脳と発達
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48 巻 , 4 号
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巻頭言
総説
  • 竹島 泰弘
    2016 年 48 巻 4 号 p. 241-246
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/09
    ジャーナル フリー
     Duchenne型筋ジストロフィーの責任遺伝子であるジストロフィンがクローニングされて四半世紀が過ぎた. ジストロフィンが同定された当時は, すぐにでも遺伝子治療が実現するものと期待されたが, 残念ながら未だ臨床に応用されてはいない. 一方, 変異ジストロフィン遺伝子からの遺伝情報を修飾することによる分子治療の開発が進み, 現在多くの治験が行われている. 「エクソンスキッピグ誘導治療」は, 1ないし数エクソンの欠失による本疾患症例に対し, アンチセンスオリゴヌクレオチドによってスプライシングの過程で欠失領域に隣接するエクソンスキッピングを誘導しアミノ酸読み取り枠のずれを修正するものである. 私たちはアンチセンスオリゴヌクレオチド静脈内投与により筋組織においてジストロフィン蛋白発現を誘導し得ることを, 世界で初めて明らかにした. 一方, 「ナンセンス変異リードスルー誘導治療」は, ナンセンス変異よる本疾患症例に対し翻訳の過程でナンセンス変異を読みとばすものである. 現在, 私たちはarbekacinによるナンセンス変異リードスルー誘導治療の医師主導治験を行っている. 世界各地においてもこれらの分子治療の治験が行われており, 有効性を示す結果が示されつつある. これらの治療が一日も早く多くの患者さんのもとへ届けられることが期待される.
原著論文
  • 松浦 隆樹, 浜野 晋一郎, 平田 佑子, 大場 温子, 熊谷 勇治, 鈴木 ことこ, 小一原 玲子, 菊池 健二郎, 田中 学, 南谷 幹 ...
    2016 年 48 巻 4 号 p. 247-251
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/09
    ジャーナル フリー
     【目的】West症候群 (WS) に対する静注免疫グロブリン (IVIG) の作用機序を考察するため, IVIG投与前後のサイトカインの検討を行った. 【方法】2010年4月~2014年5月に当センター神経科に入院した11例のWSに対して, IVIG療法 (200~500mg/kg/日, 3日間投与) を行った. IVIG投与後, 2週間以内にスパズムが消失した場合, その後2週間毎にIVIG (同量) 1日間を最大7クール施行した. 初期導入IVIG投与前後の血液と髄液のサイトカイン (IL-1β, IL-2, IL-4, IL-5, IL-6, IL-8, IL-10, IL-17, interferon γ, granulocyte macrophage colony stimulating factor, IL-18, tumor necrosis factor-α〔TNF-α〕) を計測し, 初期導入IVIG投与前後の発作消失群と発作残存群を比較検討した. 【結果】発作消失群は5例 (潜因性1例), 発作残存群は6例 (潜因性1例) であった. IVIG投与前では, IL-10, IL-18, TNF-αは髄液より血清で有意に高値であり, IL-8は血清より髄液で有意に高値であった. 発作消失群, 発作残存群の比較では, IVIG投与前で, 血清IL-18は発作消失群に比較して発作残存群で有意に高値であった. IVIG投与前後の変化量では, 血清IL-18と髄液IL-8は発作消失群と発作残存群でそれぞれ2群間に有意差を認めた. 【結論】血清IL-18と髄液IL-8はWSの病態やIVIGの作用機序に重要な因子であることが考えられた.
  • 高木 一江
    2016 年 48 巻 4 号 p. 253-258
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/09
    ジャーナル フリー
     【目的】神経発達障害のてんかん合併例の治療として, levetiracetam (LEV) を併用投与した症例の有効性と忍容性を検討した. 【方法】2011年10月~2014年12月までにLEVを処方した神経発達障害21例 (男女比16 : 5, 現在の年齢分布は10歳代6例, 20歳代7例, 30歳代7例, 40歳代1例) を対象とした. 効果は発作消失, 有効 (75%以上発作減少, 50%以上発作減少), 不変 (変化なし), 悪化 (発作回数増加) とした. 【結果】自閉スペクトラム症 (ASD) 19例 (最重度知的能力障害13例, 重度知的能力障害5例, 高機能1例), 境界知能1例, 注意欠如・多動症 (AD/HD) 1例であった. てんかんとてんかん症候群国際分類 (1989年) は, 症候性局在関連性てんかん15例, 全般てんかん6例であった. LEVの開始用量は平均488.1mg/日, 維持用量は平均1,714.2mg/日, 平均投与期間は2年3カ月であった. 奏効率は発作消失11例 (52.4%), 75%以上発作減少4例 (19.0%), 50%以上発作減少3例 (14.3%) で, 奏効率は85.7% (18例) であった. その他, 不変14.3% (3例) で, 悪化例はなかった. 初期の浮動性めまいが1例のみで, 全例で服薬継続中である. 抗けいれん剤はLEV開始時2.5剤から1.5剤まで調整でき, 情緒的安定も得られ, 精神安定剤が中止できた例もあった. 【結論】LEVはASDを中心とした神経発達障害のてんかん合併例において高い奏効率と忍容性を示した. 本剤の投与により併用薬数を減らすことができ, コンプライアンスの向上に寄与する可能性が示唆された.
