小児難治てんかんでは,発作抑制や発達への影響を考慮し,適切な時期に外科的介入を検討する必要がある.しかし,小児科医からてんかん手術を行う脳神経外科医への紹介は必ずしもスムーズではない.本稿では,小児科医が抱える課題について脳神経外科医の見解を示し,両者の臨床連携のあり方について考察する.臨床連携が難しい理由として,いくつかの課題が浮上している.第一に,てんかん外科は多くの小児科医にとって未知の世界であること.第二に,適切な紹介時期の判断が難しいこと.最後に,てんかん手術を行っている施設の情報が少ないため,どこに患者を紹介すればよいか分からないこと.これらの課題を解決することが連携への鍵となる.外科治療の対象かどうかの判断は脳神経外科医が行うが,外科治療を行うかどうかの最終決定は小児科医と相談して行うことが重要であり,真の臨床連携には不可欠である.てんかん外科は過去数十年で大きな進歩を遂げており,てんかん焦点の診断精度の向上,手術結果に関するデータの蓄積,神経刺激療法の導入などが挙げられる.
これらの情報をきちんと共有していくことも重要である.
脳神経外科医は小児科医に情報を提供し,小児科医はてんかん外科に対する理解を深める,共通認識の確立が重要である.最も効率的な方法は,脳神経外科に紹介された患者の術後経過を小児科医が観察することであり,これは次の患者の紹介を決定する大きな要因となる.
吃音症は流暢に話せないことがあることを指し,2歳から4歳の間に発症する.かつては吃音の原因は環境や母親の接し方とされてきたが,最新のエビデンスにより遺伝子の影響が大きいことが分かってきた.吃音のメカニズムはParkinson病と類似し,外的なタイミングに合わせるとスムーズに話すことができる.2021年に「幼児吃音臨床ガイドライン第1版」が作成され,幼児の行動療法であるリッカムプログラムがエビデンスのある治療として紹介されている.持続する吃音に関して,2次障害の社交不安症の予防が必要である.吃音のある人の支援として合理的配慮が重要であり,面接などで配慮を受けることが可能となり支援法の選択肢が増えている.
エピジェネティクスに関連する疾患の多くは発達遅滞や知的障害などの神経発達症を示す.そのため,小児神経領域における診療では,エピジェネティクスの関与を考慮することが必要である.エピシグナチャー技術の開発により,エピジェネティクス関連疾患を末梢血で診断することが可能になりつつある.さらに,エピジェネティクス治療の研究が進んでおり,臨床への応用が期待されている.エピジェネティクスの理解は小児神経疾患の診療において避けて通ることはできず,重要性が増している.
【目的】てんかん診療において発作型診断は重要であり,診断のため長時間ビデオ脳波モニタリング(VEEG)を実施するが,捕捉された発作型と患者・家族の表現との関連性についての報告はこれまでにない.患者・介護者の表現と発作型との関連を解析し,表現から発作型の特定が可能かに関し検討した.【方法】当院で2015年4月から2022年3月までの間にVEEGを施行した症例のうち,患者・介護者の表現と一致する発作症状が捕捉され発作型の診断が可能であった症例について検討した.患者・介護者の表現は,診療録の記載内容とVEEG検査中の発作記録表に記載された内容を収集した.各発作症状の表現と発作型との関連を分析するため,テキストマイニングソフトKH Coder 3を用い関連を可視化し,ロジスティック回帰分析を用いて表現と発作型の関係性を解析した.【結果】対象となった症例は151例であった.ロジスティック回帰分析ではてんかん性スパズム,強直発作,焦点意識減損発作,動作停止発作において発作型と強い関連を持つ表現が認められた.【結論】発作症状に関する家族の表現は様々であるが,中には発作型との関連性が強いものもあり,これらの表現を確認することが発作型の診断に有用となる可能性がある.
COL4A1変異は,IV型コラーゲンの異常により血管などの基底膜を障害し,多臓器に多彩な症状を呈する.てんかんを合併した場合は難治なことが多い.症例は5歳4か月の男児.先天性の眼病変を認め,Peters異常と診断された.発達遅滞を伴い,頭部画像所見に異常を認めた.10か月時にてんかん性スパズムを発症し,West症候群と診断された.ACTH療法を含む初期治療で発作は一時消失したが再発した.1歳9か月時にvigabatrin(VGB)を眼病変の悪化を考慮し慎重に導入し,VGBは適量(100mg/kg/day)で発作は抑制された.眼科的検査を複数回実施し,網膜電図に異常は認めなかった.3歳6か月にVGBを中止後も発作は抑制されている.COL4A1にde novoの既知の病的変異NM_001845.6:c.3620G>A,p.(G1207E)を認めた.COL4A1関連疾患の難治West症候群に対しては先天性眼球異常を伴う例でもVGBを試みる意義があると考えられた.
Aicardi-Goutières症候群(AGS)は頭蓋内石灰化や髄液リンパ球増加を特徴とする脳症である.病態はI型interferon(IFN)の過剰産生によるものと考えられており,近年ではインターフェロノパチーという自己炎症性疾患に分類され,一部のIFN応答遺伝子の発現量を測定するIFN signatureが診断や病勢のバイオマーカーとして注目されている.AGSは現在までに核酸代謝や感知などに関わる9つの責任遺伝子が同定され,乳児期早期に発症する古典型に対して,遅発型や軽症例を含めた疾患スペクトラムが拡大している.我々は,生後11か月まで正常発達であったが,発熱を契機に発症し,数年以上の経過で痙性四肢麻痺に至り,エクソーム解析でADARにdominant negative効果を示すヘテロ接合性バリアント(NM_001111.5:c.3019G>A:p.G1007R)を認めた遅発型AGSの女児例を経験した.発症時の頭部CTは正常であったが,淡蒼球などに石灰化が徐々に顕在化し,MRIは石灰化を反映した信号変化のみであった.運動機能に比して認知機能は退行がなく,手指背側に脱色素斑と色素沈着が混在し,ADARのヘテロ接合性バリアントで発症する遺伝性対側性色素異常症を合併していた.ADARによるAGSは遅発型が比較的多く,両側線条体壊死を示す例や認知機能が保たれる痙性対麻痺の例など様々である.I型IFNのシグナル経路を標的としたJanus kinase阻害薬の有効例も報告があり,AGSが多様な表現型を示すことを念頭に置く必要がある.
