てんかんは何らかの要因により, 脳神経細胞の興奮と抑制の均衡が破綻し, 脳神経細胞の過剰な興奮による. 電位依存性ナトリウムイオン (Na+) チャネルは神経細胞での伝導調整を担い, てんかんの発症に大きく関与する. てんかんでの異常が報告されている電位依存性Na+チャネルをコードする遺伝子は, SCN1A, SCN2A, SCN3A, SCN8Aの4つの遺伝子である. SCN1Aは素因性てんかん熱性けいれんプラス, SCN2Aは良性 (家族性) 新生児乳児てんかんと比較的軽症なてんかんにおいて病的バリアントが見られる. 一方で, いずれも重症な発達性てんかん性脳症においても病的バリアントを認める. 本項では, これら4つの遺伝子の異常と, それによる表現型について最新の知見を踏まえて解説する.
【目的】日本における青年期脳性麻痺児・者の主観的QOLを評価するため, 国際的に普及しているCerebral Palsy Quality of Life Questionnaire for Adolescents (CPQOL-Teen) 自己回答版を和訳し, その臨床的有用性を検討した. 【方法】原著者の許可を得て和訳したCPQOL-Teen自己回答版を脳性麻痺児・者57名 (cerebral palsy ; CP群) と定型発達児・者58名 (typically developing ; TD群) に実施した. 【結果】日本語版CPQOL-Teen自己回答版は, 両群で十分な検査-再検査信頼性と内的整合性およびJ-KIDSCREEN-27こども版を外的基準とした妥当性を示した. CPQOL-Teenの5領域のうち『機能についての満足度』は, CP群においてJ-KIDSCREEN-27のいずれの領域とも相関せず, CPの特性を反映する可能性が示された. 『コミュニケーションと身体的健康』『学校生活の満足度』『機能についての満足度』の3領域でCP群の得点はTD群よりも低く, 『全体的満足度と参加『社会生活の満足度』の2領域では両群で差がなかった. 【結論】日本語版CPQOL-Teen自己回答版は, 青年期脳性麻痺児・者の特性を踏まえた主観的QOLを把握できる有用な評価尺度であり, 有効な包括的支援の基盤になり得る.
【目的】MRIで側頭葉内側に病変を認める乳幼児期発症てんかんの臨床的特徴と外科治療の発作予後を明らかにする. 【方法】内側側頭葉の病変による3歳未満発症のてんかんに対し2007年1月〜2018年7月に当院で焦点切除術を行い, 1年以上経過観察した18例を後方視的に検討した. 【結果】男 : 女=7 : 11で, 発症年齢, 手術時年齢, 術後追跡期間の中央値は16か月, 37か月, 55か月であった. 発症時の発作症状は動作停止が50%と最も多い一方で, チアノーゼ33%やてんかん性スパズム28%, 強直発作28%, 無呼吸11%と非典型的な症状も認めた. 術前発作間欠時脳波異常は50%で焦点性であったが, 39%は両側性, 11%は異常を認めなかった. 44%は初回画像検査で病変を指摘されなかった. 発作間欠期脳血流99mTc-ECD SPECTは75%で病変部の血流低下または増加, 18F-FDG-PETは全例で病変部や周囲の集積低下を認めた. 病因は腫瘍12例 (67%), 限局性皮質異形成3例 (17%), 海馬硬化2例 (11%) であった. 術後発作は78%で消失した. 術前脳波異常の局在と発作予後の違いに統計学的有意差はなかった. 【結論】乳幼児期発症側頭葉てんかんでは症状や脳波所見が局在性に乏しいことがあるが, 焦点切除術で良好な発作予後が期待できる. 外科治療の対象となる病変の検索に経時的な画像評価が有用である.
【目的】神経筋専門病院における小児期発症ジストロフィノパチー患者の成人診療科へのトランジションおよび地域小児科との連携の現状を明らかにし, スムーズな小児—成人移行期医療について検討する. 【方法】全国の神経筋専門病院29施設に郵送でアンケートを実施した. 【結果】24施設から回答があり, 「成人科への診療科移行が行われている」 のは半数, 「診療科移行が難しい」 と回答したのは19施設で, 診療科移行が難しい現状が示唆された. 難しい点として, 患者・家族との関係性構築, 情報伝達, 移行時期などが挙がり, 7施設ではこれらに関して様々な工夫を行っていた. 専門病院以外での小児期の診療に関して, 病態や病状の説明, 遺伝情報の説明, リハビリテーションなどに問題を感じていた. 小児期の診療における連携では, 「他院と並行して専門病院でもフォローする」, 専門病院の役割を 「専門的なアドバイスや情報発信」 とする回答が多かった. 【結論】小児期発症ジストロフィノパチー患者は, 小児期は地域の小児科が, 成人期には専門病院が中心となりフォローしていると考えられた. 成人科への診療科移行が難しい現状がみられたが, 小児期の早い段階から専門病院と連携することで, 小児期に必要なトータルケアが提供できると同時に, スムーズな成人診療科へのトランジションに繋がると思われた.
