脳と発達
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42 巻, 2 号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
巻頭言
インタビュー・新旧編集委員長に聞く
特集 第51回日本小児神経学会総会
会長講演
  • —Niemann-Pick病C型について—
    大野 耕策
    2010 年 42 巻 2 号 p. 92-102
    発行日: 2010年
    公開日: 2016/05/11
    ジャーナル フリー
     Niemann-Pick病C型 (NPC) は小児期の神経変性を特徴とするまれな疾患である. 約20年間この疾患の研究に細々とかかわってきた. この間, NPCの遺伝子, 蓄積脂質, 神経病理, 細胞機能異常などの解明や治療法の開発に大きな進歩があった. 会長講演では, 鳥取大学とその共同研究グループが行った研究成果を中心に報告した.
     これまで, 全く治療法がない疾患であったが, ここ数年, 蓄積脂質を減少させ, 神経症状を改善し, モデルマウスの寿命を延長させる複数の方法が開発された. 2009年, 欧米ではmiglustatがNiemann-Pick病の神経症状に有効な薬剤として承認され, 米ではシクロデキストリンが一部の患者さんにFDAから「人道的使用」として使用が承認されている. 日本でも早期に厚生労働省の承認が得られるような努力が求められている.
基調講演
  • 有馬 正高
    2010 年 42 巻 2 号 p. 103-107
    発行日: 2010年
    公開日: 2016/05/11
    ジャーナル フリー
     国連は, 1970年代から障害者の人権を守るとの理念にたって障害の内容を定義し, その方針にそって日本も1993年に障害者基本法を制定した. 本稿は, その定義に従い身体障害, 知的障害または, 精神障害がつづく児童の医療という範囲に重点を絞り, 資料を分析した. 特に, 日本は1960年代に重症心身障害の概念を生み, 社会から見放された重度の重複障害をもつ子達の医療と生活を守る制度を創設し維持してきた. 40年におよぶ経験の蓄積を振り返り, 単独の障害と比較しつつ, 一次予防から二次予防に関わる神経小児科医療への期待にふれた.
  • 竹下 研三
    2010 年 42 巻 2 号 p. 108-111
    発行日: 2010年
    公開日: 2016/05/11
    ジャーナル フリー
     わが国の医療が欧米諸国と大きく異なる点の1つにセカンド・オピニオン制度の弱さがある. 鳥取大学を定年退職したのを機会に福岡でNPO子ども相談センターを立ち上げ, 地域に視点をおいた活動を開始した.
     そこで受けた相談の内容は, それまで大学病院で受けてきたものとはいささか異なっていた. 何よりも無意識に医師が使う医学用語への困惑と混乱, そして否定であった. それは発達障害に関係する領域に特に目立っていた. また, これらの用語が教育界や心理系の人々にも同じ意味で使われていることは, 親の不安や拒否, 子どもへの過干渉を想像以上にきびしいものにしていることも知らされた. そして, 虐待や家庭崩壊などのために, 医療機関を受診しないまま思春期になっている発達障害児の問題も深刻であった.
     本稿では, 私のささやかな6年間のNPO活動から教えられたものを, これから小児神経専門医を目指す医師への期待と要望としてまとめてみた.
シンポジウムⅡ:遺伝性神経・筋疾患―診断と治療の最前線
  • 杉江 秀夫, 難波 栄二
    2010 年 42 巻 2 号 p. 112-113
    発行日: 2010年
    公開日: 2016/05/11
    ジャーナル フリー
  • — “Pompe病骨格筋におけるautophagy” —より良好な治療効果を目指して
    福田 冬季子
    2010 年 42 巻 2 号 p. 114-116
    発行日: 2010年
    公開日: 2016/05/11
    ジャーナル フリー
     Pompe病は, グリコーゲンを分解するリソゾーム酵素, acidα-glucosidaseの欠損症であり, 肥大型心筋症とミオパチーを主症状とする. 乳児型および遅発型 (小児型・成人型) に分類され, 乳児型は肥大型心筋症により, 遅発型は呼吸不全により生命が脅かされる. Pompe病に対し酵素補充療法が導入され, 心筋肥厚の改善により乳児型の生命予後が改善されたが, 骨格筋症状への効果は症例により様々である. 基礎研究により, 骨格筋の治療抵抗性と進行性の骨格筋破壊に “autophagy” の機能不全が関与していることが示唆された. 治療後に残存する症状により, 今後解決すべき課題が浮き彫りにされ, 治療の一層の進歩が望まれている.