  • 中村 由紀子, 島崎 真希子, 小松 祐美子, 中野 瑛子, 松岡 雄一郎, 宮田 世羽, 岡 明
    2016 年 48 巻 4 号 p. 259-264
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/09
    ジャーナル フリー
     【目的】反社会的行動の症状を持つ発達障害の症例の特徴について検討する. 【方法】当院小児神経外来に受診した発達障害のうち, 平成21年10月から平成24年10月までに就学年齢以上であった110例を対象とした. DSM-Ⅳ-TRの素行障害の診断基準の症状が1項目以上あるものを反社会的行動群とし, その症状を持たない群と背景, 行動の特徴, 治療による症状改善の有無について比較した. 【結果】反社会的行動は38例にみられ, そのうち素行障害に該当するものは7例で全体の5.5%であった. 反社会的行動の要因は, 注意欠陥/多動性障害, 虐待, 施設入所歴, 家族の精神・発達的問題, 不安定な家庭であり, 統計学的に有意であった. 投薬や環境改善の指導を行ったところ, 66%の症例で, 反社会的行動について何らかの改善を認めた. 素行障害7例のうち4例が虐待により児童養護施設等に入所しており, 3例が社会性に強い困難さを抱えた広汎性発達障害で, 全例が治療的介入を行っても反社会的行動の改善はみられなかった. 【結語】発達障害児の反社会的行動には主診断が注意欠陥/多動性障害であることや虐待, 施設入所歴, 家族の精神・発達的問題, 不安定な家庭の要因が関与していた. 最も効果的な治療は, 保護者に対する子どもへの関わりの指導であった. 素行障害まで進行している症例は改善が極めて困難であり, 反社会的行動がみられた場合は早期介入する必要がある.
  • 喜多 俊二, 西村 洋子, 戸川 雅美, 前垣 義弘
    2016 年 48 巻 4 号 p. 265-270
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/09
    ジャーナル フリー
     【目的】West症候群をはじめとする乳幼児期発症の難治性全般てんかんに対するvigabatrin (VGB) の有効性を検討する. 【方法】当科でこれまでにVGBを使用した12例を後方視的に調査し, その有効性を検討した. 【結果】対象はWest症候群8例, 早期乳児てんかん性脳症2例, 早期ミオクロニー脳症1例, 症候性全般てんかん1例であり, いずれも多剤に抵抗性であった. VGB投与前に, 3~10剤の抗てんかん薬が使用されていた : valproate 11例, nitrazepam 6例, 副腎皮質刺激ホルモン療法 (ACTH療法) 5例, clonazepam 4例, zonisamide 4例, など. VGBが著効したのは結節性硬化症が原因のWest症候群1例のみであった. 一過性効果は潜因性West症候群2例で認めた. 【結論】ACTH療法を含めた多剤抵抗性の全般てんかんへのVGB有効例は少ないため, 投与には慎重な症例選択が重要である.
  • 柏木 充, 荒井 洋, 宇野 里砂, 九鬼 一郎, 島川 修一, 田川 哲三, 田辺 卓也, 鳥邊 泰久, 永井 利三郎, 最上 友紀子
    2016 年 48 巻 4 号 p. 271-276
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/09
    ジャーナル フリー
     【目的】小児期発症のてんかんでは, 成人期以降も治療が必要な場合がある. 成人への移行における患者側の希望や必要を調査し, 適切なてんかん診療体制を築くための課題を検討した. 【方法】12歳以上の中学生から18歳以下のてんかんの子どもを持つ保護者を対象にアンケート用紙を配布し, 郵送で回収した. 【結果】176例配布し, 有効回答79例を分析した (回収率45%). 将来のてんかん診療は59%が小児科を継続希望し, その理由は「今の治療を信頼している」が多かった. また, 将来の転科には, 73%が不安を感じており, その理由は「引き継ぎがきちんとされるのかが心配」が多かった. 主治医から将来のてんかん診療について, 他科への転科を勧められた者はいなかったが, 19%が現在の小児科でのてんかん診療に違和感を持っていた. 不安がある群は不安がない群と比較し, 一般校在籍が少なく, 年単位以上の発作を認める症例や小児科での診療継続を望む症例が多かった. 【結論】約7割の保護者が将来のてんかん診療の転科に不安を感じていた. 小児期を経て成人期にも治療が必要となる様々な背景をもつてんかん患者が希望して選択できるてんかん診療体制を構築するためには, 小児科医と内科医, 脳神経外科医, 精神科医, てんかん診療科が各科協力してみていく連携の整備が鍵となる.
