Perampanelは非競合的AMPA型グルタミン酸拮抗薬という新規な薬理作用を有し, 従来にない作用機序から他剤に対して治療抵抗性を示す難治てんかん患児へも有効性を示す可能性が期待される. また, てんかん性突発波への改善効果を有し, 一部の脳波異常への改善をもたらすことで, 行動改善へと繋げられる可能性に加え, 合理的多剤併用療法としての有用性, さらにてんかん合併自閉症児に対する発作・脳波・行動改善にもその有用性が推察され, 今後の知見の集積が望まれる. しかし, 本邦での使用経験はまだ乏しく, 精神症状等の有害事象の報告がなされてきていることからも, 精神症状の出現には依然注意が必要と思われる.
Lacosamideは新しい作用機序をもつナトリウムチャネル遮断薬である. 小児てんかんへの有効性は, 難治例を含んでもレスポンダー率 (50%以上の発作頻度減少症例率) は約50%, 発作消失率は15〜20%とされる. 単剤使用も可能である. 他剤との相互作用の少なさ, 皮疹を含め重篤な副作用の少なさ, それによる長期の安全性も特徴である. 当センター116例の焦点性発作における検討も同様の結果であったが, 自ら症状を訴えられない低年齢児の副作用には一定の注意が必要と考える. 認知行動面に関しても影響は少ないとされる一方, 妊娠への影響は示唆されている. Lacosamideは, 特徴を知ることで発達過程の小児期において有用な選択薬となるだろう.
わが国ではrufinamideは4歳以上のLennox-Gastaut症候群のみ, stiripentolはDravet症候群のみに保険適用がある. それぞれの適応, 投与量と投与方法, 服用時間, 作用機序, 薬物動態 (参照域の血中濃度, 半減期, ピーク時間, 相互作用), 無作為対照試験の結果, 長期使用の効果のまとめ (rufinamideは6件, stiripentolは7件), 副作用, 使用上の注意について述べた. rufinamideでは増量速度, 量が多い, 相互作用による効果の変動に注意を要し, stiripentolでは剤形変更によるピーク濃度の低下, 相互作用, 作用機序であるGABA系賦活作用が患者の年齢によってはGABA系が抑制系にスイッチしていないため発作が増えることがあることに注意を要する.
小児科の中で神経代謝疾患を専門としてきた立場から, 希少難病の診断, 治療を1番の目的として診療を行う中で, 出生前診断との出会い, 家族との出会い, そして現在大阪大学の遺伝子診療部での出生前診断に対する診療について紹介したい.
Duchenne型筋ジストロフィー, 福山型先天性筋ジストロフィーなど神経筋疾患の出生前診断では, 患者の遺伝子変異の正確な情報, 家系図の丁寧な聴取が重要であり, 可能な限り時間的余裕をもって十分な遺伝カウンセリングを実施する. 脊髄性筋萎縮症, Duchenne型筋ジストロフィーでは, 近年新規治療薬が市販されており, 今後重篤な臨床経過が軽症化することが期待される一方, 出生前診断の実施の可否に関わる課題が出てくる可能性がある. 神経筋疾患の出生前診断にも今後は非侵襲的検査が応用される可能性も考えられ, 疾患としての適用, 検査の実施時期, 診断の正確性を含む出生前診断の課題について, 小児神経科医として適切に対応していく必要がある.
出生前診断において罹患・非罹患の診断は出来ても重症度を予測する事は容易でない. 予測を困難にしている要因としては, X染色体不活性化の偏り, ヘテロ接合性の消失, ミトコンドリア母系遺伝のヘテロプラスミー, ハプロ不全を原因とする疾患の表現度の差異があげられる. 遺伝性疾患の症状発現を理解するにはゲノムヒエラルキーの概念が有用である. また遺伝子検査に際してはPCR法に伴う技術的エラーも無視できない.
