脳と発達
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57 巻, 4 号
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巻頭言
特集・第66 回日本小児神経学会学術集会
<シンポジウム7:神経生理から読み解く小児神経疾患>
  • 石山 昭彦, 福村 忍
    2025 年57 巻4 号 p. 253
    発行日: 2025/07/01
    公開日: 2025/08/20
    ジャーナル フリー
  • 福村 忍
    2025 年57 巻4 号 p. 254-257
    発行日: 2025/07/01
    公開日: 2025/08/20
    ジャーナル フリー

     中枢神経疾患や遺伝性疾患の診断・評価には,画像検査や遺伝学的検査が中心的な役割を果たすが,臨床神経生理検査も重要である.本稿では,聴性脳幹反応(ABR),体性感覚誘発電位(SEP),視覚誘発電位(VEP),末梢神経伝導検査,瞬目反射といった神経生理検査の活用事例を紹介する.ABRは聴覚伝導路や脳幹機能の評価に用いられ,Pelizaeus-Merzbacher病ではII~III波以降が消失する特徴がある.Leigh脳症では,脳幹機能の経時的変化をABRで検出することができる.SEPでは,体性感覚伝導路や大脳皮質過剰興奮性の評価が可能である.進行性ミオクローヌスてんかんのような大脳皮質過剰興奮を示す疾患では,giant SEPが確認される.VEPは視覚伝導路の評価に用いられる.視神経脊髄炎では波形の分離が悪化することがあり,病勢や治療効果,後遺症の客観的な評価に利用できる.末梢神経伝導検査は,末梢神経障害を伴う中枢性疾患の検出に役立ち,Krabbe病や異染性白質ジストロフィー,Cockayne症候群など数十種類の疾患で異常が確認される.検査時の皮膚温には注意が必要で,温度低下による伝導速度の遅延を避けるための対策が求められる.瞬目反射は,三叉神経や顔面神経の経路評価に用いられ,新生児期からの脳幹機能の評価指標としても有用である.これらの神経生理検査は,疾患の早期発見や進行状況の把握において重要な役割を果たす.

  • 柏井 洋文
    2025 年57 巻4 号 p. 258-264
    発行日: 2025/07/01
    公開日: 2025/08/20
    ジャーナル フリー

     不随意運動を正しく診断するには,まず問題となっている動きを肉眼でしっかり観察し,パターンを同定し分類することが重要である.しかし肉眼やビデオ記録からの不随意運動の診断は,経験に基づく一方で,主観が排除できないことになる.そこで不随意運動の性状を客観的に定量化するため,また不随意運動の病態生理学的特徴を明らかにする目的で,神経生理学的検査が用いられる.

     まず不随意運動を分類するに際し,客観的評価法として表面筋電図が最も有用である.表面筋電図は,筋全体の活動を記録でき,肉眼的観察だけでは把握が困難な広範囲にわたる多数筋を同時に記録することが可能である.また不随意運動の中でもミオクローヌスに関しては,体性感覚誘発電位,C反射,そして筋放電をトリガーとして先行する脳波上の棘波を調べるjerk-locked back averaging法などが皮質性ミオクローヌスの評価に有用である.他に運動関連脳電位(movement-related cortical potentials;MRCP)は,随意性に関連する脳活動を記録することで,機能性神経障害との鑑別に有用であり,また経頭蓋磁気刺激(transcranial magnetic stimulation:TMS)を用いて皮質の興奮性を解析したりすることも不随意運動の病態生理を考察するうえで参考となる.

  • 軍司 敦子
    2025 年57 巻4 号 p. 265-268
    発行日: 2025/07/01
    公開日: 2025/08/20
    ジャーナル フリー

     注視は標的が提示された視野や認知,注意の影響を受けることから,小児において興味や意思,主張の現れとなることが多い.とりわけ,視覚探索の非効率性や注意の障害を示す神経発達症は,標的によっては注視や追視,固視の脆弱性を示すため,それらの把握は社会生活の場における,支援ニーズを検討するのに重要な手がかりとなる.並行して,視線解析や脳波計測によっても社会性認知の特徴や文章の読みの困難さが可視化されるようになり,注視の観察が治療的介入の有効性評価や困難さのスクリーニングとして応用も期待されている.今後,注視の観察が客観的な定量評価の役割を担うためには,さらなる知見の蓄積が求められている.

