【目的】注意欠如多動症 (attention deficit hyperactivity disorder ; ADHD) 児の外傷予防に向けて, ADHD児の協調運動機能を調べるとともに, それらが環境下での行為選択に与える影響を検討した. 【方法】ADHD児35名と定型発達児51名とした比較対照実験を行った. 各児の協調運動機能をThe Movement Assessment Battery for Children Second Editionによって評価した. また, 高さが可変する水平ロープを通り抜ける際に, 「またぐ」 か 「くぐる」 かの行為を選ぶ実験課題を通して, 環境下での行為選択を評価した. それぞれの成績について群間比較を行うとともに, 行為選択に与える要因を検討した. 【結果】定型発達児に比して, ADHD児は, 協調運動機能が低く, 特にボール運動・バランスが低成績であった. 行為選択課題では, ADHD児はロープが低い位置にあるにもかかわらず, くぐろうとする行為が多くみられた. これらの行為選択には, 協調運動機能の影響は少なく, 注意機能の影響が強く認められた. 【結論】本邦のADHD児では粗大運動や道具を使用した運動に困難さが認められた. 彼らの非効率な行為選択には, 環境や身体図式に注意を向ける弱さが影響しており, 外傷予防には運動機能に加えて, 注意機能への配慮が必要と示唆された.
【目的】本邦ではWest症候群に対して, 合成型副腎皮質刺激ホルモン (ACTH) を用いたACTH療法が行われている. 天然型ACTHを用いたACTH療法の副作用として副腎皮質機能不全が報告されているが, 合成型ACTH療法後の視床下部-下垂体-副腎皮質機能を検討した報告はない. 【方法】2010年4月〜2017年3月の間にWest症候群に対して合成型ACTH療法を実施された患者37名中, 治療終了後に副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン (CRH) 負荷試験が実施された患者35名を後方視的に検討した. CRH負荷試験において, コルチゾール頂値が15μg/dL未満の患者を副腎皮質機能低下群, 15μg/dL以上を正常群とした. 【結果】負荷試験が行われた35名のうち, 4名 (11%) が副腎皮質機能低下群であった. 副腎皮質機能低下群と正常群の間では, ACTH療法実施時の月齢, ACTHの総投与量・総投与日数, ACTH療法による副腎皮質機能低下以外の重大な副作用の有無に有意な差を認めなかった. 【結論】合成型ACTHを用いたACTH療法後の視床下部-下垂体-副腎皮質機能について, はじめて多数例で検討した. 本研究では副腎皮質機能低下群を予測する因子は同定されなかったが, 合成型ACTH療法後はCRH負荷試験への反応が不良である患者が存在することを認識する必要がある.
【目的】本研究では極低出生体重 (very low birth weight ; VLBW) 児の発達特徴をBayley乳幼児発達検査-第3版 (Bayley-Ⅲ) により縦断的に検討した. 【方法】富山大学附属病院NICUで2010年8月〜2014年12月に出生した児のうち, 修正18か月と36か月の2回Bayley-Ⅲを受検したVLBW児66名が対象であった. 66名の縦断比較に加え, 5尺度の得点が−1 SD未満を発達遅延基準とし, 非キャッチアップ群 (NCU群 : 2回とも遅延あり), キャッチアップ群 (CU群 : 修正18か月で遅れあり, 36か月で正常), 経過良好群 (GP群 : 2回とも正常) の3群に分けた比較も行った. 【結果】66名の縦断比較の結果, 言語得点が上昇した (p=0.000). 群分けの結果, NCU群24名, CU群21名, GP群21名となり, この3群では臨床背景に大きく差がないものの, 得点変化には3群で違いが生じており, 修正18か月の尺度得点ではNCU群において認知と粗大運動で低得点を示した (認知 : p=0.033, 粗大運動 : p=0.002). 【結論】VLBW児は修正18か月から36か月の言語領域の発達が顕著であったが, 発達過程を分類すると, VLBW児の中でも発達状況は様々であり, 修正18か月で認知と粗大運動が低いことが36か月時発達遅延リスク高群の特徴であることが示唆された.
受診1年前からの後頚部の凝りに引き続く左上腕の筋力低下と筋萎縮を呈した12歳男児例を報告した. Spurling testで左僧帽筋に放散痛を認め, 骨格筋CTでは左三角筋萎縮を認めた. 頚部MRIでは左神経叢の腫大とSTIR高信号を特にC5, 6神経節において認めた. 電気生理学的検査では神経原性変化を示した. 以上より頚椎症性筋萎縮症と診断した. ステロイドパルス療法直後に症状の改善を認めた. 本症小児例は稀で, 髄節性に所見を認めることが特異的であった.
KCNQ2は良性家族性新生児けいれん (BFNC) または発達性てんかん性脳症 (DEE) の病因遺伝子として知られている. 症例は3歳4か月男児, 健常両親の第2子. 生後8日から啼泣し呼吸停止後に四肢を強直させる発作を反復し, 7か月までphenobarbitalを内服した. 1歳3か月から有熱時に抗けいれん薬の静注を要する群発発作を反復し, 発熱時にdiazepam坐剤による予防投与を開始した. 体調不良時にはミオクロニー発作が増加し, 発作後の意識障害は遷延する傾向を認めた. 2歳11か月時の新版K式発達検査ではDQ 49であり, 軽度の自閉と過成長を認めた. 両親の同意を得て, てんかんの原因と考えられる154遺伝子をターゲットキャプチャー法で解析し, KCNQ2にde novoの2塩基挿入変異NM_172107.2 (KCNQ2_v001) :c.2401_2402dup (p.Phe802Profs*129) を同定した. KCNQ2変異は表現型としてBFNCまたはDEEを呈することが知られているが, 本症例は治療反応良好な新生児発作, ミオクロニー発作と有熱時発作群発, 軽度発達遅滞を特徴とする中間的な表現型を示した. 本変異は過去に報告のない新規変異であり, フレームシフトによるKCNQ2のドミナントネガティブ効果が推測される. 本症例の存在はKCNQ2関連てんかんが表現型に連続性を持った疾患である可能性を示唆する.
