【目的】熱性けいれんを繰り返した症例の予防的治療, 脳波などの経過を検討し, 脳波の必要性や抗てんかん薬内服の適切な期間を検討する. 【方法】熱性けいれんを3回以上発症し平成26年11月1日〜平成29年10月31日までに当科の神経外来を受診した症例の診療録などから後方視的に検討した. なお今回, 2年以上けいれん発作が見られなかった場合, 観察期間中最後の発作をその症例の最終発作とした. 【結果】対象は31例で観察期間は中央値で4年6か月であった. 再発予防として全例でまずdiazepam坐剤の投与が試みられていたが, 1例はふらつきが強く無治療となった. 抗てんかん薬を内服した18例のうち, 16例でvalproate, 2例でphenobarbitalを初めに選択された. 調査時点で24か月以上内服していた16例のうち, 内服開始から24か月以内に13例 (81%) で最終発作を認めていた. 脳波が評価可能な28例のうち検査の適応が無熱性けいれんの2例を除く26例では, 発作回数と脳波異常の検出時期に有意な相関はみられなかった. 【結論】熱性けいれんを繰り返す症例では内服開始後約80%の症例で2年以内に以降の再発がなく, 予防内服期間は1〜2年が適当である可能性が示唆された. また, 脳波検査の要否および最適時期をけいれん発作の回数から推定することは困難であった.
【目的】慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー (chronic inflammatory demyelinating polyneuropathy; CIDP) の臨床的特徴を後方視的に再考し, 診断の要点を探る. 【方法・対象】2か月以上進行する末梢神経障害で, 電気生理学的もしくは神経病理所見から脱髄を認め, CIDPと確定診断しえた8小児例を対象とした. 診療録より調査し, 障害部位から典型例, 遠位型 (distal acquired demyelinating symmetric; DADS) と非対称型 (multifocal acquired demyelinating sensory and motor; MADSAM) に分け臨床症状, 検査所見, 治療反応性を検討した. 【結果】典型例4例, 非典型例4例 (DADS 3例, MADSAM 1例). 全例で電気生理学的に脱髄所見が確認され, 3例では節性脱髄を認めた. 非典型例2例は髄液蛋白細胞解離と神経根腫大を共に認めなかった. 非典型例では, 典型例に比べ診断に時間がかかり (p=0.029), 遺伝性ニューロパチーとの鑑別に病理検査が有用であった. 治療反応性は全典型例, 非典型2例において免疫修飾治療により症状寛解を認めた. 【結論】小児の緩徐進行性の末梢神経障害ではCIDPの非典型例も鑑別に挙げ, その診断には電気生理学的な節性脱髄所見や病理所見が有用である.
Structural maintenance of chromosomes 1A (SMC1A) 遺伝子は細胞分裂時に重要なコヒーシン複合体のSMC1をコードし, Cornelia de Lange症候群 (CdLS) の約5%に同遺伝子の変異が認められる. しかし, CdLSを呈すSMC1A変異例はmissenseまたはin-flame deletion変異の報告がほとんどで, SMC1Aのnonsense変異やframeshift変異などの機能喪失変異例ではCdLSの身体的特徴が乏しいことが明らかになってきている. 我々はてんかん発作群発と軽度知的障害を呈し, 5歳時に全エクソーム解析でSMC1A遺伝子にde novoの新規ヘテロ接合性frameshift変異 (NM_006306.3 : c.2647del : p.Glu883Lysfs*2) を認めた症例を経験した. SMC1Aの機能喪失変異は, 女児においててんかん発作群発と知的障害を呈するprotocadherin 19 (PCDH19) 関連てんかんと類似した臨床像を示す. SMC1A変異はCdLSの原因とともに 「素因性てんかん」 の原因として認識することが重要である.
