脳と発達
Online ISSN : 1884-7668
Print ISSN : 0029-0831
ISSN-L : 0029-0831
46 巻, 4 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
巻頭言
総説
  • 岡西 徹, 飯田 幸治, 越智 文子, 大坪 宏
    2014 年 46 巻 4 号 p. 257-263
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
     結節性硬化症は, 大脳に発生する皮質結節により, てんかんを発症させる. てんかんは結節性硬化症の患者の60~90%に認められ, その内50~80%は難治性てんかんとなる. 多発性に結節を有する患者の脳は, てんかんのネットワーク形成が広く, 強いてんかん原性の原因と考えられる. 発症初期には単一の焦点にみえても, 両側半球に, 複数もしくは広範にてんかん原性部位が広がる症例がある. レム睡眠時を含む長時間脳波解析はspikeの側方性を確認することができ, てんかん外科治療の手術側の決定に応用できる. 脳磁図は等価電流双極子の分布状態 (cluster, scatter) を調べることで, てんかん原性部位の決定に応用できる.
     皮質結節で特徴づけられる複数の病変を有する結節性硬化症の患者においても, 頭皮上脳波モニタリングや脳磁図などで, てんかん原性領域を1カ所に同定できる症例があれば早期手術を推奨する. 複雑なてんかんネットワークが存在するため, 容易に二次性てんかん原性を獲得しうるが, そのような場合でも広範な皮質切除でてんかん発作抑制が可能である. 2剤以上の抗てんかん薬に抵抗性を示し, かつ皮質切除を行っても機能温存することが可能な結節性硬化症の患者には積極的な外科手術を薦める.
原著論文
  • 栗原 まな, 宍戸 淳, 吉橋 学, 藤田 弘之, 小萩沢 利孝, 井田 博幸
    2014 年 46 巻 4 号 p. 265-269
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
     【目的】小児期発症の低酸素性脳症後遺症の長期予後について報告する. 【方法】入院リハビリテーションを行った16歳未満で発症した低酸素性脳症例35例 (発症年齢平均5歳8カ月) において, 急性期の状況と後遺症の状況を調査し, 低酸素性脳症後遺症の長期予後を検討した. 【結果】発症原因は溺水12例, 窒息6例, 心疾患10例などで, 原因により年齢分布に特徴があった. 後遺症は身体障害28例, 知的障害30例, てんかん16例, 高次脳機能障害12例 (視覚認知障害9例など) であった. 障害の重症度が高いのは, 発症原因では窒息・先天性心疾患・何らかの原因による心停止, 発症年齢では2歳以下・13歳以上, 急性期の意識障害が重症で長い場合であった. 【結論】低酸素性脳症の後遺症は, 急性脳症の後遺症に類似しているが, より重度な例が多かった.
  • 小枝 達也, 関 あゆみ, 田中 大介, 内山 仁志
    2014 年 46 巻 4 号 p. 270-274
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
     【目的】Response to intervention (RTI) の導入による特異的読字障害の早期発見と早期介入の可能性を検証する. 【方法】小学校1年生 (77名 ; 男児36名) を対象として, RTIを導入して特異的読字障害の早期発見と介入を行い, 3年生での予後を調査する. 【結果】1年生時に4名の音読困難のある児童が発見された. その4名に音読指導 (解読指導と語彙指導) を実施した結果, 3名は音読困難が軽快したが, 1名は特異的読字障害であると診断された. 3年生時には1年生時に発見された1名が特異的読字障害であり, 新たに診断に該当する児童はいなかった. 【結論】1年生時にRTIを導入することで, 特異的読字障害の早期発見と早期介入が可能になると考えられる.