【目的】けいれん重積型 (二相性) 急性脳症 (acute encephalopathy with biphasic seizure and late reduced diffusion ; AESD) は, 初回けいれん時点での熱性けいれん重積状態 (febrile status epilepticus ; FSE) との鑑別が課題である. 初回けいれん直後にAESDを予測するシステムの構築を目的とした. 【方法】対象は2011年4月から2017年4月の期間にFSEおよびAESDと診断された症例で, 患者背景, 臨床経過, 初回けいれん直後の血液・髄液検査所見を検討し, 多変量解析を用いAESD発症の予測因子を抽出し, カットオフ値を算出, ロジスティック解析を踏まえAESD発症を予測するスコアリングシステムを構築した. 【結果】FSE群55例, AESD群28例. 統計解析の結果, ①発症年齢18か月以下, ②けいれん持続時間30分以上, ③Cr 0.3mL/dL以上, および④AST 42IU/L以上, の4因子がAESD発症予測因子と考えられ, これらのスコアの重みづけを行って設定したカットオフ値を用いると, 感度91.7%, 特異度65.4%であった. 【結論】初回けいれん直後に上記4項目を評価することで, 意識状態の観察を行うことなくAESD発症の一定の予測が可能である.
【目的】脳炎・脳症後てんかんは難治に経過する例が多いが, methylprednisolone pulse therapy (MP) 有効例の報告がある. 治療前髄液サイトカインとMPの有効性の関連を検討し, 有効性を予測する因子を同定する. 【方法】脳炎・脳症後てんかん患者で, MPを行った患者のうち, MP前に髄液サイトカインを測定した15例を対象とした. MPは1クール (30mg/kg/日, 3日間) /月を基本とし, MP3回施行後に有効性の評価を行い, 発作減少率が50%以上の症例を有効例とし, 無効例と臨床データおよび髄液のサイトカインを比較した. 【結果】有効例は15例中5例 (33.3%) であった. 無効例の中に発作の頻度がやや減少したものや発作が弱くなったものが8例, 行動変化, 発語の増加などの認知・行動面の改善を認めた症例が7例あった. てんかん発作や認知・行動面での悪化を認めた症例はなかった. 有効群・無効群のMP施行時年齢, 施行回数などに差はなかった. 有効群の髄液中CCL4は無効群・疾病対象より低値, 無効群の髄液中IL-9, IL-12, CCL3は有効群・疾病対象より高値であった. 【結論】脳炎・脳症後てんかん患者において, 髄液CCL4低値はMP治療有効性を, IL-9, IL-12, CCL3高値はMP治療不応性を示唆する可能性がある.
重症心身障害児の唾液分泌過多は皮膚炎や脱水症などの医学的問題に発展することがあるが, 標準的治療法は確立されていない. 唾液分泌過多は, 唾液分泌量の増加による真性と, 嚥下機能の低下による仮性の2つに分類される. 我々は重度な唾液分泌過多に発作性交感神経機能亢進 (paroxysmal sympathetic hyperactivity ; PSH) が合併した症例に対して, アトロピン硫酸塩とclonidineを投与して良好な経過を辿った症例を経験した. 症例は2歳5か月男児, 低酸素性虚血性脳症に伴う脳性麻痺であり, 仮性唾液分泌過多と診断していた. 生後10か月時に唾液分泌過多と注入不良による脱水症で心肺停止をきたした. 以降, 唾液分泌過多が増悪し, あわせて高体温, 頻脈, 筋緊張亢進などの交感神経機能亢進症状が発作的に出現した. 唾液分泌量の測定で増加を認め, 真性唾液分泌過多と診断した. 心肺停止によりPSHが発症し, PSHにより惹起された真性唾液分泌過多と考え, ロートエキス内服, スコポラミン軟膏塗布を行うも無効であった. 真性, および仮性唾液分泌過多に対しアトロピン硫酸塩の持続点滴を行い, 唾液分泌量は減少した. さらにPSHに対してclonidine投与を行ったところ, PSHの頻度の減少と唾液分泌量の減少とともに, 脱水症の頻度は減少した. 重症心身障害児の唾液分泌過多はアトロピン硫酸塩による治療が有効である可能性が示された.
脳・肺・甲状腺に病変を発現するbrain-lung-thyroid syndrome (BLTS) は, 舞踏運動様の不随意運動を特徴とする稀な疾患である. 症例は3歳男児で, 舞踏運動を伴わず, 筋緊張低下, 失調歩行および吃音を主訴に受診した. 先天性甲状腺機能低下症があり, 乳児期から喘鳴を伴う呼吸障害を反復したため, BLTSを疑いターゲットシークエンス法で解析しNKX2-1遺伝子にナンセンス変異c.664G>T (p.Glu222Ter) を認め診断した. 呼吸器疾患・甲状腺疾患を合併した症例において, 舞踏運動以外の神経症状にも着目することがBLTSの診断において重要と考えた.
