抗てんかん薬Carbamazepine (Tegretol, 以下CARBと略す) を持続投与中の小児を対象に, その血中濃度を測定し, 投与量との相関を求めた.
血中濃度測定方法はKupferberg (1972年) の方法に準じ, 通常被検血漿1mlを水酸化ナトリウムを加えてアルカリ性とし, Chloroformで抽出, 濃縮後, 反応触媒にTrimethylchlorosilaneを使用して, N, O-bis-trimethylsilyl acetamideでtrimethylsilyl化し, 4-Benzyldiphenylを内部標準物質として, 3%OV-17カラムを用い, gas-liquid chromatographyにより定量分析を行なったが, その回収率は100.03±2.53%とすぐれていた.
対象は, (A) 一般大学病院外来患児40名ならびに (B) 一重症心身障害児施設収容児 (者) 26名で, それぞれの血中濃度/投与量・比は個体差が大であり, 血中濃度と投与量との間に一定の相関を見出し得なかったが, A, B両群をまとめて比較すると, A群は年齢1~14才 (平均8才), 体重11~43kg (平均26.5kg), CARB1日投与量100~600mg (平均320mg), B群は年齢5~23才 (平均13才), 体重14~49kg (平均27.8kg), CARB1日投与量100~700mg (平均330mg) で, たまたま両群の平均体重, CARB1日投与量は等しかったが, A群は血中濃度3.58±2.43μ9/ml, 投与量12.51±3.27mg/kg/day, 血中濃度 (μg/ml) /投与量 (mg/kg/day) ・比0.28±0.18, B群はそれぞれ1.83±1.38μg/ml, 13.10±7.19mg/kg/day, 比率0.15±0.11で, その血中濃度, 血中濃度/投与量・比は0.5%以下の危険率でB群が低値であった.
また, この両群の差異に関し個々に検討すると, A群の半数近くを占めるPhenobarbita1, Primidone等を併用しない者はCARBの血中濃度/投与量・比が大であり, B群に多いPB血中濃度がpotentially toxic level以上にある者はこの比が小なる傾向が明らかであった.
CARBの吸収, 代謝, 排泄, 他薬剤との相互作用, 有効血中濃度に関してはいまだ不明な点が多いが, これらを解明していく上で, また臨床の実際において, その血中濃度測定の意義を強調したい.
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