発作抑制にlidocaine (LID) が奏効したが, 投与期間中に高尿酸血症を生じたSCN2A新規変異 (p.Trp1594Cys) による大田原症候群の1例を経験した. 日齢1からけいれん様の動きが出現し, その後スパズムや強直発作を呈するようになり, 脳波でsuppression-burst patternを認めた. LID投与により発作は消失したが高尿酸血症出現のため継続投与できなかった. LIDによる高尿酸血症の報告はないが, 関連している可能性は否定できない.
グルタル酸尿症1型 (GA1) はグルタリルCoAデヒドロゲナーゼ (GCDH) の異常に基づく有機酸代謝異常症であり, 乳幼児期に急性脳症様発作で発症し, ジストニアなどの重篤な運動異常症を呈する. 今回, 乳児期からの頭囲拡大と境界域知能を示したが, 脳症様発作は認めず, 運動症状は極めて軽微なGA1の女子症例を経験した. 画像上の白質変性と側頭葉低形成の所見が診断の手掛かりとなり, 尿中有機酸分析から生化学的に診断し, GCDH遺伝子に既知のc.914C>T (p.Ser305Leu) & c.1016T>G (p.Met339Arg) 複合ヘテロ接合性変異を認めた. 近年, 乳幼児期の急性脳症や運動異常症がなく, 青年期から成人期に頭痛・めまい・振戦・認知機能低下・痙性麻痺・尿失禁などの非特異的神経症状から診断されるlate-onset type GA1が報告されている. 表現型と遺伝型やGCDH残存酵素活性は相関せず, late-onset typeで急性脳症を免れる理由は不明である. カルニチン投与と蛋白制限により症状は改善するため早期診断は重要であるが, GA1が全国的に新生児マススクリーニングの対象となった2011年以前に出生した年長児や成人では未診断GA1の可能性があり, 非特異的な神経症状に加え, 画像上白質変性や側頭葉低形成の所見を認めた場合には本疾患を鑑別に挙げて尿中有機酸分析を行う必要がある.
脊髄性筋萎縮症 (spinal muscular atrophy ; SMA) Ⅰ型に対しアンチセンス核酸であるnusinersenを日齢55より開始した症例を経験した. 症例は男児で, 胎児期, 生直後に異常を認めなかったが, 1か月健診で筋緊張低下を指摘された. 日齢48に遺伝学的検査にて脊髄性筋萎縮症Ⅰ型と診断し, 日齢55よりnusinersenの投与を開始した. 同剤導入4か月時点で呼吸補助を必要とせず, 全量経口哺乳, 上下肢の抗重力運動が可能となった. しかし, 生後4か月時の上気道感染症罹患を契機に経口哺乳量は減少し, 誤嚥性肺炎を来して再度全量経管栄養となった. 呼吸に関しては奇異性呼吸の改善を認めず, 生後6か月頃より夜間の非侵襲的陽圧換気およびカフアシストを導入した. Nusinersen投与を乳児期極早期に施行し, 四肢の運動発達に改善傾向が認められたが, 哺乳, 呼吸に関しては期待したほど大きな改善を認めなかった. 本症例はSMAの亜分類においてSMAⅠa型と考えられ, nusinersenの治療効果はⅠ型の中でも亜分類によって治療効果に差異があることが示唆された.
Duchenne型筋ジストロフィー (DMD) は, 男児出生3,500人に1人の頻度で生じる重篤な筋疾患の1つである. 責任遺伝子DMDはXp21に位置しているため, X連鎖劣性遺伝形式を示す. 患者の多くはDMD変異保因者である母親から変異を受け継いでいるが, 家族歴のない孤発例では母親が保因者であるかどうか, 遺伝学的検査を行わなければ明らかにすることができない. 本症例の母親は次の挙児希望が強くあるものの, 保因者診断について前向きに考えることができずにいた. そこで時間をかけて遺伝カウンセリングを継続し, 末梢血を用いた保因者診断を実施した. その結果, 生殖細胞系列のモザイク変異 [NM_004006.2 (DMD) : c.1132C>T (p.Gln378*)] が認められた. 確認のため, 血液以外の組織におけるモザイク率も勘案し, 再発リスク評価を行った. 母親は稀なモザイク変異についても考えることで, より客観的に自らの状況を理解し, 受け入れることができたものと考察した.
オプソクローヌス・ミオクローヌス症候群 (opsoclonus myoclonus syndrome ; OMS) は抗体を介した免疫学的機序が想定されている. 治療として免疫療法が施行されるが, 神経学的予後は様々である. 今回, 従来の治療は効果不十分で, rituximab療法により後遺症なく回復した症例を経験した. 従来の治療法では十分な効果が得られないOMSに対し, rituximab療法を早期に治療の選択肢に加えることで, 予後の改善が期待できると考えられた.
生来健康な12歳男児. 精神行動異常で入院し抗体検査から抗N-methyl-D-aspartate (NMDA) 受容体脳炎の診断で免疫療法を実施した. 後にけいれん, 呂律不明瞭, 書字障害, 左前頭葉皮質の画像異常で再発した. 初発時, 再発時で抗NMDA受容体抗体と抗myelin oligodendrocyte glycoprotein (MOG) 抗体が陽性であった. 抗NMDA受容体脳炎では抗MOG抗体, 大脳皮質脳炎を伴うことがあり, 両抗体により多様な臨床像を呈する可能性が示唆された.