脳と発達
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46 巻, 6 号
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巻頭言
総説
  • 柿田 明美
    2014 年 46 巻 6 号 p. 413-417
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
     乳児・小児期に発症した患者のてんかん原性病巣について, その外科病理像を概説する. てんかん外科標本を組織診断した自験例600例のうち, 約65%は12歳以下で発症した小児例であった. 1歳未満で発症した乳児例では, 限局性皮質異形成 (focal cortical dysplasia ; FCD) Type II, 結節性硬化症, 片側巨脳症の頻度が高かった. 一方, 1歳から12歳の小児例になると, 手術対象例としては, 海馬硬化症, 腫瘍性病変, FCD Type II, FCD Type Iの頻度が高かった. このうちFCDでは, 皮質神経細胞の配列がさまざまな程度に乱れていた. 高度の乱れを示す場合には, dysmorphic neuronやballoon cellと呼ばれる異型細胞を伴っており, FCD Type IIと分類した. 異型細胞のうち前者のみが認められる場合にはFCD Type IIaと, また両者が認められる場合にはFCD Type IIbと亜分類した. 一方, 異型細胞を伴わない場合はFCD Type Iと分類した. この場合, 神経細胞の配列の乱れは軽かった. こうした乳児・小児期に発症した患者の多くは, その病態形成に脳の発生異常が深く関与していると考えられた.
原著論文
  • 小川 加奈, 最上 友紀子, 利川 寛実, 木水 友一, 木村 貞美, 池田 妙, 柳原 恵子, 田尻 仁, 鈴木 保宏
    2014 年 46 巻 6 号 p. 419-423
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
     【目的】視床下部過誤腫の部位, 大きさと臨床的特徴との関連性を検討した. 【方法】対象は視床下部過誤腫と診断された6例 (男3人, 年齢12~26歳) で, MRI所見からArita分類に基づきparahypothalamic (P) 型, intrahypothalamic (I) 型に分類し, 過誤種の大きさと臨床症状 (てんかん, 精神遅滞, 思春期早発症, 行動障害), 脳波所見との関連性を検討した. 【結果】P型は1例 (腫瘍の最大径21mm) のみで思春期早発症, 行動障害を認めたが, 知能は正常でてんかんの合併はなかった. 5例はI型に分類され, 最大径は10~32mm (平均19.5mm) であった. I型は全例にてんかん, 行動障害を認めた. 腫瘍が1番小さい1例を除く4例では精神遅滞, 思春期早発症を認めた. 過誤腫が大きくなるとともにてんかん発症年齢が早くなり, developmental quotient/intelligence quotient (DQ/IQ) が低下する傾向を認めた. 【結論】視床下部過誤腫において部位 (Arita分類) と腫瘍の大きさを組み合わせることにより臨床症状の予測につながる可能性が示唆された.
  • 小林 朋佳, 稲垣 真澄, 山崎 広子, 北 洋輔, 加我 牧子, 岡 明
    2014 年 46 巻 6 号 p. 424-428
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
     【目的】発達性読み書き障害 (developmental dyslexia ; DD) の背景病態の一つである大細胞系機能障害を明らかにする. 【方法】7~16歳のDD児と定型発達 (typical development ; TD) 児各々19名に対し, 低空間周波数・低コントラストのサイン様白黒縦縞模様を高反転頻度で視覚提示し, 視覚誘発電位 (VEP) を記録し, 読字能力との関連を検討した. 【結果】①DD児群VEPはTD児群と比較してcomplex demodulation法によるピーク振幅が有意に低下した. ②構造方程式モデリングによりピーク振幅は線画呼称課題の成績に関連すること, 線画呼称が良好であるほど音読が向上することが見出された. 【結論】DDの病態理解に大細胞系賦活VEPは有用と考えられる.
  • 東 晴美, 毛利 育子, 橘 雅弥, 大野 ゆう子, 谷池 雅子
    2014 年 46 巻 6 号 p. 429-437
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
     【目的】自閉症スペクトラム障害 (autistic spectrum disorder ; ASD) 児の自閉症特性を減弱または増強させる因子を検討した. 【対象】大阪大学医学部附属病院小児科を初診し, ASDと診断され, かつ自閉症特性の質問票を養育者が記入した子ども292名. 【方法】初診時に養育者が記入した問診票と自閉症特性を中心として構成された母親記入式の乳幼児期行動チェックリスト改訂版と小児行動質問票改訂版を用いて後方視的解析を行った. 【結果】自閉症特性の減弱因子として, 早期 (1歳代) の療育開始が, 増強因子としては家庭に問題をかかえている, 精神・神経系疾患の家族がいる, 子ども本人のてんかん合併があることの影響が示唆された. また, ASD児に特化した療育に限らず, より早期に療育を開始することが, 社会性に関する自閉症特性を減弱することが示唆された. 【結論】ASD児に対しては早期に療育を開始することと家庭全体を支援することが重要である.
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