脳と発達
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46 巻, 1 号
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巻頭言
総説
  • 児玉 浩子
    2014 年 46 巻 1 号 p. 5-9
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
     経腸栄養剤や特殊ミルク・治療用ミルクには, いくつかの必須栄養素がほとんど含まれていないものがある. 主なものとしては, エンシュア・リキッド®にはカルニチン, セレン, ヨウ素 ; エレンタール®にはカルニチン, セレン ; ラコール®にはカルニチン, ヨウ素 ; 牛乳アレルゲン除去ミルク・乳糖除去ミルク・MCTミルク・ケトンフォーミュラ・先天性代謝異常症用ミルクなどにはビオチン, カルニチン, セレン, ヨウ素がほとんど含まれていない. これらを単独で使用すると, 含有量の少ない栄養素の欠乏をきたすおそれがある. これら栄養剤・ミルクを単独で使用する場合は, 欠乏症に注意し, 必要に応じて補充することが大切である.
原著論文
  • 丸山 幸一, 井合 瑞江, 荒井 洋, 横地 健治
    2014 年 46 巻 1 号 p. 10-15
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
     【目的】発達期脳病変による運動障害においてときに観察される, 全身の緊張が長時間持続する状態を「持続的筋収縮状態」と定義し, その臨床像を明らかにする. 【方法】診断基準を満たす66症例を後方視的に調査した. 【結果】早産核黄疸の症例では非対称性姿勢をとり, 姿勢保持や快刺激で症状の緩和を認めた. 他の症例は基底核・視床と大脳の両側広汎性病変が中核であり, 後弓反張位が多く, 姿勢保持や刺激による症状の変動は少なかった. 【結論】痙性・ジストニア・固縮などの既存の分類では説明困難な, 不随意的で半持続性の全身性筋過活動状態である持続的筋収縮状態を呈する症例が一定数存在し, 複数の発症機序が想定された.
  • 石井 和嘉子, 藤田 之彦, 桃木 恵美子, 今井 由生, 遠藤 あゆみ, 荒川 千賀子, 小平 隆太郎, 渕上 達夫, 麦島 秀雄
    2014 年 46 巻 1 号 p. 16-21
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
     【目的】小児期発症難治てんかん患者におけるlamotrigine (LTG) の臨床効果と薬物動態を検討した. 【方法】LTG追加投与の28例の診療録からてんかん分類, 発作頻度, LTG投与量, 血中濃度などを調査し, valproate sodium (VPA) 併用群と非併用群に分け, 血中濃度と有効性を検討した. 【結果】10例に50%以上の発作減少を認めた. 2群とも投与量と血中濃度間に強い相関関係を認めた. 有効例の血中濃度は有意差を持ってVPA併用群で高く, 非併用群で低かったが, 有効例のてんかん病型は2群で異なっていた. 【結論】LTG投与量から血中濃度の予測が可能である. VPA併用の有無以外の要因も考慮するべきであるが, VPA併用の有無によっても, LTGの有効血中濃度が異なる可能性が示唆された.
  • —methylphenidate徐放錠およびatomoxetineの継続率等からみた有用性の検討—
    洲鎌 倫子, 石﨑 朝世
    2014 年 46 巻 1 号 p. 22-25
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
     【目的】注意欠陥多動性障害 (ADHD) の薬物治療に徐放性methylphenidate (MPH) およびatomoxetine (ATX) が使用されるが, おのおのの薬剤の継続率を中心に調査し, 治療の現状について考察した. 【方法】ADHD, ADHD症状をもつ広汎性発達障害 (PDD) でMPHを使用した460例, ATXを使用した121例につき診断名, 継続率, 診断名別継続率, 中止例の理由, 継続例の併用薬等につき検討した. 【結果】MPH継続例は460例中275例59.8%, ATX継続例は121例中60例49.6%であった. MPHとATXを併用しているものも40例あった. PDDはATXで継続率が低かった. 【結論】MPHは効果があって中止できたものも含み, ATXは重症例に使用したため継続率が低かった. 併用が必要な例も多かった. ADHD症状を併存するPDDでもmethylphenidate徐放錠 (MPH-ER) は継続率が高く, 有用性があると考えた.
