脳と発達
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巻頭言
座談会
総説
  • 黒神 経彦, 小倉 加恵子
    2021 年 53 巻 2 号 p. 105-110
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/21
    ジャーナル フリー

     自閉スペクトラム症 (ASD) 児の特性として, 慣れた生活環境が少しでも変わることや見通しが立たない状況は, 我々が思う以上に強い負担となり不安や恐怖心につながる. 医療機関の受診は非日常的な状況であり, ASD児は追い詰められた結果として, パニック・かんしゃくや自傷・他害に至ることがある. そのため, 年長児であっても不安や恐怖の軽減, 体動の抑制・最小化, 安全の確保を目的に各種検査 (CT, MRI, 脳波検査など) に先だって鎮静管理が行われることが多い. ASDの特性に目を向けずに, 健常発達の子ども同様の手順で鎮静を実施しようとすると, 子どもの不安や興奮が十分に収まらずに鎮静作業に難渋することが多く, 本人・家族からすると非常に大変でつらい思いをしたという否定的な感情を伴う体験になる. より適正に鎮静を進めるためには, まず 「特別な配慮が必要な子ども」 という認識を持ち, 子どもに検査手順の見通しをあらかじめ理解できるように伝えること, 普段と違う状況から生じる不安や恐怖心をできる限り軽減する配慮が非常に重要である. そのためには子どもの最大の理解者・味方である養育者の力を借りて, どういう子どもなのかそれぞれのケースにおいて前もって把握すること, 子ども・養育者とあらかじめ信頼関係を築くこと, 事前に得られた情報をもとに本人の特性に合わせたより細やかな対応・配慮を行うことが必要不可欠だと考える.

原著論文
  • 奧村 安寿子, 加賀 佳美, 稲垣 真澄, 北 洋輔
    2021 年 53 巻 2 号 p. 111-117
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/21
    ジャーナル フリー

     【目的】多言語環境にある小児の読み書き困難は, 学習機会の少なさといった環境要因が原因とされやすいが, 発達性読み書き障害や知的能力障害などに基づく場合もある. 本研究では, 日本語-英語のバイリンガル症例に両言語による基礎的な読み書き評価を適用し, 多言語環境児における発達性読み書き障害の評価・診断のあり方を検討した. 【方法】読み書きの困難を主訴として医療機関を受診した, 日本語-英語バイリンガル児4名に標準化知能検査, 英語の口頭言語能力評価, および両言語の基礎的な読み書き検査を実施し, DSM-5による限局性学習症の読字・書字表出困難の診断を行った. 【結果】全般的な知的発達水準と口頭言語能力は, 全例で正常範囲内にあった. 日本語の読み書き検査では, 症例1, 3, 4がひらがな読字から, 症例2が漢字で困難を示した. 学校言語が英語の2名では, アルファベットの呼称 (症例3) と英語の文章音読 (症例3, 4) にも重篤な困難が認められた. これらより, 症例1, 3, 4は読字および書字表出, 症例2は書字表出に特異的な困難がある発達性読み書き障害と診断された. 【結論】文字や単語の基礎的な読み書き検査は, 多言語環境児の診断的評価に有用であった. 複数言語での評価は実施面の課題が多いが, 中核症状である正確性・流暢性低下, および言語歴や学習時間等との乖離の把握により, 環境要因では説明しがたい生得的な限局性学習症を特定できる.

  • 内田 智子, 本林 光雄, 佐藤 孝俊, 石垣 景子, 藤井 克則, 稲葉 雄二
    2021 年 53 巻 2 号 p. 118-123
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/21
    ジャーナル 認証あり

     【目的】重症筋無力症 (MG) や慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー (CIDP) をはじめとする免疫性神経筋疾患の治療は長期にわたるため, 小児では成長や発達に配慮したきめ細かな日常生活上の管理が必要である. しかし, その具体策についてはエビデンスが不明確であり, 担当医は疑問を抱えながら診療している. 診療の標準化を図る目的で, 多施設の状況について調査し検討した. 【方法】2017年2月, 小児免疫性神経筋疾患研究会会員 (研究時の会員82名67施設) に対し, アンケートを行い解析した. 【結果】15施設から回答を得た. 各施設で平均5.5 (中央値4) 名のMG患者と0.3名のCIDP患者を診療中であった. 易感染性や消化性潰瘍, 骨粗鬆症など副腎皮質ステロイド薬の副作用への対策や, 予防接種基準, 眼科診察などについて, 施設間での相違が明らかとなった. 特に, MGにおいて禁忌であるベンゾジアゼピン系薬剤の, けいれんや鎮静の際の使用については様々な対応が見られた. 【結論】小児の免疫性神経筋疾患患者における日常生活管理の基準は施設ごとに異なっており, 経験する患者数の少なさもその一因であると考えられた. この結果と各種ガイドラインおよび文献を参考に, 小児の日常生活指導案をまとめた. これらをもとに多施設での経験を集積し, より有用な基準の策定が望まれる.

