脳と発達
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45 巻, 4 号
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巻頭言
総説
  • 渡辺 雅彦
    2013 年 45 巻 4 号 p. 267-274
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/10/11
    ジャーナル フリー
     遺伝子プログラムの時系列的発現により形成される初期シナプス回路は, ステレオタイプで個性に乏しく, 重複が多く特異性に乏しい未熟な回路である. 生後, 受容器からの感覚刺激の増大とそれによる神経活動の亢進は, ポスト側となる中枢ニューロンの活性化と競合を招く. この過程において, 使用状況に応じたシナプスの強化と除去の選別化が起こり, 個体の経験や環境に適応した機能的回路へと改築される. われわれは, 遺伝子ノックアウトマウスを用いた形態学的解析を通して, グルタミン酸シグナル伝達に関わる分子が活動依存的なシナプス回路改築を制御している事実を, 小脳皮質や大脳皮質において明らかにしてきた.
原著論文
  • 若宮 英司, 竹下 盛, 中西 誠, 水田 めくみ, 栗本 奈緒子, 奥村 智人, 玉井 浩, 小枝 達也, 稲垣 真澄
    2013 年 45 巻 4 号 p. 275-280
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/10/11
    ジャーナル フリー
     【目的】新規のひらがな読み訓練プログラムを開発し, 発達性ディスレクシア (DD) 児の読み書き能力に対する短期効果を検討した.
     【方法】15名のDD児が自宅において, パソコン画面に提示された単音・無意味語を音読する訓練と有意味語の音読訓練を, それぞれ21日間連続で行い, 訓練前後の読み書き能力の変化を比較検討した.
     【結果】訓練後にひらがな読み検査の速度が改善し, 単音読みの誤数が減少した. 特殊音節を含む単語の書字能力の改善を認めた.
     【結論】特殊音節を含む単音や単語のデコーディングを意識した読み訓練は, 発達性ディスレクシアの導入期の訓練に有用と思われた.
  • 池上 真理子, 高橋 幸利, 池田 浩子, 今井 克美, 大谷 英之, 久保田 裕子, 重松 秀夫, 高山 留美子, 最上 友紀子
    2013 年 45 巻 4 号 p. 281-287
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/10/11
    ジャーナル フリー
     【目的】ACTH療法反復施行の有効例の特徴を見出す.
     【方法】難治epileptic spasmsを有する症例で, 初回ACTH療法が無効あるいは初回ACTH療法有効後再発した症例25例において, ACTH療法反復施行後, 全てんかん発作が2カ月以上抑制された場合を短期抑制効果ありとし, Kaplan-Meier法を用いた長期効果の検討を行った.
     【結果】短期効果は, 2回目施行時にepileptic spasmsのみの症例では76.5%で有効, 複数の発作型をもつ症例では有効例はなかった.
     長期効果では, 複数発作型をもつ群と比較してepileptic spasmsのみをもつ群で有意に発作消失期間が長く, treatment-lagが2カ月以内の症例では長期効果が優れていた.
     【結論】ACTH療法反復施行では短期効果・長期効果ともに発作型の影響が大きいと考えられた.
  • 林 安里, 熊田 知浩, 野崎 章仁, 日衛嶋 郁子, 宮嶋 智子, 藤井 達哉
    2013 年 45 巻 4 号 p. 288-293
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/10/11
    ジャーナル フリー
     【目的】ケトン食療法中は微量元素が欠乏しやすい. しかし, 特殊ミルクであるケトンフォーミュラ (明治817-B) を使用したケトン食療法中の微量元素の欠乏に関する報告はない.
     【方法】ケトンフォーミュラを用いたケトン食療法を行った6人における治療前と6カ月後の血清セレン, 亜鉛と銅濃度の変化を調べた. おのおのの1日摂取量を調べた.
     【結果】セレンの血清濃度と1日摂取量は有意に低下した. 亜鉛と銅の血清濃度は有意には低下しなかったが, 1日摂取量は低下した.
     【結論】ケトンフォーミュラを用いたケトン食療法中は血清セレン濃度が低下, セレン, 亜鉛と銅の1日摂取量の減少を認め, 定期的な評価と不足例での補充が必要である.
  • 杉浦 千登勢, 呉 博子, 田辺 文子, 汐田 まどか, 前垣 義弘, 大野 耕策
    2013 年 45 巻 4 号 p. 294-298
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/10/11
    ジャーナル フリー
     【目的】けいれん重積型急性脳症に伴う神経心理学的後遺症の臨床的特徴を明らかにする.
