脳と発達
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43 巻, 2 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
巻頭言
特集 第52回日本小児神経学会総会
特別講演
  • 児島 将康
    2011 年 43 巻 2 号 p. 87-90
    発行日: 2011年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
     グレリンは胃から分泌される成長ホルモン分泌促進活性や摂食亢進作用をもつペプチド・ホルモンで, その特徴的な構造は3番目のアミノ酸であるセリン残基の側鎖が, 中鎖脂肪酸であるn-オクタン酸の修飾を受けていることである. しかもこの修飾基がグレリンの活性発現に必須である. グレリンは強力な摂食亢進作用を示す. 中枢においてグレリンは, 視床下部弓状核のニューロンを活性化して, 摂食亢進作用を発揮する. 胃から分泌され血中を流れるグレリンは, 末梢からの空腹シグナルを中枢に伝える液性因子として現在のところ唯一の例である.
  • 内匠 透
    2011 年 43 巻 2 号 p. 91-94
    発行日: 2011年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
     ヒト染色体15q11-13重複は自閉症の細胞遺伝的異常として最も頻度の高いものである. 染色体工学的手法を用いて, 我々は同相同領域を重複させたマウスを作製することに成功した. 本マウスは, 社会的相互作用の障害, 超音波啼鳴数の発達異常, 固執的常同様行動等, 自閉症様行動を示した. また, 発達期には脳内セロトニン異常を呈した. 本マウスは, 表現型妥当性だけでなく, 自閉症の原因である染色体異常をヒトと同じ型で有する構成的妥当性をも充たすヒト型モデルマウスである. 本マウスにより, 自閉症を含む発達障害の分子病態解明だけでなく, 新たな診断, 治療, 予防法の確立にも有効なマウスとして, 小児神経学領域における発展が期待される.
シンポジウム5:急性脳症の診療・研究最前線
  • 市山 高志, 髙梨 潤一
    2011 年 43 巻 2 号 p. 95
    発行日: 2011年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
  • 水口 雅
    2011 年 43 巻 2 号 p. 96-99
    発行日: 2011年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
     2009年後半, 新型インフルエンザ・パンデミック (H1N1) 2009の流行にともない, 日本では急性脳症の症例が推定200~300例発生した. 従来の季節性インフルエンザ脳症と比較して, 新型インフルエンザ脳症は報告例が多く, 特に年長児 (5~9歳), 男児に多発した. 神経症状としては異常言動 (譫妄) がけいれんより多く, 頭部CT・MRIでは異常なし, または脳梁膨大部病変が多かった. 予後は季節性インフルエンザ脳症と同等か, やや良好であった. 新型インフルエンザ脳症に見られた病型の種類は, 季節性インフルエンザや他のウイルスによる脳症と同じで, 質的な違いはなかった.
  • 髙梨 潤一
    2011 年 43 巻 2 号 p. 100-108
    発行日: 2011年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
     感染を契機とする急性脳症は東アジアの乳幼児に好発し, インフルエンザウイルス, ヒトヘルペスウイルス6型 (HHV-6), ロタウイルスの頻度が高い. 感染性急性脳症を臨床画像的に症候群として分類し, 病態に即した治療法を確立することが日本の小児神経科医の急務である. 本稿では日本の乳幼児に好発する2つの急性脳症, すなわち急性壊死性脳症 (ANE), 二相性けいれんと遅発性拡散能低下を呈する急性脳症 (AESD) ・けいれん重積型急性脳症に加えて, 可逆性脳梁膨大部病変を有する脳炎・脳症 (MERS) の臨床像, 画像所見について概説する.
  • 奥村 彰久
    2011 年 43 巻 2 号 p. 110-116
    発行日: 2011年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
     急性脳症において脳波は注目がやや集まりにくい検査法であるが, その臨床において脳波が果たし得る役割は小さくない. 熱性けいれん重積と急性脳症との鑑別に脳波は有用で, 急性期に施行した脳波に異常を認めない場合には, 急性脳症である可能性は低い. 近年注目されているbright tree appearanceを呈する急性脳症においても, 脳波では発症後早期から高率に異常を認め, 早期診断に有用である可能性があり, 脳波異常の重症度は予後と相関する. Amplitude-integrated EEGを用いた持続脳波モニタリングでは, しばしばsubclinical seizuresが認められ, 病態への洞察を得ることができる.
  • 市山 高志
    2011 年 43 巻 2 号 p. 118-122
    発行日: 2011年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
     小児の急性脳症は「インフルエンザ脳症」の疾患概念の確立から精力的に研究されてきた. その成果として急性脳症の病態は単一でなく, 複数の病型があることが明らかにされてきた. 本稿では, 急性脳症の病型の中から比較的頻度が多く, 重篤なタイプである「高サイトカイン血症型」と「けいれん重積型」について筆者らの病態解析研究を紹介した. また, これら病態解析に基づいて, 前者では抗サイトカイン療法, 後者では脳保護療法を主眼に置いた治療戦略の必要性について概説した. 急性脳症では, 患児それぞれの病態を判断し, それに応じた適切な治療が肝要である.
イブニングセミナー1:社会活動委員会
イブニングセミナー2
イブニングセミナー3:薬事委員会
イブニングセミナー4
イブニングセミナー5:薬事委員会
短報
  • 小沢 浩, 中島 末美, 大瀧 潮, 高橋 有美, 有本 潔, 木実谷 哲史
    2011 年 43 巻 2 号 p. 139-140
    発行日: 2011年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
     間歇的胃内持続吸引法により, 呑気 (どんき) による吸収障害が改善した症例を経験した. 症例1は53歳, 男性. 呑気により, 麻痺性イレウス出現. 間歇的胃内持続吸引法を開始し, 9日間で改善した. 症例2は22歳, 男性. 覚醒時に呑気がみられ, そのための腹部膨満により, 注入困難となった. 間歇的胃内持続吸引法と十二指腸チューブからの注入を行い, 改善した. 間歇的胃内持続吸引法の条件は, 圧-30cmH2O, 吸引時間30秒, 休止時間30秒とし, メラサキューム® (泉工医科工業製) により, 吸引した. 吸引された胃液はソリタ-T2®液による全量補正とした. 間歇的胃内持続吸引法は呑気症に対して有効な治療であり, 今後, さまざまな使用法について検討を重ね, 治療として間歇的胃内持続吸引法を確立していきたい.
  • 小野 浩明, 福原 里恵
    2011 年 43 巻 2 号 p. 141-142
    発行日: 2011年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
     West症候群は乳児期に発症する年齢依存性てんかん脳症の一つである. ACTH療法がspasmsに対して有効であるが, その後の発達遅延・退行, Lennox-Gastaut症候群への移行など治療後の問題点も多い. 近年, 酸化ストレスは様々な疾患の発症に関与していることが知られており, West症候群においても脳内の酸化ストレスの存在が認められている. 今回, 症候性West症候群の1例において, 酸化ストレスマーカーの一つである8-hydroxy-2'-deoxyguanosine (8-OHdG) を経時的に測定し, ACTH療法前後の酸化ストレスを評価した. 8-OHdGは治療前高値を示したが, 治療開始後, spasmsの消失と共に低下した. ACTH療法はWest症候群の酸化ストレスを軽減する可能性が示唆された. 児は発症後から退行を示しており, 酸化ストレスの発達遅延への関与も疑われた.
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