結節性硬化症は全身の過誤腫を特徴とする疾患である. 頭部の腫瘍性病変は側脳室壁に好発するsubependymal giant cell astrocytoma (SEGA) の頻度が高いが, まれに膠芽腫の発症も報告されている. 症例は9歳男児. 生後5か月時の点頭てんかんの発症を契機として結節性硬化症と診断された. 頭部CTで左前頭葉に石灰化を伴う皮質下結節を認めていた. 誘因なく突然嘔吐するエピソードを2週間で数回認めたため, 頭部CTを施行したところ左前頭葉に出血を伴う腫瘍性病変を認めた. この数時間後より頻回の嘔吐, 意識障害を認めたため, 頭部CTを再検したところ腫瘍内出血が急激に増悪し, 頭蓋内圧亢進状態であった. 緊急で腫瘍摘出術が施行され, 病理検査結果から膠芽腫と診断された. SEGAが良性腫瘍であるのに対し, 膠芽腫は悪性度が高く, 急速に増大し, 一般的に予後は不良である. 結節性硬化症の頭部病変ではSEGA以外の腫瘍の発症も念頭に入れ, 有症状のときには速やかな画像評価が必要である. また知的障害や自閉スペクトラム症を高率に合併し, 神経学的症状を把握しづらい状況も考えられるため注意する必要がある.
自閉スペクトラム症 (ASD) の特性に応じた個別支援および投薬が発作消失に有用であった周期性嘔吐症の7歳男児例を経験したので報告する. 新生児期に食道閉鎖症 (Gross C) に対する根治術の既往歴あり. 母親と祖母に片頭痛の家族歴あり. 周期性嘔吐症は1歳4か月時に発症し, 以後月に1〜3回の嘔吐発作が持続した. 様々な薬物治療が試みられたが, 嘔吐発作の抑制には効果がなかった. 精査加療目的で, 7歳4か月時に当科に紹介された. その際, 視線の合いにくさ, 強迫観念, コミュニケーションの困難さなどの特性があり, ASDの診断に至った. そこで, ASD特性への配慮と薬物治療を行うことで周期性嘔吐症の改善を目指した. 学校でも特性に応じた配慮が受けられるようになり, 通学に対する不安が解消され, 登校できるようになった. 予防薬は, risperidone, amitriptin, sodium valproateの3剤の組み合わせに変更した時点で, 嘔吐発作は消失した. 現在9歳3か月となったが, ここ14か月の間に嘔吐発作の再発は認めていない. 難治性の周期性嘔吐症患者においては, 発達障害の有無の精査とそれに対する支援が重要であると考えた.
難治頻回部分発作重積型急性脳炎 (AERRPS) においては, 急性期の難治性けいれんに対するケトン食療法の有効性が過去に報告されている. しかし, 急性期には抗てんかん薬や鎮静薬の使用による消化管障害が生じやすく, 経腸ケトン食療法が困難なことがある. 症例は13歳男子. 発熱, 頭痛で発症し, 第6病日に意識障害と全身性強直性けいれんが出現し入院した. 多剤抗てんかん薬・静脈麻酔薬への治療抵抗性を示す焦点発作が群発し, AERRPSと診断した. 難治性のけいれん発作に対し, 第14病日から経腸投与と経静脈投与を併用した古典的ケトン食療法を開始した. 第20病日に経静脈投与を終了し, 経腸投与のみへ移行した. ケトン食療法開始後, 合併症の出現なくケトーシスへ到達し, 発作頻度は減少した. 本例の経験から, AERRPS急性期で経腸栄養が困難な症例において, 経静脈ケトン療法は, 脂質・肝膵逸脱酵素等の注意深いモニタリング下で実施可能であり, けいれんを早期に抑制する治療としての選択肢の一つとなりうると考えられた.
悩みを言語化しにくい子どもに, 学校自己採点法の有用性を検討した. 86名を対象に, 学校生活での 「困った気持ち」 について, 自由回答 (オープン質問) および学校生活に対する自己採点 (学校自己採点法) によって回答を求めた. オープン質問に比べ, 学校自己採点法によって 「困った気持ち」 を言語化できた子どもが有意に多く, 子ども自身が学校生活を数値化する過程によって, 悩みの言語化が促されたと考えられた.
抗AQP4抗体が陰転化するも, 再発予防治療としてのprednisolone (PSL) の内服中止後に抗体が再度陽性となり再発した視神経脊髄炎関連疾患を経験した. 副作用のためPSLによる再発予防は困難であったため, 再発急性期治療後はtacrolimusを併用し, PSLを漸減して抗体の陰性を維持している. 本疾患では, PSLの中止は慎重に行い, また減量の際は免疫抑制剤の併用も考慮する必要があると考えられた.