乳児・小児期に発症した患者のてんかん原性病巣について, その外科病理像を概説する. てんかん外科標本を組織診断した自験例600例のうち, 約65%は12歳以下で発症した小児例であった. 1歳未満で発症した乳児例では, 限局性皮質異形成 (focal cortical dysplasia ; FCD) Type II, 結節性硬化症, 片側巨脳症の頻度が高かった. 一方, 1歳から12歳の小児例になると, 手術対象例としては, 海馬硬化症, 腫瘍性病変, FCD Type II, FCD Type Iの頻度が高かった. このうちFCDでは, 皮質神経細胞の配列がさまざまな程度に乱れていた. 高度の乱れを示す場合には, dysmorphic neuronやballoon cellと呼ばれる異型細胞を伴っており, FCD Type IIと分類した. 異型細胞のうち前者のみが認められる場合にはFCD Type IIaと, また両者が認められる場合にはFCD Type IIbと亜分類した. 一方, 異型細胞を伴わない場合はFCD Type Iと分類した. この場合, 神経細胞の配列の乱れは軽かった. こうした乳児・小児期に発症した患者の多くは, その病態形成に脳の発生異常が深く関与していると考えられた.
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