1968年5月から1972年3月までの間に東京女子医大小児科で診察した点頭てんかん185例中,予防接種歴の明らかな110例について,予防接種と点頭てんかん発症との因果関係を検討した.44例(C群)は予防接種を受けたことが全くなく,他の44例(B群)は発症の1カ月以上前または発症後に接種を受けており,予防接種との関係を完全に否定しえた.残りの22例(A群)は,点頭てんかん発症前1ヵ月以内に予防接種を受けていた.A群の点頭てんかん発症年齢は,点頭てんかん全般のそれと完全に一致していた.A群での予防接種の種類は,百日咳ワクチンと他ワクチンとの混合または併用15例,種痘4例,ポリオ1例,日本脳炎2例であった.また接種から発症までの間隔(百ワク48時間以内,日脳・種痘18日以内,ポリオ7日以内のもの,を有意とす),他の傷害要因,発症前発達遅延の有無の3条件の組合せによって,因果関係を,compatible,probable,possible,notrelatedの4段階に分類する判定規準を設け,A群症例を検討したところ,各々5例,2例,12例,3例となった.以上から,点頭てんかんの大部分の例では,予防接種が原因とは考えられないこと,両者の因果関係を否定しきれない例は4~5%以内に止まること,そしてこの小さな数字は偶然の重畳と解釈する方が妥当と思われることを考按した.
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