  • 堀野 朝子, 塩見 正司, 井上 岳司, 温井 めぐみ, 九鬼 一郎, 岡崎 伸, 川脇 壽, 天羽 清子, 外川 正生
    2014 年 46 巻 4 号 p. 275-280
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
     【目的】小児の抗N-methyl-D-aspartic acid receptor脳炎 (以下抗NMDA受容体脳炎) 6例の臨床像と予後を検討する. 【方法】本脳炎の特徴的な臨床経過を有した症例を後方視的に検討した. 【結果】該当症例は男2例女4例, 年齢は13~16歳, 抗NMDA受容体抗体陰性例が1例含まれた. 女子全例で卵巣腫瘍を認め, 急性期以後の検出が3例, 増大例が1例存在した. 側頭葉病変を認めた1例で高次脳機能障害とてんかんが, 小脳病変を認めた1例で軽度知的障害の後遺症がみられた. 【結論】頭部MRIで異常を認めた2例は後遺症を有した. 腹部MRIによる卵巣腫瘍検索は, 脳炎治癒後最低4年以上は必要である.
  • —NIRSによる検討—
    森 健治, 森 達夫, 郷司 彩, 伊藤 弘道, 東田 好広, 藤井 笑子, 宮崎 雅仁, 原田 雅史, 香美 祥二
    2014 年 46 巻 4 号 p. 281-286
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
     【目的】近赤外線スペクトロスコピー (NIRS) を用い, 顔表情の模倣課題を施行中の前頭葉活動について, 自閉症と定型発達の小児例で比較検討する. 【方法】対象は定型発達の男児10例, 知的障害を有さない自閉性障害の男児10例. NIRS測定のため左右前頭部にそれぞれ17チャンネルのプローブを装着した. 【結果】自閉症群において初回検査時, 両側下前頭回弁蓋部 (Broca野) での酸素化ヘモグロビン (oxy-Hb) 濃度の上昇は, 定型発達児に比べ有意に低かったが, 同じ課題を複数回練習してから, 再度, NIRSを施行したところ, 同部でoxy-Hb濃度の有意な上昇が認められた. 自閉症群におけるoxy-Hb濃度の変化量と感情ラベリング成績の間には正の相関関係が認められた. 【結論】自閉症においても模倣運動を繰り返すことによりミラーニューロンを賦活できる可能性が示唆された.
症例報告
  • 山田 桂太郎, 木水 友一, 木村 貞美, 池田 妙, 最上 友紀子, 柳原 恵子, 鈴木 保宏
    2014 年 46 巻 4 号 p. 287-289
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
     症例は6歳男児. 3歳時に感冒に罹患した1週間後に, 突然左眼の内斜視が出現し, 血液検査, 髄液検査, テンシロンテスト, 頭部MRI検査で明らかな異常を認めず, 感染を契機に発症した特発性外転神経麻痺と診断した. 症状はvitamin B12 (VitB12) 内服にて, 約3カ月後に寛解した. 6歳時, 特に誘因なく, 左眼の内斜視が出現し, 特発性外転神経麻痺の再発と診断した. VitB12内服治療するも症状の改善は認められないため, 再発26病日からステロイドパルス療法を3クール施行し, 症状は劇的に改善した. 再発後約3年が経過したが, 症状の再燃は認めていない. 本疾患に対するステロイド療法は有効で, 自然寛解を示さない症例には試みるべき治療法であることが示唆された.
  • 鈴木 敏洋, 橋本 祐至, 安齋 聡, 永沢 佳純
    2014 年 46 巻 4 号 p. 290-296
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
     体幹, 下肢を中心とした激しい疼痛の管理に難渋したGuillain-Barré症候群 (GBS) の8歳男児を経験した. 3日間の発熱を伴う感冒の2週間後に体幹・四肢の疼痛が自覚され, その後歩行・立位困難症状が出現し, 当科初診時筋力低下並びに深部腱反射の消失を認めた. 経過・症状並びに髄液検査, 末梢神経伝導速度, 脊髄MRIの所見より, GBSと診断した. 0~5の6段階のFace scaleによるvisual analogue scale (VAS) で5の疼痛が持続し, acetaminophen, gabapentinでは管理困難であったため, fentanyl持続静注を併用開始したところ疼痛緩和を認めた. GBSの重度の疼痛管理にオピオイド鎮痛薬の併用は有用であると考えられた.