  • 松浦 隆樹, 浜野 晋一郎, 大場 温子, 野々山 葉月, 代田 惇朗, 久保田 淳, 樋渡 えりか, 平田 佑子, 小一原 玲子, 菊池 ...
    2021 年 53 巻 2 号 p. 124-128
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/21
    ジャーナル 認証あり

     【目的】幼児期発症の重症筋無力症 (myasthenia gravis ; MG) に対するtacrolimus療法の有効性を評価した. 【方法】2012年1月から2020年5月に当センターで幼児期発症のMGに対してtacrolimus療法を行った5例の臨床症状を後方視的に検討した. またtacrolimus開始時, 開始後1か月, 3か月, 6か月, 9か月, 12か月, 最終評価時のMG-ADLスコア, MG compositeスコア, 抗AchR抗体価を継時的に評価した. 【結果】5名 (男1名) の病型は眼筋型2例, 全身型3例. tacrolimus開始年齢は3.8 (2.3〜9.0) 歳, 初期量は0.05 (0.04〜0.05) mg/kg/日であった. 治療開始から治療反応が得られるまでの期間は30 (9〜67) 日であった. 全例で開始後3か月の時点のADLスコアとMG compositeスコアは低下した. 最終評価でpharmacologic remissionとminimal manifestationsが得られた4例はtacrolimus開始がMG発症後10か月以内であり, improvedに留まった1例は発症後55か月であった. 【結論】幼児期発症のMGでは, tacrolimus療法の効果判定は3か月で行えること, 早期のtacrolimus導入が予後に影響する可能性が考えられた.

症例報告
  • 田中 亮介, 黒田 真実, 竹口 諒, 福村 忍, 要 匡, 高橋 悟
    2021 年 53 巻 2 号 p. 129-132
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/21
    ジャーナル 認証あり

    IQSEC2はXp11.22に位置し, シナプス後肥厚部に存在して興奮性シナプス伝達を調節するグアニンヌクレオチド交換因子 (GEF) をコードしている. この遺伝子変異は, 2010年にX連鎖性知的障害を有する家系で初めて同定されたが, その後に女性例や乳児期発症てんかんを合併する例も報告されており, 多彩で広い臨床像に関連していることがわかってきた. 我々は, IQSEC2エクソン1のフレームシフト変異NM_001111125.2 : c.693del [p. (Thr232Profs25)] によって, 最長型IQSEC2アイソフォームの全ての機能性ドメインを失っていると考えられた男児例を経験した. 患者は, 乳児期から筋緊張低下と斜視に気づかれ, 後に精神運動発達遅滞と自閉性障害が顕在化した. 脳MRI検査で, 軽度の脳萎縮と脳梁の菲薄化および側脳室周囲白質のT2高信号を指摘された. 2歳時よりミオクロニー発作が出現し, 強直間代発作, 非定型欠神発作も認めた. 発作間欠期脳波では全般性多棘徐波を認め, てんかん発作は薬剤抵抗性を示した. 4歳時に全脳梁離断術を受け, 転倒発作は消失し表情も豊かになった. しかし, 運動機能の改善はなく, 有意語の表出がない状態に変化はなかった. 臨床経過は, 発達性てんかん性脳症に合致しており, 多彩な発作型を有する難治性てんかん, 自閉性障害, 斜視, 特徴的な脳MRI所見を伴っていた. これらの所見は, IQSEC2変異に関連した最も重症な表現型と考えることができる.

  • 澤田 大輔, 有井 潤子, 塩浜 直, 矢賀 勇志, 青藤 潤, 藤井 克則
    2021 年 53 巻 2 号 p. 133-136
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/21
    ジャーナル 認証あり

