脳と発達
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8 巻, 4 号
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  • 山上 栄
    1976 年 8 巻 4 号 p. 260-269
    発行日: 1976/07/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    脳の発達に及ぼす成長ホルモン (GH) の影響を垂摘動物にみられる生物学的反応と, GHの正常動物脳への効果との二面から総括を行ない, さらに発育期のヒト脳への影響についても考察を加えた.
    生後6日に垂摘したラットでは, 術後10日以内に85%が死亡し, その後も高い死亡率を示す.その死因は主として頭蓋の変形による脳圧の亢進と, それによってもたらされる脳幹の大後頭孔内へのヘルニヤによるものである.かろうじて生存した垂摘ラットでも, 体重, 身長, 各種内分泌器官の重量, 化骨などで著しい発育遅滞がみられ, 脳では, 間脳の深さの増大, 皮質の体感覚領野と内側部でのアセチルコリンエステラーゼ活性の低下, 視床下部でのコリンエステラーゼ活性の低下, RNAや蛋白の合成阻害, その他ポリゾームの減少などが起こるといわれる.
    オタマジャクシにGHを投与すると, 脳重と細胞数の増大を起こす.同様にBGHを胎生期に投与すると, 新生児ラット脳の細胞数の増加が観察される.GHが発育早期の脳細胞の分裂を刺激し, 脳組織の成長を強く促進させる好例である.
    ヒトでも血漿GHは高値であるが, 生物学的に不活性なGHを有する家族性下垂体侏儒症と, それと異形接合子を有し, 侏儒症状を示さない同胞とについて, GH-知能相関を調べると, これらの症例はいずれもWechsler知能テストでIQが低く, Bender Gestaltテストでも普通の年齢水準より低い成績を示した.HGHの欠如または不足が器質的な脳障害をもたらした例といえるであろう.しかし, その成因についてはいまだに未知の領域であり, 今後の広範囲な検索が期待されている.
  • 大田原 俊輔, 石田 喬士, 岡 鎮次, 山麿 康子, 井上 英雄
    1976 年 8 巻 4 号 p. 270-280
    発行日: 1976/07/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    脳波上suppression-burstを示し, 乳児期早期 (生後3ヵ月以内) 発症, 頻回のtonic spasms, 著しい難治性と重篤な予後を特徴とする8症例につき臨床的脳波学的に検討した結果をのべこれをthe early-infantile epileptic encephalopathy with suppression-burstと名づけ, 一臨床単位として提示した。これは年齢依存性てんかん性脳症の最幼弱型と見做される.
    1) 症例は男児5例, 女児3例の計8例であるが, 内6例は生後1ヵ月以内に発症していた.
    2) 発作型は短いtonic spasmsで, シリーズ形成をするもの, しからざるもの共にみとめられ, 覚醒時, 睡眠時を問わず出現した.
    3) 基礎疾患ではAicardi症候群1例, 孔脳症2例, 亜急性広汎性脳症1例を含み多彩であった.
    4) 脳波では全例, 覚醒, 睡眠時を問わず, 顕著なsuppression-burstをみとめるのが特徴であり, 発作時にはdesynchronizationを示した.
    5) 追跡的研究でsuppression-burstは生後3ヵ月以後不明瞭となり次第に消退する.経過中5例においてhypsarhythmiaを発現し, その中4例ではWest症候群への変容がみとめられた.
    6) 3年におよぶ追跡調査では, 極めて難治で, 4例は早期に死亡し, 残り4例は重症心身障害児であった.
    7) Burst-burst間隔を計測し, 正常新生児にみられるtracé alternantのそれと比較することによって本症候群の病態生理を推測した.
  • 山本 正士, 竹下 研三
    1976 年 8 巻 4 号 p. 281-288
    発行日: 1976/07/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    服用群34例, 対照群23例 (うち2例はDPH非服用てんかん児) の末梢神経機能を検討し次の結果を得た.
    1) 5才以上の症例について, MCVはDPH群47.6±9.4m/sec, 対照群57.1±7.0m/secでP<0.05で有意差があった.対照群の標準偏差の2SDをこえるものは, DPH群32%, control群0%であった.
    2) 5才以上の症例について, SCVはDPH群45.2±10.9m/sec, 対照群56.9±7.0m/secでP<0.05で有意差があった.対照群の標準偏差の2SDをこえるものは, DPH群42%, 対照群5%であった.
    3) T波潜時はDPH群にr=0.6733, control群r=0.7460で両者の間に推計学的有意差はないが, DPH群に延長する傾向がみられた.
    4) M波潜時は対照群には年齢による変動はないが, DPH群では年齢との間にP<0.01で有意の相関がなりたちr=0.5730であった.
    5) 連続誘発筋電図, 強縮負荷後誘発電位では, DPH群にwaningの傾向を示す症例をやや多くみたが推計学的有意差はなかった.
    6) MCV, SCV, T波潜時とDPHの血中濃度, 服用期間, 服用総量, 歯肉増生との関係では, 血中濃度は相関関係なく, 服用期間では, T波潜時にP<0.01で相関係数r=0.4923, 服用総量ではMCVとの間にP<0.05でr=0.3584を得, 歯肉増生では, SCVの方にP<0.01で有意差をもっておそかった.
  • 落合 靖男, 北原 佶, 吉野 邦夫, 鈴木 康之, 中村 良文
    1976 年 8 巻 4 号 p. 289-297
    発行日: 1976/07/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    1) 発生障害と推定される脳梁欠損, 透明中隔欠損, 非交通性透明中隔嚢胞などの一次性小頭症, 脳室周囲石灰化を有する二次性小頭症ともにearly ventricular refluxがみられた.