症例報告
  • 元木 崇裕, 中川 栄二, 小一原 玲子, 高橋 幸利, 竹下 絵里, 石山 昭彦, 齋藤 貴志, 小牧 宏文, 須貝 研司, 佐々木 征行
    2016 年 48 巻 4 号 p. 277-281
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/09
    ジャーナル フリー
     てんかん発症までの発達は問題なかった. 6歳9カ月頃より全般性強直間代発作, ミオクローヌス発作を認め, てんかんと診断され抗てんかん薬が開始された. 7歳2カ月時, 長時間脳波で明らかな発作時脳波異常を認めず偽発作の可能性も考慮され一旦抗てんかん薬が中止された. 発作は改善せず, 次第に歩行困難となり発語が減少し食事や排泄に介助が必要となった. 半年間で知能指数 (IQ) が92から52まで低下した. 7歳8カ月時, 当院入院時には, 全般性強直間代発作やミオクローヌス発作が連日群発していた. 各種抗てんかん薬に対し難治であり, 脳波検査で両側性てんかん性異常波と背景波の徐波化を認め, てんかん性脳症と診断した. 血中/髄液中の抗グルタミン酸受容体抗体 (anti-glutamate receptor antibody : 抗GluR抗体) の上昇を認め自己免疫の関与を疑った. 免疫グロブリン投与を開始し, 1カ月で運動面, 認知面共に改善傾向となった. 2~3カ月毎に免疫グロブリン投与を行い, 2クール終了後に発作は消失し, 3クール終了後にてんかん性異常波はほぼ消失した. IQも63まで改善した. 6クール終了した8歳8カ月時点で日常生活動作は自立し, 発達面もほぼ発症前の状態まで改善した. 発作は極短時間の意識減損発作が週1回起こるのみである. 免疫グロブリンが著効したことより自己免疫の関与が強く示唆された. てんかん発作が亜急性に増悪し, 発達退行を認める場合には原因として自己免疫が関連している可能性があり, 免疫グロブリン投与を考慮すべきである.
  • 佐野 史和, 金村 英秋, 反頭 智子, 杉田 完爾, 相原 正男
    2016 年 48 巻 4 号 p. 282-286
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/09
    ジャーナル フリー
     脳血流single photon emission computed tomography (以下SPECT) は急性脳症において急性期の異常所見の検出感度が高いことなどから, 近年注目される検査の一つとなってきている. 今回我々はSPECTで一過性に右前頭・側頭部の血流低下を認め, 同時期に新規作業の学習困難を含む遂行機能障害を呈した急性脳症の1例を経験した.
     症例は5歳の男児で, 遷延する意識障害で発症し, 第2病日の覚醒時脳波で全般性高振幅徐波を認め急性脳症と診断した. 第3病日の頭部単純MRIでは明らかな異常は認めなかったが, SPECTで右前頭・側頭部の血流低下を認めた. 第20病日のKaufman assessment battery for children (以下K-ABC) において継次処理尺度の標準得点が低値であり, 新規作業の学習困難を含む遂行機能障害が認められた. 発症8カ月後に行ったSPECTで同部位の血流低下は改善し, 発症12カ月後に行ったK-ABCでは継次処理尺度も改善を認めた.
     急性脳症発症早期にMRIで異常が指摘されない場合でも, SPECTで血流の異常を検出できる可能性がある. また, 神経心理学検査とSPECTを併用することで, 高次脳機能障害のより正確な客観的評価を施行し得た. SPECTは小児急性脳症の補助的診断と高次脳機能障害を含む後遺症の診断や病態の理解に有用と考えられる.
短報
  • 脇坂 晃子, 中村 奈美, 辻 隆範, 山田 晋也, 丸箸 圭子, 大野 一郎, 関 秀俊
    2016 年 48 巻 4 号 p. 288-290
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/09
    ジャーナル フリー
     【目的】専用カニューレと低定量自動持続吸引器を用いた「新たんの吸引法」を重症心身障害者 (以下, 重症者) および神経筋疾患患者に導入し, その有効性や問題点などについて検討した. 【対象】20歳代~40歳代の7例. 【結果】専用カニューレへの変更では, 従来型の専用カニューレ使用時には内径で1~1.5mm, 外径 (外短径) で0.3~1.3mmのサイズアップが必要であった. 持続吸引による1日あたりの吸痰量は50~200mlで個人差があった. 6例で有効であり, 無気肺の改善, 肺炎による抗生剤投与回数の減少, 吸痰回数減少による介護負担の軽減がみられた. 【まとめ】「新たんの吸引法」は重症者にも導入可能であり, 唾液誤嚥による呼吸器症状を改善し, 用手吸引による介護負担を軽減した. 誤嚥防止術に消極的な場合に, 患者や家族の希望に沿う治療の一つとして導入を考慮すべき方法と思われた.
  • 岡本 健太郎, 福田 光成
    2016 年 48 巻 4 号 p. 290-291
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/09
    ジャーナル フリー
     小児神経専門医の受診を希望する患者にとって, インターネットは情報を得るための重要な手段の一つである. 日本小児神経学会のホームページ (以下, HP) には小児神経専門医名簿が公開されている. 一般患者の立場から, 名簿に記載されている医師の名前が所属施設のHPにて確認できるかを検討した. その結果, 約2/3の専門医はHPで確認することができたが, 残り1/3は検索不能であった. 小児神経専門医の受療での利便性を増すためのさらなる対処が必要であると考えられた.
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