Gaucher病はライソゾーム加水分解酵素の一つであるグルコセレブロシダーゼ(GBA)の活性低下により血小板減少などの血液学的異常や肝脾腫,骨症状などを呈する先天代謝異常症である.幼児期から骨症状があり,進行性ミオクローヌスてんかん(PME)の発症を契機にGaucher病3型と診断した1例を報告する.症例は16歳男子.幼児期に両股関節痛を繰り返しPerthes病と診断され,10歳時に全身強直間代発作が出現し,てんかんとしてvalproateが開始された.12歳頃からミオクロニー発作,学業成績低下がみられ,perampanelを追加されて全身強直間代発作は消失したがミオクロニー発作が難治に経過した.14歳時に当院初診.初診時には眼球運動障害や小脳失調症状はなく,右上肢のミオクローヌスが日単位でみられていた.15歳時に小脳失調症状が出現したためPMEと診断した.白血球中のGBA活性が低値であり,GBA遺伝子解析を行ったところ,父由来のNM_000157.4(GBA1):c.680A>G(p.N227S)と母由来のNM_000157.4(GBA1):c.94C>T(p.Q32*)を複合ヘテロ接合性に認め,Gaucher病3型と診断した.血小板減少などの血液学的所見に乏しい症例であっても,繰り返す骨症状後にてんかん発作や学業成績の低下などがみられた場合にはGaucher病も考え精査を行う必要があると考えられた.
Hyperventilation-induced high-amplitude rhythmic slowing with altered awareness(HIHARSAA)は,過呼吸負荷時に脳波上で高振幅かつ律動的な徐波化を生じ,意識変容を呈する現象であり,年齢依存性の非てんかん性生理現象と考えられている.今回我々は,脳波ビデオ同時記録検査でHIHARSAAと診断した4歳女児例を経験したので報告する.症例は,啼泣後の過呼吸時に一過性の意識減損を認め,精査目的に当院を受診した.来院時,意識清明で神経学的異常所見を認めず,頭部MRI・MRAで脳動脈主幹部の狭窄などの有意な異常所見を認めなかった.脳波検査では,発作間欠期に異常を認めなかったが,過呼吸負荷時に律動的な3~3.5Hz全般性高振幅徐波が突発的に出現し,脳波異常が出現する間,意識が朦朧となり,口をもぐもぐさせ,手を動かし,そわそわと落ち着かない様子を認めた.発作症状は定型欠神発作との鑑別が困難であったが,発作時脳波が棘波を伴わない律動性高振幅徐波であったことからHIHARSAAと診断し,無投薬で経過観察とした.HIHARSAAは稀な現象であるが,定型欠神発作と類似しており,両者の鑑別には脳波ビデオ同時記録が有用と考えられる.
周期性嘔吐症に対しrizatriptan口腔内崩壊錠が有効であった症例を経験した.本症例においては,rizatriptanはsumatriptanに比し有効性・忍容性に優れていた.周期性嘔吐症は片頭痛との関連が指摘されているが,詳細な病態は不明である.発作期には対症療法が主体であり,確立した治療法はないがsumatriptan点鼻/皮下注が有効とする報告が散見される.周期性嘔吐症の病態およびrizatriptanが治療選択肢となりうる可能性について考察する.
可逆性脳梁膨大部病変を有する軽症脳炎・脳症(clinically mild encephalitis/encephalopathy with a reversible splenial lesion;MERS)は,わが国の小児急性脳症のなかでも頻度が高く,異常言動,意識障害,けいれんで発症し,多くは神経学的後遺症を残さず回復する急性脳症である.今回,尿閉を契機にMERSの診断に至り,自然軽快した2歳男児例を経験した.MERSと急性尿閉の合併は稀であり,生理学的検査結果より病態を考察した.
モリブデン補因子欠損症(MoCoD)は,モリブデン補酵素依存性酵素の失活による脳内への神経毒性基質の蓄積で発症し,症状や神経画像所見は低酸素性虚血性脳症に類似する.周産期に低酸素症の既往がないこと,症状の安定に時間を要すること,持続した低尿酸血症や尿中亜硫酸陽性所見,頭部MRIでの比較的温存された視床,小脳萎縮などMoCoDに特異的な所見の認識は早期診断と治療につながる可能性がある.MoCoDの兄弟例を通して特徴的な所見を述べる.
WDR81遺伝子の新規複合ヘテロ接合性バリアント(父親由来のNM_001163809.2:c.3929T>A[p.Val1310Asp],母親由来のNM_001163809.2:c.4861T>C[p.Trp1621Arg])を認めた小滑脳症の1例を報告する.WDR81バリアントによる小滑脳症は2017年に初めて報告されたが,本邦での報告はなく発症頻度も不明である.小頭症以外の身体発育は正常で合併奇形を伴わないが,著明な脳萎縮を認め発達が不良な症例では,本疾患を鑑別する必要がある.また本疾患は常染色体潜性遺伝性疾患であり,次子での再罹患の可能性もあることから,遺伝カウンセリングを通じた適切かつ迅速な遺伝学的検査が求められる.