  • 石山 昭彦
    2025 年57 巻4 号 p. 269-275
    発行日: 2025/07/01
    公開日: 2025/08/20
    ジャーナル フリー

     小児神経疾患の診療では,筋力低下などの運動症状または感覚障害で受診されることがある.そのような神経症候を認める児に対して神経診察を行い診断を行っていくが,電気生理学的検査は,筋力低下や感覚鈍麻などを直接的に同定でき,神経診察の延長上として神経学的機能を評価できる.ここでは主に片側上肢の神経症候を呈する疾患を例に,神経生理学的検査の所見の特徴について述べる.平山病は一側上肢の筋萎縮・筋力低下を呈する疾患である.神経伝導検査では,C8領域(とくに尺側神経支配)の障害が目立つことを反映して,小指外転筋の複合筋活動電位(compound muscle action potential;CMAP)振幅が正中神経支配の短母指外転筋のCMAP振幅よりも低下する.針筋電図ではC6からTh1髄節支配領域の筋に活動期における脱神経所見を反映した安静時自発電位を確認する.真の胸郭出口症候群は第7頚椎の長大横突起と第一肋骨をつなぐ線維性索状物により腕神経叢が圧迫され,Th1,C8前肢あるいはそれらがあわさった下神経幹障害である.CMAP振幅では小指外転筋に対して短母指外転筋が優位に低下し,感覚神経活動電位(sensory nerve action potential;SNAP)振幅は内側前腕皮神経が優位に低下する.肘部管症候群の診断では神経伝導検査で,肘部管を挟んで尺骨神経のCMAPとSNAP波形をみることで肘部管での伝導ブロックを,ギヨン管症候群では手関節部での伝導ブロックを評価する.神経伝導検査,針筋電図の電気生理学的な所見の特徴を理解するため,各疾患での基礎的な知識について概説し理解を深めていきたい.

<シンポジウム18:重症心身障害児のアドバンス・ケア・プランニングと意思決定支援について>
  • 根津 敦夫
    2025 年57 巻4 号 p. 276
    発行日: 2025/07/01
    公開日: 2025/08/20
    ジャーナル フリー
  • 余谷 暢之
    2025 年57 巻4 号 p. 277-279
    発行日: 2025/07/01
    公開日: 2025/08/20
    ジャーナル フリー
  • 石川 悠加
    2025 年57 巻4 号 p. 280-284
    発行日: 2025/07/01
    公開日: 2025/08/20
    ジャーナル フリー

     重症心身障害児の呼吸不全の問題とマネジメントは,まだ明らかになっていないことが多いため,最近の脳性麻痺や生命予後不良な神経筋疾患の報告を参考にする必要がある.そこでは,気管切開人工呼吸と非侵襲的換気療法(noninvasive positive pressure ventilation;NIV)の適応を選択するために,機械による咳介助(mechanical insufflation-exsufflation;MIE)などの気道クリアランス技術の進歩を取り入れることが示唆されている.それに基づき,安定した時期に家族に呼吸の特徴とリスク因子を伝え,マネジメントを話し合うことがアドバンス・ケア・プランニング(advance care planning;ACP)となる.呼吸不全のリスクを認める例では早期に取り組む.ただし,終末期の話し合いについては,最初は抵抗がある例が少なからず存在することを考慮する.また,ACPの基盤となる熟練した呼吸ケアの環境整備が,本人と家族と周囲の心身の負担を軽減し,生命とQOLを維持するために重要である.このように呼吸ケア体制を充実させながら,今後の重症心身障害児の慢性呼吸不全のACPが実施されることが期待される.

  • 根津 敦夫
    2025 年57 巻4 号 p. 285-289
    発行日: 2025/07/01
    公開日: 2025/08/20
    ジャーナル フリー

     多くの重症心身障害児(以下,重症児)は,全身性の重症痙縮・ジストニアによって安楽な姿勢保持が困難であるだけでなく,経年的に骨格変形・関節拘縮が進行し,徐々にQOLが低下する可能性がある.ボツリヌス治療は,このような重症痙縮・ジストニアに対して幼少期から比較的簡便かつ安全に行え,年2~3回の頻度で施注すれば通年的に筋緊張を軽減させてQOLを維持・改善する.同様に,baclofen髄腔内持続投与(intrathecal baclofen therapy;ITB)療法も重症痙縮の軽減に効果的な治療である.ITBポンプの埋め込み手術が可能な体格に成長したら,痙縮治療の選択肢として積極的に検討すべきである.一方,これらの痙縮治療や適切な体幹装具療法が行われていても,脊柱変形が高度に進行する重症児がしばしば認められる.高度な脊柱変形は,姿勢保持困難のみならず,呼吸障害や消化器系機能障害の要因となり,重症児の思春期以降の生命予後を著しく悪化させる.したがって,高度脊柱変形への進行を予測し,的確な時期に脊柱固定術を選択・施行できるように,早い段階から脊柱変形に関するadvance care planningが求められる.脊柱固定術は負担の大きい手術であるため,時間をかけて丁寧な情報提供を行うことが肝要である.

