わが国の医療が欧米諸国と大きく異なる点の1つにセカンド・オピニオン制度の弱さがある. 鳥取大学を定年退職したのを機会に福岡でNPO子ども相談センターを立ち上げ, 地域に視点をおいた活動を開始した.
そこで受けた相談の内容は, それまで大学病院で受けてきたものとはいささか異なっていた. 何よりも無意識に医師が使う医学用語への困惑と混乱, そして否定であった. それは発達障害に関係する領域に特に目立っていた. また, これらの用語が教育界や心理系の人々にも同じ意味で使われていることは, 親の不安や拒否, 子どもへの過干渉を想像以上にきびしいものにしていることも知らされた. そして, 虐待や家庭崩壊などのために, 医療機関を受診しないまま思春期になっている発達障害児の問題も深刻であった.
本稿では, 私のささやかな6年間のNPO活動から教えられたものを, これから小児神経専門医を目指す医師への期待と要望としてまとめてみた.
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