    2) early ventricular refluxのみられた症例はEvans'ratioが0.33以上であり, 脳室の病的拡大はその要因の一つと考える.
    3) しかしプラニメーターで測定した脳室の大きさとは相関がないので, 発育にともなう脳室容積の増大はearly ventricular refluxと関係ないと考えられる.
    4) 脳室の左右差のある症例は, 脳室の大きい半球にRIは速く拡散し, 反対側は相対的に遅延がみられた.
    5) Hunter症候群はearly ventricular refluxがみられ, GM1 gangliosidosisでは脳表への流通障害がみられた.
  • 青木 久夫
    1976 年 8 巻 4 号 p. 298-306
    発行日: 1976/07/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    知能障害児1, 325名, 知能正常児4, 852名につきシスチン尿症の頻度を調べた結果・本症が有意の差を以って知能障害児に高い傾向が見出された.さらにこれらシスチン尿症患者に経口的リジン負荷テストを行ないリジン吸収能を調べた結果, 知能障害を伴う本症患者では腸管におけるリジン吸収能の低下を示す例が多く認められた.
    これらの知見により, 本症患者ではリジンの輸送機構の障害, 特に腸管吸収不全という遺伝的障害があり, それに脳発達の旺盛な乳幼児期の栄養条件が加わって知能障害に陥る頻度が高くなるものと推測された.
  • 宮川 洸平, 小笠原 嘉祐, 田中 良憲, 室伏 君士
    1976 年 8 巻 4 号 p. 307-314
    発行日: 1976/07/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    才, 男子.先天盲, 重度精神運動発達遅延, 多飲を認めた1症例について, 臨床的ならびに神経病理学的に検索した.
    剖検により動脈硬化性腎硬化症と小脳虫部欠損が観察された.現在までDekaban, et al, Heffner, et al, 高屋らにより多嚢胞腎に小脳虫部欠損と先天盲を伴った症例が6例報告されている.本例は小脳虫部欠損と先天盲を同様に認め, 腎は動脈硬化性腎硬化症の所見を呈している点で興味ある症例である.
    本例と多嚢胞腎症候群との関連について, ならびに過去に報告された小脳虫部欠損について論じた.
  • 特に脳血管系について
    浜野 建三, 岩川 善英, 保崎 純郎
    1976 年 8 巻 4 号 p. 315-320
    発行日: 1976/07/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    I. 1年8ヵ月の女児の典型的なholoprosencephalyの症例を経験し, その臨床経過を略述するとともに, 剖検を行ない脳標本を検討した結果, 以下の所見を得た.
    1) 肉眼的所見では左右の大脳半球が前頭葉の高さで癒合しており, 同時に左右の側脳室も合体して単一の脳室を形成していた.
    2) 本例の脳溝を正常のものと比較したところ, 一次溝についてはほぼ同定できた.
    3) 血管系については, 内頸動脈系では一つの前大脳動脈と二つの中大脳動脈を認め, 同時に左右の交通枝が2本存在していた.椎骨動脈系には異常を認めなかった.
    II.上述した自験例と今までの報告例を参照すると, 本症における脳血管系の異常は内頸動脈系に集中しており, かつ次の3群に分類するのが妥当と思われる.
    1) 前大脳動脈, 中大脳動脈共2本存在する群
    2) 前大脳動脈は1本, 中大脳動脈は2本存在する群
    3) 中大脳動脈のみで終脳が支配されている群
  • 藤野 秀策, 深井 博志, 梅田 昭正, 梶谷 喬, 藤原 順子
    1976 年 8 巻 4 号 p. 321-325
    発行日: 1976/07/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    才女児の頭蓋内腫瘍の一例.頭蓋内雑音を両側眼瞼上と側頭部に聴取し, 心音図に記録した.雑音は患総側頸動脈圧迫により減少した.腫瘍は左中心領野を広範に占めるEpendymoblastomaで, 亜全別 (2009) のあと雑音は消失した.われわれの症例では頭蓋内雑音を発生し易い次のような特徴的所見を呈していた. (1) 太い少なくとも3本の導入動脈がみられ, (2) 脳表に存在し, (3) 開頭術中にredveinを認めたこと.頭蓋内雑音に関しての文献的考察を加え, 頭蓋内雑音の意義と病態生理について述べ, 頭蓋聴診の重要性を強調した.
  • 三池 輝久, 上野 留夫, 三吉野 産治, 三嶋 一弘, 東 明正
    1976 年 8 巻 4 号 p. 327-333
    発行日: 1976/07/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    生後11ヵ月より歩行可能な5才の女児をWerdnig-Hoffmann病として報告した.患児は3才頃よつ全身の間代性及び失立様のてんかん発作を示し, 4才では階段の昇降が困難となり, 5才8ヵ月でGowers'signを認めている.
    筋萎縮は全身に認められ, 腱反射は消失, EMGでは典型的なneurogenic pattemを示し, 血清CPKは正常であった.これらのことより本症例はW-H病に属すると考えられた.
    筋生検は左三角筋及ひ大腿四頭筋より行ない, 肥大, 中間径, 萎縮の三つの筋線維の大グループを認めた.
  • 前川 喜平
    1976 年 8 巻 4 号 p. 334-335
    発行日: 1976/07/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
  • 大田原 俊輔
    1976 年 8 巻 4 号 p. 336
    発行日: 1976/07/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
  • 福山 幸夫
    1976 年 8 巻 4 号 p. 337-338
    発行日: 1976/07/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
  • 1976 年 8 巻 4 号 p. 339-341
    発行日: 1976/07/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
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