脳と発達
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42 巻 , 5 号
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巻頭言
総説
  • 加藤 光広
    2010 年 42 巻 5 号 p. 333-338
    発行日: 2010年
    公開日: 2015/11/21
    ジャーナル オープンアクセス
     介在ニューロンの発生に関与するARX遺伝子のナンセンス変異やフレームシフト変異などの機能喪失変異は水無脳症や滑脳症, 脳梁欠損など脳形成障害を来し, ポリアラニン配列の伸長は機能獲得変異と考えられ非症候性精神遅滞やWest症候群, 大田原症候群を来すなど多面変異を示し, 共通病態として介在ニューロン病の概念を提唱した. さらに大田原症候群の原因遺伝子として神経伝達物質のシナプス放出に関わるSTXBP1を同定した. 分子レベルの解析は構造と機能の関係を明らかにし, 疾患の理解と治療法開発に欠かせない手段であり, 臨床と基礎との共同研究により今後さらに多くのことが明らかにされるであろう.
原著論文
  • 江上 千代美, 森田 喜一郎, 石井 洋平, 山下 裕史朗, 松石 豊次郎
    2010 年 42 巻 5 号 p. 340-345
    発行日: 2010年
    公開日: 2015/11/21
    ジャーナル オープンアクセス
     健常な4~6歳児, 7歳児, 10歳児, 14歳児, 16歳と成人の各群14名ずつ合計84名を対象に, 笑顔図に対する探索眼球運動を評価し, 小児期の対人的な視覚認知機能について比較検討した. 方法は呈示図とともに課題を順に教示し, アイマーク・レコーダにて注視停留点を計測し解析した. その結果, 加齢とともに総移動距離は延長し, 平均移動距離は4~6歳児が他の群より有意に短かった. また, 加齢とともに左スクリーンの停留点数のみが増加した. 笑顔図の8注視エリアである反応探索スコアは加齢とともに増加した. 探索眼球運動は小児期の対人的視覚認知機能の発達を理解する精神生理学的指標として有用と考えられた.
  • 丸山 有希, 高田 哲
    2010 年 42 巻 5 号 p. 346-351
    発行日: 2010年
    公開日: 2015/11/21
    ジャーナル オープンアクセス
     通常の小中学校の養護教諭を対象に, けいれん発作既往のある子どもへの対応と, 抗けいれん坐薬使用の実態について調査した. 150校中139校 (93%) にけいれん発作の既往児が在籍しており, 1年間に26校 (17.3%) で発作が起きていた. 過去を含めると65%以上の養護教諭が学校でけいれん発作を経験していた. 坐薬を預かった学校は59校 (39.4%) であったが, その際に主治医や医療機関から指示があったのは, 16校 (27%) にすぎず, 主治医や医療機関のサポートに関して, 92人 (68%) もの養護教諭が「ほとんどない」「全くない」と感じていた. 多くの養護教諭は学校での坐薬使用に抵抗を感じながらも, 子どもの安全・安楽のためにやむを得ないと考えていた. また, 医師の明確な指示と相談活動, 緊急時の医療機関の速やかな受け入れ等を望んでいた. 学校側の不安を軽減し, けいれん発作の既往がある子どもたちが適切な健康管理を受けられるよう, これらのサポートの充実が期待される.
  • 中村 みほ, 水野 誠司, 熊谷 俊幸
    2010 年 42 巻 5 号 p. 353-358
    発行日: 2010年
    公開日: 2015/11/21
    ジャーナル オープンアクセス
     Williams症候群は認知能力のばらつきが大きく, 視覚認知でも, 背側経路の機能の障害が腹側経路のそれに比してより強いとされ, 色や形の認知と比べ視空間認知の障害をより強く認める. そのため発達途上では, 2次元図形で細かい構成要素は模写できてもそれらを適正に配置して大きな形を形作ることが出来ず, 漢字写字でも同様に部首の配置につまずきを示す等の所見を認めうる. 介入法として, 比較的得意な腹側経路の機能のひとつである色の認知を利用し, 構成要素の配置をわかりやすくするため, 4分割して下地を彩色した枠を用いる方法を試みた. 上記枠内に漢字を提示し, 同様に彩色した枠内に模写することで模写の改善を認め, 有用な方法と考えられた.
