脳と発達
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最新号
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巻頭言
総説
  • 平賀 陽之
    2025 年57 巻6 号 p. 415-421
    発行日: 2025/11/01
    公開日: 2025/12/12
    ジャーナル フリー

     症例報告の意義は,経験の共有,教育と訓練,エビデンスの出発点である.症例の報告価値は稀少性ではない.症例報告には明確な「learning point(学ぶ点)」が必要である.「学ぶ点」には,臨床での落とし穴,病態機序の示唆,定説への反論などがある.「症例からどんな教訓が学べたのか?」「既存の知識に何を加えたのか?」と考えるとよい.序論には知られている点,知られていない点,本症例の特徴を記載する.症例記述は簡潔にし,不要な情報は省く.考察は「学ぶ点」に焦点を絞る.序論と考察を一般論にしてはいけない.また,「稀で貴重と考えられたので報告した」と「文献的考察を加えて報告する」は使用しない.若い医師は症例報告の過程を通して,3つの効果(症例の「学ぶ点」を見つけてまとめる楽しさ,自身の論文が掲載される嬉しさ,臨床力が向上する実り)を実感できるだろう.

原著論文
  • 陣内 久美子, 下川 尚子, 前田 寿幸, 吉岡 史隆, 阿部 竜也, 寒河江 大葵, 室谷 健太, 森岡 基浩, 松尾 宗明
    2025 年57 巻6 号 p. 422-427
    発行日: 2025/11/01
    公開日: 2025/12/12
    ジャーナル 認証あり

     【目的】小児MRI検査において鎮静実施を決定する際の現状と課題を明らかにする.【方法】単一大学病院における小児のMRI検査321件を対象として,観察研究を行った.調査項目は鎮静実施群・非実施群に分けて,画質,年齢,性別,MRI検査の既往,担当医,つまり小児科医チーム,協働チーム(小児科医と脳神経外科医)とした.また家族に検査前アンケート調査を行い,画質不良と関連のある回答項目を検討した.協働チームでは症例を選んでプレパレーションを実施した.【結果】MRI検査321件中,鎮静実施38.7%で,画質良85.7%であった.年齢別にみると,本邦の外来MRI調査に比べて本研究では,3~6歳における鎮静割合が低かった.さらに3~6歳群の鎮静実施は小児科医チーム95%,協働チーム50%で,鎮静の決定には担当医による統計学的有意差があった.また鎮静実施で画質良好な割合は,3~6歳では他の年齢層よりも有意に低く,これに関連するのは,月齢が低い,「大きな音を怖がる」,「狭いところを怖がる」の3項目であった.一方,鎮静非実施群で画質不良と関連する項目は明らかではなかった.【結論】3~6歳児にMRI検査を実施する際の鎮静の意思決定に担当医ごとの個人差が大きいことがわかった.さらに同年齢では,鎮静をしても良好な画質を得られないことがあり,その傾向として暗い所や大きな音を怖がることがあげられた.これらの恐怖心がある児においては,より慎重に鎮静を実施すべきと考えられた.

症例報告
  • 竹尾 俊希, 深沢 達也, 根来 民子, 久保田 哲夫, 佐久間 啓
    2025 年57 巻6 号 p. 428-432
    発行日: 2025/11/01
    公開日: 2025/12/12
    ジャーナル 認証あり

     抗MOG抗体関連疾患(myelin oligodendrocyte glycoprotein antibody-associated disease;MOGAD)は抗ミエリンオリゴデンドロサイト糖蛋白(myelin oligodendrocyte glycoprotein;MOG)抗体が陽性となる自己免疫性脱髄性疾患である.小児では急性散在性脳脊髄炎(acute disseminated encephalomyelitis;ADEM),視神経炎,脊髄炎が多いが,皮質性脳炎も呈する.症例は12歳男児.第1病日に無熱性けいれん発作で発症し,合計3回の強直間代発作を認めた.第9病日に発熱と頭痛を認め,MRIで右前頭葉皮質の腫脹・FLAIR高信号・軟膜増強,脳波で右前頭部高振幅徐波を認めた.MOGADを疑いステロイドパルス療法を施行したところ,頭痛と発熱は速やかに改善した.抗MOG抗体は血清・髄液共にIgG1抗体を用いた検査(IgG1法)で陰性であったが,IgG(H+L)抗体を用いた検査(Total IgG法)では陽性であった.抗アクアポリン4抗体は陰性であった.経過と検査所見から,抗MOG抗体関連皮質性脳炎と診断した.ステロイドパルス療法後は半年間のステロイド後療法を行った.後遺症は認めず,再発も認めていない.2023年にMOGAD国際委員会よりMOGADの診断基準が示され,抗MOG抗体の検査方法についても言及されている.使用する二次抗体による感度/特異度の違いを理解し,偽陽性や偽陰性に留意しながら適切に評価を行う必要がある.