  • 船戸 正久
    2025 年57 巻4 号 p. 290-295
    発行日: 2025/07/01
    公開日: 2025/08/20
    ジャーナル フリー

     現在医療型障害児入所施設において利用者の高齢化・重症化が進み,どこまで侵襲的な治療介入を行うかが大きな倫理的課題となっている.近畿地区の重症心身障害児施設31施設に看取りの実態に関する調査を行い,18施設から回答を得た.18施設中15施設で看取りの経験があり,その総数は69例であった.その決定は,家族と医療・ケアチームとの協働意思決定が最も多かった.死期が迫った時,特別配慮するケア内容は,侵襲的治療介入の制限が最も多かった.その他緩和ケア,個室用意,家族のケア参加などが挙げられた.また死後正面玄関から見送る施設も6施設あった.

     当センターでは,現在の病態,家族の希望,ケアの目標,具体的なケア内容をアドバンス・ケア・プランニング(advance care planning;ACP)として文書で共有し,家族から法定代理人として署名をいただく.その上倫理委員会にACPを図り承認されれば,本人の最善の利益に沿う形を多職種協働で支援する.具体的なACPを作成した10例の内,作成後7例が召天した.他の医療機関ともACPを共有した例が3件,医療・ケアチームで決定した例が2件あった.家族が希望しない侵襲的治療介入は,蘇生,高カロリー輸液などであった.その支援の内容は,日中活動・イベント参加が最も多かった.

     療育の役割は,医療・ケアチームで本人の人権と尊厳を大切にし,最善の利益を個別に支援することにある.ACPの作成は,意思表示ができない本人の最善のトータルケアを法定代理人である家族と共に考える良い機会となる.

原著論文
  • 中村 由紀子, 高橋 美智, 河野 千佳, 萩田 美和, 久本 佳美, 久保田 雅也
    2025 年57 巻4 号 p. 296-299
    発行日: 2025/07/01
    公開日: 2025/08/20
    ジャーナル 認証あり

     【目的】一療育センターにおける62年間の入所者の死亡原因の変遷を検討する.【方法】1961年5月から2022年12月までの死亡退所者216名について死因と死亡年齢を後方視的に検討した.死因について疾患別に分類し,在院年代別の死因の変遷を評価した.【結果】62年間での入所者の死亡例は216例であり,死亡数と年齢中央値はそれぞれ1960年代50例,5歳,1970年代31例,10歳,1980年代38例,13.5歳,1990年代35例,17歳,2000年代26例,22歳,2010年代31例,49歳,2020年代5例,50歳であった.全体の疾患別死因は呼吸器疾患114例(51%),循環器31例(14%),消化器12例(5.6%),腎泌尿器5例(2.3%),中枢神経8例(3.7%),感染症15例(6.9%),悪性腫瘍20例(9.3%),その他11例(5.1%)であった.1960年代の死因の割合は呼吸器64%,循環器14%,感染症6%,悪性腫瘍4%の順であるのに対し,2010年代では呼吸器23%,循環器19%,悪性腫瘍16%,感染症13%と呼吸器疾患の減少と悪性腫瘍の増加がみられた.【結論】重症者施設入所者の高齢化に対して悪性腫瘍の早期発見が今後の課題である.

症例報告
  • 加藤 実咲, 松浦 隆樹, 菊池 健二郎, 平田 佑子, 小一原 玲子, 井原 哲, 二見 徹, 浜野 晋一郎
    2025 年57 巻4 号 p. 300-304
    発行日: 2025/07/01
    公開日: 2025/08/20
    ジャーナル フリー

     四肢強直肢位の反復を主訴としててんかん発作が疑われた7か月男児.2か月時に特異顔貌,舌骨と椎体と足根骨周囲の点状石灰化を認め,点状軟骨異形成症短末節骨型(chondrodysplasia punctata, branchytelephalangic type;BCDP)と診断した.3か月時より,20秒持続する,体幹を反り返して両肘関節屈曲位で両上肢を挙上し,両下肢を伸展させた強直肢位の反復を認めた.7か月時の初診時には寝返りは未獲得であり,四肢の筋緊張亢進と痙性四肢麻痺を認めた.深部腱反射は亢進し,病的反射は陽性であった.発作時脳波では強直肢位に一致するてんかん性異常波を認めず,非てんかん発作と判断した.頚部MRIでは脊柱管狭窄および環椎軸椎亜脱臼と第1頚椎から第2頚椎レベルの頚髄圧迫を認めた.頚部X線検査では第1頚椎椎体が前方に偏位しており,前屈位でさらに前方へ偏位した.1歳2か月時に第1頚椎椎弓切除術および頭蓋頚椎後方固定術を行い,4歳10か月時に両股関節周囲筋解離術と両膝屈筋腱延長術を行った.8歳時には痙性四肢麻痺を認めたが起坐位やつたい歩きが可能であった.上肢は,補助具を用いた書字ならびに経口摂取が可能であった.BCDPに合併した頚部脊柱管狭窄症や環軸椎不安定症では,早期発見により頚髄圧迫を軽減して神経学的後遺症の改善が期待できるため,頚椎病変が疑われる場合は積極的に頚部MRIを行い,低年齢であっても外科的治療を検討すべきである.

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