     【方法】本症8例の臨床経過を後方視的に検討した.
     【結果】全例に運動麻痺はなかった. 亜急性期に5例で不随意運動が出現し, 4例は一過性であった. 5例で口唇傾向, 6例で左半側空間無視が一過性に出現した. 慢性期以降では, 独歩可能となった7例中6例で歩容の不安定性, 7例で注意障害, 7例で対人技能面の問題, 2例で感情失禁が持続していた. 頭部画像所見では, 一過性症状の出現期に皮質下病変, 慢性期持続症状の出現期に大脳皮質萎縮所見を認めた.
     【結論】これらの臨床的特徴を把握することは, 適切なリハビリテーションを行ううえで有用である.
  • 栗原 まな, 宍戸 淳, 小萩沢 利孝, 吉橋 学, 藤田 弘之, 井田 博幸
    2013 年 45 巻 4 号 p. 299-303
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/10/11
    ジャーナル フリー
     【目的】急性脳症罹患後に生じる視覚認知障害の特徴を検討した.
     【方法】16歳未満で急性脳症に罹患し, 当院でリハビリテーションを行った103例を対象とした. 症例ごとに急性期の状況と後遺症の状況を調査し, 視覚認知障害がある群 (①群43例) とない群 (②群60例) で比較した. さらに視覚認知障害の症状, 評価方法, 対応方法をまとめた.
     【結果】平均発症年齢は, ①群3歳5カ月・②群2歳8カ月, 意識障害の持続は, 平均①群10.8日・②群7.7日であった. 頭部MRIの異常は, ①群で後頭部が, ②群で前頭部が多く, 脳血流の低下は, ①群で後頭部が多かった. 視覚認知障害の症状, 評価方法, 対応方法を述べた.
     【結論】急性脳症後に視覚認知障害を生じることが多いことを認識し, 早い時期から対応することが必要である.
  • 皆川 公夫, 渡邊 年秀, 大柳 玲嬉
    2013 年 45 巻 4 号 p. 304-308
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/10/11
    ジャーナル フリー
     【目的】Valproate sodium (VPA) 服用中に多嚢胞性卵巣症候群 (PCOS) を発症したてんかん症例の特徴について検討する.
     【方法】PCOS群20例のてんかん分類, 発作抑制の有無, 精神遅滞と重症心身障害の有無, 併用抗てんかん薬の有無, VPAに関しては開始時月齢, 投与期間, 総投与量, 最高血中濃度について, 対照群57例と統計学的に比較した. さらにPCOS群の内分泌検査所見の特徴についても検討した.
     【結果】PCOS群では症候性全般てんかん, 発作抑制なし, 精神遅滞あり, 重症心身障害あり, 併用抗てんかん薬ありの割合が有意に高かったが, VPAの調査項目には有意差を認めなかった. 内分泌検査ではアンドロステンジオンが高値という特徴を認めた. VPAを中止できた1例ではPCOSが寛解した.
     【結論】VPAと他抗てんかん薬を併用服用中の精神遅滞や重症心身障害を有する難治性の症候性全般てんかん患者ではPCOS発症のリスクが高いことが示された.
症例報告
短報
  • 親里 嘉展, 中川 温子, 西山 敦史, 足立 昌夫
    2013 年 45 巻 4 号 p. 323-325
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/10/11
    ジャーナル フリー
     乳児期に小児交互性片麻痺と診断した7歳男児, 寝返り以上の粗大運動は不能で言語も獲得していない. てんかんを合併し, 4歳半以降は片麻痺発作に嚥下障害を伴うようになり重症な経過を辿っていた. Flunarizine hydrochlorideと抗てんかん薬による治療では効果は乏しく, 重度の片麻痺発作やてんかん発作に対してはdiazepam坐薬で対応していた. 検査入院時に嚥下障害を伴う片麻痺発作を呈していたが, 五苓散を投与したところ短時間で症状は消失した. その後も五苓散の使用を継続したところ, 片麻痺発作短縮と回数減少, 発作時の嚥下障害の消失といった発作の軽症化を認めた. 本症例には五苓散が有効であり, 五苓散が小児交互性片麻痺の治療薬の1つとなる可能性が示唆された.
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