明に改善, 電気生理学的検査所見も改善した. 本例の運動障害の解析には電気生理学的検査が有用であった. 動作時ミオクローヌスに対しては抗てんかん薬とpiracetam併用が有用であるが, 効果の不十分な場合には副作用に注意しつつpiracetamを十分量まで増量する必要があると考えた.
短報
  • 三宅 進
    2009 年 41 巻 5 号 p. 361-362
    発行日: 2009年
    公開日: 2016/05/11
    ジャーナル フリー
     7歳2カ月女児. 家族歴に片頭痛あり. 意識障害を主訴に入院した. 入院時の意識はJapan Coma Scale (JCS) II-20であったが, 症状回復後に左後頭部痛がまず生じ, その後意識を失ったと判明した. 入院時の脳波では左半球に徐波とlazy phenomenonが認められ, 発症24時間後のECD-SPECTでは左半球の血流増加が認められた. 頭部CT, MRIには異常なく, 意識は入院翌日には回復し, 3日後の脳波では左右差はなく, 5日後のECD-SPECTによる血流分布の異常は消失していた. 以上の臨床経過から錯乱型片頭痛と考えられた. 錯乱型片頭痛での血流増加の報告は今までになく, 前兆のある片頭痛で発作時に脳血流は減少し, その後増加するといわれており, 錯乱型片頭痛でも, そのような現象が生じる可能性が示唆された.
  • 小野 浩明
    2009 年 41 巻 5 号 p. 363-365
    発行日: 2009年
    公開日: 2016/05/11
    ジャーナル フリー
     抗けいれん剤であるvalproate sodium (VPA) により近位尿細管障害であるFanconi症候群が起こりうる. その原因として同剤による生体内carnitine低下に起因するミトコンドリア機能低下が推測されている. 今回, VPA投与患者の血中carnitineを測定し, carnitine低値を示した症例の腎尿細管機能を評価することで, 本剤によるcarnitine低下と尿細管機能障害の関係を検討した. Carnitineを測定した13例中, 4例で低carnitine血症を認め, 1例が部分的な尿細管機能障害を示したが, 他の3例の尿細管機能は正常であった. これらの結果からVPAによるFanconi症候群発症には栄養状態, 遺伝素因などのcarnitine低下以外の他の因子が関与する可能性があると考えられた.
  • 福村 忍, 舘 延忠
    2009 年 41 巻 5 号 p. 365-367
    発行日: 2009年
    公開日: 2016/05/11
    ジャーナル フリー
     Pitt-Hopkins症候群は特異顔貌, 間欠的過呼吸, 重度の精神運動発達遅滞を伴う症候群で, TCF4遺伝子異常が原因の一つとされている. 症例は26歳の男性で幼少時より低身長, 精神運動発達遅滞を認め, 9歳より常同運動, 睡眠障害が出現した. 12歳より便秘, 間欠的過呼吸に続く無呼吸が出現した. 広い鼻梁, 大きな口, お椀型の耳, 弓状の上唇といった特異顔貌を認め, 呼吸異常, 精神運動発達遅滞を呈したことからPitt-Hopkins症候群と診断した. Trans- cription Factor (TCF4) の解析を行ったが変異は認めず, 関連遺伝子の異常が疑われた. 臨床的にRett症候群やMowat-Wilson症候群と類似点が多く, これらの遺伝子異常を認めなかった場合には, TCF4の解析をする必要がある.
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