  • 林 仁幸子, 川谷 正男, 巨田 元礼, 米谷 博, 大嶋 勇成
    2014 年 46 巻 4 号 p. 297-300
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
     症例は12歳女児. 10歳から運動能力・学業成績の低下を認め受診, Basedow病と診断された. 一過性の四肢脱力, 発語困難のエピソードがあり, 脳MRIで類もやもや病と左前頭葉の虚血性変化を示唆する所見を認めた. 抗甲状腺剤では甲状腺機能亢進のコントロールが困難であったため, 甲状腺亜全摘術を施行. その2カ月後, 左浅側頭動脈-中大脳動脈吻合術を施行した. 術前後でarterial spin labeling法を用い脳灌流を評価したところ, 術後に左前頭葉の血流改善を認め, 血管造影, アセタゾラミド負荷15O-gas PETの結果との相関を認め, 脳灌流の経過フォローに有用と考えられた.
  • 宮田 世羽, 島崎 真希子, 小松 祐美子, 中村 由紀子, 岡 明
    2014 年 46 巻 4 号 p. 301-306
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
     非けいれん性てんかん重積状態 (nonconvulsive status epilepticus ; NCSE) を初発症状とした前頭葉てんかんの1例を経験した. 症例は11歳男児で既往歴はない. 5時間持続する見当識障害と異常行動を主訴に受診し, 脳波での持続的なてんかん性放電によりNCSEと診断した. diazepamの投与により, 脳波所見の改善と共に反応性の低下や見当識障害が改善した. 以降, 神経後遺症や発作の再発はない. NCSEは全身性急性疾患や難治性てんかんに合併し, 予後不良な病態と考えられてきたが, 部分発作重積状態や欠神発作重積状態では予後良好な症例が存在する. 特にNCSEを初発症状とするてんかん症例では合併症による障害がなければ, 予後が良好な可能性が高いことが示唆された.
  • 吉村 歩, 木部 哲也, 横地 健治
    2014 年 46 巻 4 号 p. 307-310
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
     患者は早産・核黄疸に起因する脳性麻痺の男児でdystoniaが主症状だった. 3歳6カ月時にbotulinum毒素 (BoNT-A) 療法を施行し, dystoniaの改善を見たが, 頚部の過剰な前屈と嚥下障害の副作用が出現したため, 再投与は中止となった. dystoniaの再燃はなかったが, 8歳時に四肢の自発運動低下と足クローヌス出現, 画像で上位頚髄に囊胞性病変とos odontoideum (OO) を認めた. OOによる頚髄症と診断し頚椎後方固定術により症状および画像所見は改善した. 本例では, OOの成因は不明であるが, OOによる頚髄症の発症にBoNT-A療法後の頚部の過剰な前屈運動の経過が関与した可能性も推察された.
  • 本島 敏乃, 杉田 克生, 小俣 卓, 藤井 克則
    2014 年 46 巻 4 号 p. 311-314
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/25
    ジャーナル フリー
     Cockayne症候群 (以下CS) での腎障害を早期に発見しうる簡便な指標として, 自験例3例について, 血清クレアチニン (以下Cr) と血清シスタチンC (以下CysC) の推移を後方視的に検討した. Crは, 3症例とも観察期間内では年齢別基準値内であったが, 身長換算の基準値を用いると5~7歳から徐々に基準を超えていた. CysCは, 慢性腎疾患重症度分類でステージ2~3となった状態で高値を示していた. 以上より, 著明な成長障害を呈するCSにおいては, 身長換算のCr値が指標として有用であると考えられた. 適切な腎機能評価により, 腎への負担を考慮した薬物投与にも有用と考えられる.
国際会議印象記
報告
地方会
feedback
Top