  • 足立 昌夫, 親里 嘉展, 西山 敦史, 村瀬 真紀, 石田 明人
    2010 年 42 巻 5 号 p. 360-366
    発行日: 2010年
    公開日: 2015/11/21
    ジャーナル オープンアクセス
     小児期発症てんかんに対するtopiramate (TPM) の有効性と安全性について検討した. 抗てんかん薬2剤以上でもけいれん発作が抑制されず, 平均で月1回以上の発作を有する症例50例にTPMを投与し, 投与開始後4カ月以上観察できた45例を対象とした. 年齢は4カ月~30歳 (平均11歳7カ月) で, 15歳未満が32例であった. 全般てんかん13例, 局在関連性てんかん30例, 未決定てんかん2例であった. 発作頻度50%減少率は全般てんかん53.8%, 局在関連性てんかん73.3%, うち発作寛解は各23.1%, 23.3%であった. 主な有害事象は, 眠気28.9%, 体重減少13.3%, 代謝性アシドーシス4.4%で, いずれも軽症一過性であった. TPMは高い有効性を示し, 特徴的な有害事象に留意すれば安全な薬剤である.
症例報告
  • 三輪 菜穂, 田沼 直之, 林 雅晴
    2010 年 42 巻 5 号 p. 367-371
    発行日: 2010年
    公開日: 2015/11/21
    ジャーナル オープンアクセス
     著明な血清IgE高値を示した重症心身障害児剖検例を経験した. 抗原感作が比較的少ない状況であったにもかかわらず高IgE血症が持続し, 徐々に悪化していた. また, 食物など曝露経験のない抗原に対しても血清IgE値の上昇が見られた. 高IgE症候群の原因遺伝子STAT3ならびに免疫機能検査を行ったが, 異常を見出せなかった. 気管腕頭動脈瘻よりの気管内大量出血のため永眠された. 剖検により結腸粘膜下に肥満細胞の増多が認められ, 高IgE血症への関与が示唆された. 重症心身障害児では反復する胃食道逆流症のため食物抗原に感作されやすいことが知られており, 成分栄養であっても食物アレルギーに留意すべきと考えられた.
  • 新井 ひでえ, 久保田 博昭, 小俣 卓, 田邉 雄三
    2010 年 42 巻 5 号 p. 372-376
    発行日: 2010年
    公開日: 2015/11/21
    ジャーナル オープンアクセス
     左上肢に限局する自律神経症状を示した5歳女児を経験した. 左手掌の冷感および左上肢の発赤腫脹が突然出現し, 24時間後に発熱・水痘様発疹を認めた. 他の神経症状や重篤な汎自律神経失調症状は認めず, ウイルス抗体価を含む血液生化学・髄液検査で異常を認めなかったが, 両側正中神経刺激でのF波の消失, 左正中神経複合感覚神経電位の低下, 左側交感神経皮膚反応 (SSR) の振幅低下と氷水浸漬試験 (CIVD) で交感神経機能低下を示し, 急性自律神経ニューロパチーと診断した. 水痘初感染が否定されるまでaciclovir投与を行い, 左上肢の症状は自然経過で軽快したが, SSRとCIVDの異常は9カ月後でも残存していた.
短報
  • 親里 嘉展, 西山 敦史, 足立 昌夫
    2010 年 42 巻 5 号 p. 377-379
    発行日: 2010年
    公開日: 2015/11/21
    ジャーナル オープンアクセス
     意識障害のみにて発症した新型インフルエンザA (H1N1) 脳症の1例を経験した. けいれんや画像異常を認めなかったが, 意識障害の遷延と脳波所見から脳症と診断した. 発症3日目のTSH値が低かったことからステロイドパルス療法に加えTRH療法を行った. その結果, 神経学的後遺症なく治癒した.
     これまで, 脳症による意識障害の遷延に対するTRH療法の効果は報告されているが, インフルエンザ脳症の急性期にTSHを評価した報告はない. そこで, 意識障害の遷延を来した当院入院症例についてTSH等を測定した. その結果, TSHの低下は脳症に特異的なことではなかったが, 共通した病態としてnonthyroidal illnessの関与が考えられた. これまでにもnonthyroidal illnessは, その疾患の重症度・予後の指標になり得るとされている. インフルエンザ感染症においても早期からTSH等を評価する有用性を示唆する症例と考えられた.
学会見聞記
報告
地方会
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