症例報告
  • 八木 麻理子, 楠 典子, 李 知子, 粟野 宏之, 森岡 一朗, 児玉 浩子, 竹島 泰弘, 飯島 一誠
    2014 年 46 巻 1 号 p. 26-29
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
     【目的】Menkes病 (MD) 早期診断の手がかりを検討する. 【方法】家族歴にMDを認め罹患リスクのある男児3例 (罹患児1例, 非罹患児2例) の新生児期の臨床像を比較した. 【結果】MDに特徴的なkinky hairは, 出生直後は極軽微で見逃す危険性があった. 血清銅は, 罹患児では経時的に低下したが, 非罹患児では上昇した. MDで上昇するとされる尿HVA/VMA比は, 罹患児ではcut off値 (4.0) を超える値を示した. 非罹患児では, カテコラミン投与中は11.0と高値を示したが, カテコラミン非投与時はcut off値未満を推移した. 【結論】血清銅の経時的変化と尿HVA/VMA比がMDの早期診断に有用であることが示唆された.
  • 國吉 保孝, 加村 梓, 安田 すみ江
    2014 年 46 巻 1 号 p. 30-33
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
     軽微な外傷で発症した, くも膜囊胞合併急性硬膜下血腫の乳児例を経験したので報告する. 症例は10カ月の男児. 高さ50cmから墜落して頭部を打撲し, 第2病日に急性硬膜下血腫の診断で入院となった. 第4病日のCT画像で血腫の増大がないことを確認し, 第7病日に退院となった. 退院後, 第65病日に実施したMRIでは血腫の増大を認めたが, 外科的治療を実施せず, 第192病日のMRIでは血腫の縮小が確認された. くも膜囊胞を合併した脳外傷の症例は, ①乳児においても硬膜下血腫の危険因子になること, ②亜急性期から慢性期にかけて再び増大する可能性があることを認識して診療にあたる必要がある.
  • 平木 彰佳, 菊地 正広
    2014 年 46 巻 1 号 p. 34-38
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
     イオン飲料の多飲によるビタミンB1欠乏からWernicke脳症を発症した2例を経験した. 症例1は1歳3カ月男児で, 頻回の嘔吐が先行し, 意識障害と眼球運動障害, 運動失調で発症した. 症例2は7カ月男児で, けいれん重積で発症した. 2例ともビタミンB1投与で症状は改善したが, 症例2は神経学的後遺症を残した. 本疾患は嘔吐が先行することが多く, 症例1のように初期に胃腸炎と診断されることもある. 胃腸炎の診断でイオン飲料を多用することには注意を要する. 症例2はけいれん重積での発症で, 非典型的であった. 2例はいずれも偏食とイオン飲料の多飲があり, 日常診療では患児の摂食状態の把握と適切な栄養指導が重要である.
  • —有効な投与時期について—
    須藤 章, 佐野 仁美, 川村 信明
    2014 年 46 巻 1 号 p. 39-43
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
     ミトコンドリア病の代表的な病型の1つであるMELASの卒中様発作の成因として, 動脈の拡張障害が考えられており, 血管拡張能をもつL-arginine (L-Arg) が治療薬の1つとして提唱された. 今回, 頻回の卒中様発作 (9歳から5年間に14回) を起こしたMELASの女児を経験し, 初発時よりL-Arg (0.5g/kg) の静注療法を行い, その効果を検証した. 投与後24時間以内に頭痛と嘔気が消失し, 神経症状が改善した場合を有効とした. 発症後4時間以内に静注開始できた4回は全て有効であったのに対し, それ以後に投与した5回では1回しか有効でなかった. また, 早期投与のほうがMRI病変の予後も良い傾向であった. 今後の検討によりL-Arg静注療法が有効となる条件設定が必要と考える.
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