高磁場MRIの普及により, 今や “仮想病理空間” と見まがうほどの解像度を持った中枢神経画像が日常的に提供され, 出血病変に代表される既知の病態診断の質を高めただけでなく, 早期産児の広汎性白質傷害のように, 以前は重要視されていなかった質的変化を客観的に描出することに貢献している. しかしながら, 画像上の “異常所見を治療” するには, 実病理空間での組織損傷との正確な関係を熟知する必要がある. 本稿では, 組織中の水分子の分布と移動から, 拡散強調画像における画像変化出現のメカニズムを明らかにすることで, 急性脳損傷における画像所見にどのような臨床的意義があるのかを概説する. 先進MRIの長所と限界を明確にする努力により, 従来方式のMRIから得られる情報もより有用なものになると期待される.
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