出生前診断とは, 妊娠中に胎児が何らかの疾患に罹患していると思われる場合に, その正確な病態を知る目的で検査 (出生前検査) を行い, これに基づいた胎児疾患の診断を指す. 出生前検査の主な対象疾患は, 胎児の先天性疾患の一部 (形態疾患や染色体疾患, 具体的には21トリソミー, 18トリソミー, 13トリソミーなど) である. 染色体数的異常を対象とした出生前検査を行う際には確定的検査 (絨毛検査, 羊水検査, 臍帯血検査) と非確定的検査 (超音波マーカー検査, 母体血清マーカー検査, コンバインド検査, 母体血を用いた新型出生前診断 (NIPT) に分類される. 確定的検査である絨毛検査, 羊水検査は染色体疾患の確実な診断ができるが, 流産・胎児死亡の危険性が絨毛検査で1%, 羊水検査で0.3〜0.5%, 臍帯血検査で1.4%とされる侵襲的検査でもある. そのため, その侵襲を最小限にする目的で開発されてきたのが非侵襲的検査であり, 胎児染色体疾患について心配し, 確定的検査を受けるか否かに悩む女性がその判断材料として受ける検査という位置付けで, 出生前検査の一つの選択肢として提示される.
産科診療では, 超音波検査が出生前検査の一翼を担っており, 形態疾患を中心とする様々な疾患を出生前に診断して出産に備えることが児の予後改善に繋がっている. 一方で, 出生前に治療法がなく予後不良な疾患や染色体疾患などが疑われる所見が判明することがある. このような場合には, クライエントである妊婦や家族の不安や悩みに十分配慮した臨床心理的, 社会的支援を行うことが重要である.
このように出生前検査においてはクライエントの自律的な選択を尊重するカウンセリングの実施, クライエントのプライバシー保護と人権の尊重, 不当な差別が起こらないように常に配慮することがカウンセリング担当者 (臨床遺伝専門医, 認定遺伝カウンセラー®など) に求められており, 当該疾患の診療経験が豊富な医師と協働しながらチーム医療を実践することが重要である. 本講演を通じて, 産科領域で行われる出生前検査の現状, 出生前検査で検出できる疾患, 出生前検査前のカウンセリングの重要性について概説する.
小児科医でありDown症児の父親でもある著者が新型出生前診断 (NIPT) について, 自分自身の経験を元に著す. 検査は出生前の心構えを持つというだけではなく, 障害の拒否や排除につながる可能性を持っており, 慎重に判断されるべき医療行為である. NIPTを広く行うためには国民的議論が不可欠と言われていたが, 十分に議論されないままに実施拡大に向かう危惧を持っている. 社会的な啓蒙をすることで, 一定の割合で生じうる障害の 「排除」 ではなく 「受容」 が出来るような社会になることが望ましいと考えている.
出生前診断によって胎児に先天性異常が指摘された場合, 妊娠の継続をめぐり, 「胎児の生命」 と 「女性の出産に関する自己決定」 という2つの価値が両立せずに衝突する可能性が示唆される.
本稿では先ず, 「胎児の生命の保護」 を法益として定めている刑法と, 人工妊娠中絶の根拠となる母体保護法および旧優生保護法について確認を行う.
また, 出生前診断について医療側に過失があり, 結果的に障害を有する児が生まれたケースにおいて, 裁判所がどのように患者側の損害や因果関係の認定を行ったのかという視角から, 出生前診断が 「胎児の生命」 や 「出産に関する自己決定」 に及ぼす影響や意味について検討を行う.
出生前診断を取り巻く環境が激変しようとしている. 新型出生前診断 (NIPT) が遺伝カウンセリングを一切提供しない無認可施設で広く行われるようになりつつあり, モラルハザードを来している. 妊婦への同調圧力や, 染色体異常を持って生まれてくる子どもたちへの差別や偏見を助長しかねない. 着床前診断にも大きな動きがあり, 単一遺伝子疾患へのpreimplantation genetic testing for monogenic (PGT-M) の適応拡大や, preimplantation genetic testing for aneuploidy (PGT-A) の特別臨床研究の実施など, 小児神経科医が診療で関わる疾患と無関係でないため, 関心を持ち続ける必要がある.