  • —前臨床試験の成果と臨床応用への展開—
    中村 昭則, 武田 伸一
    2010 年 42 巻 2 号 p. 117-123
    発行日: 2010年
    公開日: 2016/05/11
    ジャーナル フリー
     Duchenne型筋ジストロフィー (DMD) は, ジストロフィン遺伝子の変異により筋形質膜に存在するジストロフィンが欠損し, 進行性に骨格筋や心筋が侵される致死性のX連鎖性疾患である. 最近, アンチセンス・オリゴヌクレオチド (AO) を用いてジストロフィン遺伝子変異によるアミノ酸の読み枠を修正してジストロフィンの発現を回復し, より軽症の病型に転換するエクソン・スキッピング治療が注目されている. 安定かつ安全な2'-O-メチル フォスフォロチオネートAOやモルフォリノが開発され, DMDモデル動物で有効性と安全性が確認された. オランダや英国ではエクソン51スキッピング治療の治験が進行中であり, 臨床応用可能な治療法として期待されている.
  • —update review—
    古賀 靖敏
    2010 年 42 巻 2 号 p. 124-129
    発行日: 2010年
    公開日: 2016/05/11
    ジャーナル フリー
     ミトコンドリア病とは, ヒトのエネルギー代謝の中核として働く細胞内小器官ミトコンドリアの機能不全により, 症状を呈する症候群の総称である. 遺伝的には核もしくはミトコンドリアの遺伝子異常に分類される. その診断で最も大切なことは, まず本症を疑うことである. 最も診断に有用な特殊検査は筋生検であり, 病理学的, 生化学的, 分子遺伝学的解析が可能となる. 現在, ミトコンドリア脳筋症を適応症とする薬剤は世界でも存在せず, すべての薬剤は適応外使用である. 日本ではMELASに対するL-アルギニンの医師主導治験が進められているが, オーファン病であるミトコンドリア病に関して, 今後は国際的な治療薬の共同開発整備が重要である.
  • 後藤 雄一
    2010 年 42 巻 2 号 p. 130-133
    発行日: 2010年
    公開日: 2016/05/11
    ジャーナル フリー
     国立精神・神経センターに, 精神遅滞のリサーチ・リソース・レポジトリーを構築し, 精神遅滞の遺伝学的検査を行った. 平成21年4月末現在で276家系が登録され, 48%が家族性精神遅滞, 弧発例は52%で, そのうち男性弧発例が65%, 女性弧発例が35%であった. 遺伝学的検査では, 登録されている276例のうち概ね150例の検査を終了し, 遺伝子変異は, 12家系 (155家系中7.7%) で認めた. そのうち7家系は, 本邦初例であった. X染色体CGHアレイでの検討では, 10家系 (140家系中7.9%) に陽性所見を得た. 以上より全体の15%程度で精神遅滞の原因となる遺伝学的な変化を認めた.
  • 鈴木 義之
    2010 年 42 巻 2 号 p. 134-137
    発行日: 2010年
    公開日: 2016/05/11
    ジャーナル フリー
     われわれが進めているケミカルシャペロン療法研究の成果をまとめた. ライソゾーム病には, その変異酵素分子の構造不全のため細胞内で速やかに分解, 不活化される患者がある. 試験管内におけるこの酵素の競合阻害剤が, 細胞内では逆に蛋白質分子を安定化し, ライソゾームで安定に酵素活性を発現すること, そしてモデル動物における治療実験で臨床効果のあることを確認した. その分子機構の解明のために, β-ガラクトシダーゼ酵素分子の立体構造を計算により予測し, シャペロンとの分子反応を調べた. ライソゾームの酸性環境で酵素とシャペロンの結合が減少することを明らかにした.
  • 山本 俊至
    2010 年 42 巻 2 号 p. 138-143
    発行日: 2010年
    公開日: 2016/05/11
    ジャーナル フリー
     アレイCGH法により, これまでのG分染法では解析できなかった10-Mb以下の微細な染色体欠失, あるいは重複を検出することが可能となった. 22q11.2欠失症候群やWilliams症候群などの奇形症候群は, いずれもG分染法で確認することが難しい2-Mb以下の非常に微細な染色体欠失が原因であるが, これらの微細染色体異常症候群と同様の数Mbの欠失による新規微細染色体異常症候群が次々と報告されている. アレイCGH法は, 全ゲノムを網羅的に解析できる革命的なデジタル染色体解析法であり, 原因不明の先天異常疾患における微細染色体異常の解析ツールとして臨床応用される時代が到来した.
ワークショップⅠ
ワークショップⅡ
ワークショップⅢ
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