     上斜筋麻痺では斜視, 複視, 頭位異常などの症状が出現する. 診断にはParks-Bielschowsky three-step testが使われるが, 3 stepsを満たさない場合や所見の評価が難しい場合もある. 斜視, 頭位異常が軽微の場合には所見として認識されず, 複視の原因となる他の全身性疾患の鑑別が必要となることもあり, 上斜筋麻痺の診断に苦慮する場合がある. 今回, 複視で発症した上斜筋麻痺に対して, 単眼視による頭部傾斜変化が他覚的診断に有用であったため報告する. 症例は13歳女子. 2年前より複視を自覚, 増悪し受診した. 右眼はわずかに外上方の斜位で, 眼球運動9方向に制限はなかったが全方向に複視を認めた. 眼瞼下垂はなかったが, 夕方に増悪する日内変動があった. 血液検査, 脳MRI検査, 神経伝導検査, テンシロン試験に異常はなく, 重症筋無力症, 脳腫瘍, Fisher症候群などは否定された. 左右の単眼視で頭部傾斜を比較すると, 健側である左単眼視で頭位は正中であるのに対し, 右単眼視で健側に頚部を傾ける代償性頭位の所見が顕著となり, 上斜筋麻痺と診断した. 眼科手術により複視は著明に改善した. 斜視, 頭位異常が軽微で上斜筋麻痺の診断に苦慮する場合には, 単眼視による頭部傾斜変化がBielschowsky徴候を強調し, 他覚的な診断に有用となりうると考えられた.

  • 萩田 美和, 宮田 世羽, 中川 栄二, 武田 良淳, 吉橋 博史, 本田 雅敬, 武内 俊樹, 小崎 健次郎, 岡 明, 楊 國昌
    2021 年 53 巻 2 号 p. 137-141
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/21
    ジャーナル フリー

     ピリドキサールリン酸 (pyridoxal phosphate ; PLP) が一時的に有効であった早期乳児てんかん性脳症7型 (EIEE7 : MIM#613720) の症例を経験した. 日齢1に眼球偏位を伴う全身性の強直発作が群発し, 発作時脳波で異常を認めた. Phenobarbital (PB) で発作は減少したが, 日齢50に強直間代発作が群発した. PLPを開始後3日間で発作が消失し, 脳波所見も著明に改善した. 臨床的にピリドキシン依存性てんかん (PDE) と診断したが, 10か月時に発作が再燃した. 4歳時に測定した血漿・髄液中のピペコリン酸とαアミノアジピン酸セミアルデヒドの上昇はなく, ALDH7A1遺伝子の変異も認めず, PDEは否定的と考えPLPを中止した. 5歳時に行った全エクソーム解析でKCNQ2遺伝子にヘテロ接合性フレームシフト変異 (NM_172107.2 : c.2032dup [p.Glu678Glyfs187]) をde novoで認めEIEE7と診断した. 本変異は過去に報告のない新規変異である. 近年PLPが著効したEIEE7の報告が多くみられ, PDEの鑑別診断としてEIEE7が強調される. EIEE7の神経発達予後を改善するにはより早期の発作消失が重要であり, PLPは電位依存性Naチャネル抑制薬に続く第二選択薬あるいは併用薬として早期に投与を検討する価値があると考える.

  • 木水 友一, 鈴木 保宏, 五嶋 嶺, 水谷 聡志, 中島 健, 池田 妙, 最上 友紀子, 柳原 恵子, 沖永 剛志, 西尾 久英
    2021 年 53 巻 2 号 p. 142-145
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/21
    ジャーナル 認証あり

     近年, 脊髄性筋萎縮症 (SMA) の新しい治療薬としてsurvival motor neuron (SMN) 2をターゲットとするアンチセンスヌクレオチドであるnusinersenが市販された. 乳児型SMAでは早期治療が推奨されているが, 胎児期発症の最重症型であるSMA0型の治療報告は少ない. 今回, 我々はnusinersen治療を行ったSMA0型の男児例 (2歳3か月) を経験したので報告する. 症例は満期正常産で, 生直後から重度の筋力低下, 筋緊張低下, 呼吸障害, 四肢の関節拘縮を呈し呼吸管理を要した. 生後9週にSMN1遺伝子の欠失 (SMN2遺伝子は2コピー) が判明し, 胎児期発症の症状を含めSMA0型と診断した. 生後10週からnusinersen髄腔内投与を開始し, 初回投与の1週後に左前腕の運動機能の改善を認めた. 生後4か月時に咽頭軟化症のため気管切開術と人工呼吸管理が必要となった. 術後, 呼吸状態の安定と運動機能の改善を認めた. 生後9か月の退院時には人工呼吸管理, 経管栄養, 頻回の気管内吸引が必要であった. 退院後もnusinersen治療による副作用は認めていない. 現在, 発語はないが短時間の坐位保持と1時間の呼吸器離脱が可能である. CHOP INTENDは治療開始前の3点から47点まで改善している. SMA0型でも早期診断とnusinersen治療により運動機能の改善が期待できることが示唆されるが, 長期的効果の検証には今後の症例の蓄積が必要である.

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