  • 髙見 遥, 日暮 憲道, 竹内 博一, 樋渡 えりか
    2025 年57 巻6 号 p. 433-437
    発行日: 2025/11/01
    公開日: 2025/12/12
    ジャーナル 認証あり

     思春期前発症の免疫治療抵抗性重症筋無力症に対する胸腺摘除は,有効性に関するエビデンスに乏しく,ガイドライン上も優先度が低い.また侵襲性や合併症への懸念もあり未だ選択される症例は少ない.症例は男児.8歳3か月時に眼瞼下垂が出現し,抗アセチルコリン受容体抗体陽性を認め,眼筋型重症筋無力症と診断された.Distigmine bromide内服が開始されたが,構音障害と嚥下障害が出現した.免疫グロブリン大量療法を開始したところクリーゼを発症し,その後,methylprednisoloneパルス療法中にもクリーゼが再発した.以降,ステロイドを慎重に増量し,tacrolimusを併用したが症状改善に乏しく,軽度の球麻痺が持続した.ステロイドは1.75mg/kg連日まで漸増したところ球麻痺は改善したが,ステロイド漸減は困難で,高血糖,肥満,成長障害が出現した.経過中,抗アセチルコリン受容体抗体価は低下傾向を認めず,著明な高値が持続した.9歳10か月時に胸腔鏡下胸腺摘除術を施行したところ,症状寛解を維持した状態で,ステロイドの漸減が可能となった.抗アセチルコリン受容体抗体価も術後速やかに減少した.小児の重症筋無力症は免疫治療のみで改善する例が多いが,治療抵抗性を示す例ではステロイドによる成長障害等の副作用が懸念される.免疫治療抵抗性で,治療中に抗体価の減少が乏しい場合,思春期前でも早期に胸腺摘除を検討すべきであると考えられた.

  • 新戸 瑞穂, 星野 英紀, 占部 良介, 落合 悟, 三牧 正和
    2025 年57 巻6 号 p. 438-443
    発行日: 2025/11/01
    公開日: 2025/12/12
    ジャーナル 認証あり

     新型コロナウイルス感染症(coronavirus disease 2019;COVID-19)では,多彩な神経学的合併症を呈することが報告されているが,その症状や病巣についての詳細は不明な点も多い.我々はCOVID-19罹患後遅発性に運動・感覚異常を呈し,末梢神経伝導検査でF波の異常を認めた小児2例を経験した.

     症例1は13歳男子.COVID-19罹患1か月後に発熱,腹痛,下痢が出現.小児COVID-19関連多系統炎症性症候群の診断で当科入院となった.大量免疫グロブリンとステロイド点滴静注で症状改善した後,四肢の痛みにて歩行不能となり,さらに筋力低下と感覚鈍麻・異常感覚を認めた.髄液検査で細胞数上昇と,末梢神経伝導検査でF波の潜時延長,伝導速度低下,出現率の低下を認め,頭部および脊髄MRIで多発散在性の信号異常を認めた.これらの神経症状は無治療で改善した.症例2は14歳男子.COVID-19罹患1か月後に腰痛が出現.右半身の筋力低下と温痛覚・触覚低下が持続し当科入院となった.画像検査,血液・髄液検査では異常を認めず,末梢神経伝導検査で上肢F波の出現率の低下と潜時延長を認めた.上記症状は無治療で改善した.

     自験2例では,COVID-19罹患1か月以上経過後に筋力低下・感覚異常を認め,電気生理検査でF波の異常がみられたこと,神経学的予後が良好であったことなどの共通点があり,病巣の1つとして広範囲な脊髄の神経根の障害が示唆された.

  • 尾上 幸子, 古賀 智子, 生塩 加奈, 元 和美, 新寳 理子
    2025 年57 巻6 号 p. 444-448
    発行日: 2025/11/01
    公開日: 2025/12/12
    ジャーナル 認証あり

     気管切開(以下気切と略す)後の合併症のうち,肉芽による気道狭窄について,胸部CTの多角形面積を求めるアプリを用いて気管内腔の開口率を計算し,緊急時を予測して対処することにより,窒息を回避できた重症心身障害者について報告する.

     症例は20歳の女性,気切3年後に当センターに入園したが(開口率92%),最初の1年はけいれん発作,咳こみが頻回で,肺炎も3回発症した.9か月後開口率は25%に減少,以後肉芽による閉塞を予測し,予防や対症療法の準備を行った.入園2年および3年後,分泌物の吸引困難,気管内腔の狭窄を認めた.2年後の開口率は3%,3年後は30%であったが,3年後の呼吸困難は強くチアノーゼを認め,細い挿管チューブを気管カニューレに沿って挿入して気道を確保した.CTでは肉芽の発生部位は気管カニューレ先端部で,シャフト長の短いオーダーメイドのカニューレを入園4年後から使用し,開口率は85%までに改善し,肉芽の縮小を認めた.CTによる閉塞評価の特徴は,高度な狭窄部分を超えて病態を検索し,部位と程度を判定可能であるが,呼気や分泌物の貯留によって開口率が小さくみえることがあり,内視鏡検査の併用は必要である.

     CTによる気管内腔の経過を評価することは,気管内肉芽による急性の閉塞症状に迅速に適正に対処する,また治療効果を判定することに有用であった.開口率30%以下の場合は,緊急事態を予測し対処法を考慮しておくことが必要である.

Letters to the editor
レジェンドアーカイブ 史料小委員会レジェンドアーカイブ企画2
  • 村上 てるみ, 石垣 景子, 大澤 真木子
    2025 年57 巻6 号 p. 451-454
    発行日: 2025/11/01
    公開日: 2025/12/12
    ジャーナル フリー
    電子付録

     福山幸夫先生(写真1,以下敬称略)は1953年に東京大学医学部小児科学教室に入局し,86歳で永眠されるまで,小児神経学の開拓者として,日本のみならずアジアの小児神経学の発展に貢献した.福山の功績は,脳波・筋電図研究から小児てんかん,免疫性神経疾患,筋ジストロフィーと小児神経学全般に広く及ぶが,特に1959年に第一報を学会報告した福山型先天性筋ジストロフィーは一疾患概念を構築しただけでなく,これまで世界でも認められていなかった「先天性筋ジストロフィー」という概念そのものを世界中に認知させる発端となった.本企画では,福山が新しい疾患概念を打ち立てた過程と,一疾患概念として世界的に認められるまでの経緯を,福山の記録をもとにまとめる.

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