注意欠如・多動症 (以下, ADHD) の診断治療ガイドライン第4版では, 治療・支援における環境調整, 心理社会的治療の位置づけが明確化された. また自閉スペクトラム症 (以下, ASD) においては, 保護者は子育てにストレスを抱えやすく, 肯定的な介入を促す支援が有効である. 我々は, 外来で行える心理社会学的治療として, 「行動処方」 を提唱している. 今回その一つである, 「ありがとう作戦ゲーム」 がADHD, ASDの症例に有効であったので報告する. 症例は6歳男児. 主訴は落ち着きない. 母親は, 子育てに悩み, 叩いていたために子ども家庭支援センターが指導した. 本児をほめるために 「ありがとう作戦ゲーム」 を行った. 「ありがとう作戦ゲーム」 とは, ほめることを具体的に提示する方法であり, 「ありがとう」 と言おうと思ったら+1点, 言えたら+3点, 3回言えたら+5点と 「ありがとう」 と言うことを点数化する手法である. 今回, 「ありがとう作戦ゲーム」 を行うことにより, 母親は本児を叩かなくなり, 母親の子どもへの態度が変容し, 母子関係および本児の行動も改善した. 「ありがとう作戦ゲーム」 は, 母親と子どもの関係を改善し, 笑顔を増やす手法として有効であった.
急性散在性脳脊髄炎 (acute disseminated encephalomyelitis ; ADEM) は白質優位のMRI病変を認めることが多い. 症例は9歳の女児で, 遷延する発熱・頭痛および意識障害のため第10病日に入院した. 髄液検査で細胞増加 (107/μl) があり, 脳MRIは側頭葉・島葉・前頭葉の皮質を中心にT2強調像, 拡散強調像で高信号を示す病変を認めた. ヘルペス脳炎を疑いacyclovirによる治療を開始したが, 発熱が持続し, 髄液中の単純ヘルペスはPCR法で陰性であった. 第17病日の脳MRIでは両側の線条体にT2高信号を示す病変が新たに出現し, 錐体路徴候も認めたため, ADEMを疑いステロイド療法を開始したところ, 臨床症状は速やかに改善した. 初回のエピソードから4か月後にADEMの再発がみられたが, ステロイド療法で症状は改善し, その後再発を認めない. 急性期血清において抗myelin oligodendrocyte glycoprotein (MOG) 抗体が陽性を示した. 本症例はMRIで拡散制限を伴う皮質主体の病変を認めた点がADEMとしては非典型的であり, 抗MOG抗体陽性ADEMの臨床像を広げる可能性があると考えられた.
βプロペラ蛋白関連神経変性症 (beta-propeller protein-associated neurodegeneration ; BPAN) は脳内に鉄沈着を伴う神経変性症の一亜型である. 我々は, X連鎖性優性に遺伝するBPANの責任遺伝子WDR45の変異を認めた難治性てんかんの24歳女性を乳児期より長期間追跡し, 特異な病像と脳波像の変容を認めた. 7か月に入浴時に左半身優位の強直間代発作で発症し, 1歳0か月時に意識障害を伴う焦点発作を認めた. てんかん発症後に精神運動発達は緩やかに退行し, 1歳7か月に独歩を獲得したが, 有意語は獲得しなかった. その後, 強直発作, 非定型欠神発作など多彩な発作型も加わり, 難治に経過した. 脳波では広汎性の速波, 睡眠中の速律動 (bursts of fast rhythm) および広汎性緩徐性棘徐波群発など特徴的な所見を認めた. 19歳時にMRI T2強調画像で淡蒼球や黒質に低信号域を認め, 全エクソーム解析でNM_007075.3 : c.830+2dupのde novo変異を認めた. 20歳頃から歩行困難など退行が始まったが, 同時期に非定型欠神発作は消失し, 脳波異常も改善した. 一方で, 強直発作は頻度を増し悪化した. BPAN患者の脳波を臨床症状とあわせて詳細に長期に検討した報告は最初であり, その脳機能変化の解明につながると思われる.