脳と発達
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9 巻, 5 号
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  • 三池 輝久, 玉利 秀夫, 上野 留夫, 石橋 健治朗, 三吉野 産治
    1977 年 9 巻 5 号 p. 366-370
    発行日: 1977/09/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    ファロー四徴症の子供達の栄養体格は健康児のそれより劣っており, 筋肉や皮下組織も緊張がなく柔らかである. そこで筋緊張低下を示す2例の患児の筋生検を右心カテーテル施行時に同じ切開創より大腿内転筋より行ない組織学的, 電顕的に検討した. 症例2の凍結切片作製に失敗した為, 組織化学的検索は症例1のみに行なったが, LDH, ATPase (pH9.4) でtype II fiber atrophy, type II fiber predominanceなどを認めた. 電顕的には筋原線維間の巾が広く, 粗になっておりグリコーゲン蓄積を認め, 脂肪滴増加, Z帯走行の乱れ, streamingが認められた. これらの変化は運動量減少の為の廃用性萎縮に加えてファロー四徴発生時期の中枢神経系の筋発生に対する関与があるのではないかと考えられる.
  • 高田 邦安
    1977 年 9 巻 5 号 p. 371-377
    発行日: 1977/09/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    正常とみなしうる小学校児童114名について40, 60, 80, 100, 120回/分でそれぞれ約40秒の視標追跡試験 (eye tracking test) を行なった。
    40秒にわたりほぼ完全な滑動性追跡がえられたのは, 40回/分で7, 8才児の約30%, 10才以上で70~80%を占め, 9才児は前2群の中間型を示していた. 60回/分では各年齢とも滑動性追跡のえられた者の数が幾分減少したが, 80回/分以上では全年齢で滑動性追跡はほとんど不可能であった.
    衝動性眼球運動や振幅の不規則な波形の出現は7, 8才児では40, 60回/分でかなり高率にみられたが, 10才以上ではずっと少ない. しかし100, 120回/分では年齢にかかわらず高率にみられた.
    検査中, 休止することなく追跡をつづけることや, 頭部の回旋運動の抑制は, 7, 8才児では視標の速度がはやくなると難しくなるが9才以上では速度による影響はきわめて小さかった. 追跡運動の継続や頭部固定に対する随意性は9才を境に急速に発達するものと考えられる.
  • 白井 鎮夫, 大和田 哲夫, 秋本 優, 牧 豊
    1977 年 9 巻 5 号 p. 378-386
    発行日: 1977/09/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    新生児, 乳児の頸動脈撮影像に認められる特徴について, 成長に伴う主幹動脈の走行の推移を中心に胎児, 幼児, 成人と比較しつつ記述した.
    1) 成長に伴う主幹動脈の走行の推移について, 一般的な傾向を要約すると.
    i) 総頸動脈分岐部の位置は下降する.
    ii) 頸部内頸動脈は, 新生児期では著しい屈曲を示すが, 漸次直線化する.
    iii) 後交通動脈は, 側面像において上方に凸から直線状となり, 次いで下方に凸の型をとる.
    iv) 内頸動脈siphon部は, 側面像で横arch型-横V字型-横U字型-横omega型へと推移する.
    v) 内頸動脈鞍上部は, 側面像で下後方に移動し, 従って前, 中大脳動脈の分岐点もこれに伴って後下方に移動する.
    vi) 内頸動脈分岐部の型は, 前後像でY字型-T字型-umbrella型へと推移する.
    vii) 前大脳動脈は, 新生児期には著しい蛇行を示していることが多いが, 漸次屈曲性を減じてくる.
    viii) 中大脳動脈主幹, 殊に水平部から島部に移行する部分の位置は, 乳児期前半では著明に高いが漸次下降する.
    2) 穿通動脈, 脈絡動脈は乳児初期では明瞭に造影される. 穿通動脈は殊に新生児期において極めて良く造影され, 大脳基底核全体が判然と描出される. また前脈絡動脈も同様で, 脈絡叢まで判読可能である。
    3) 後交通動脈を介して, 後大脳動脈が高頻度に造影される.
  • 藤野 英世, 山下 俊紀, 藤津 和彦, 山口 和郎, 桑原 武夫, 飯塚 敦夫, 長尾 大, 小宮 和彦
    1977 年 9 巻 5 号 p. 387-394
    発行日: 1977/09/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    筆者らは, ビタミンK欠乏症により身体各部位の出血傾向を呈した新生児・乳幼児18例 (新生児3例) を経験した. この18例中, 頭蓋内以外の出血は6例, 頭蓋内出血をきたしたものは12例 (67%) で, とくに頭蓋内出血群を中心に報告する.
    ビタミンK欠乏症による頭蓋内出血は, 母乳児に多く (83%), 外傷の既往はなく, 突然の嘔吐ではじまり, 3~4日の間に不機嫌, 哺乳不良, 痙攣発作などを呈し, ついには意識障害におちいる. 一方では大泉門の緊満を認め, 全例著明な貧血を呈し, また頭蓋内以外の出血をも認め凝固機能異常を疑わせる. 可能な限り測定しえたプロトロンビン時間, 部分トロンボプラスチン時間は延長しており, 凝固因子II, VII, IX, Xは低下していた. ビタミンKなどの投与によりこれらは, ただちに正常に復した. 頭蓋内出血は, 硬膜下血腫9例 (75%), クモ膜下出血10例 (83%) であるが, この二つが合併したもの8例 (67%) と多い. 治療としては, 貧血及び出血傾向を改善せしめた後, 開頭血腫除去, 穿頭術, 硬膜下穿刺などを施行した. 術後の成績は, 回復25%, 何らかの後遺症を残したもの50%, 死亡25%である.
    ビタミンK欠乏症の原因として, ビタミンK摂取不足, ビタミンK吸収障害, ビタミンK合成障害などがあげられているが, 筆者らは, 低ビタミンK栄養状態が大きな役割を占めているものと考えられる.
    筆者らの経験でに, 新生児・乳幼児の特発性頭蓋内出血は, ビタミンK欠乏症が原因である場合が決して少なくないと考えられる. 新生児・乳幼児頭蓋内出血におけるビタミンK欠乏症の役割を強調したい.
  • 南部 由美子, 黒川 徹, 布上 董, 横田 清, 高嶋 幸男, 花井 敏男
    1977 年 9 巻 5 号 p. 395-399
    発行日: 1977/09/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    昭和50年から51年にかけて風疹の全国的流行をみたが, 本流行時にわれわれが検索し得た8例の風疹脳脊髄膜炎の脳波所見について報告した. 症例は4才から14才で発疹出現当日~5日後にかけて頭痛, けいれんなどをもって発病し, いずれも風疹HI抗体価の上昇をみた. 脳波所見は中枢神経症状出現時に高度異常を呈し, 低振幅~高振幅徐波が多くは後頭部優位に出現した. 脳波所見は経過とともに改善の傾向がみられたが, 中枢神経症状消失後も数カ月にわたって異常所見が持続した.
  • 苧坂 邦彦, 佐藤 倫子, 藤田 勝三, 松本 悟, 児玉 荘一
    1977 年 9 巻 5 号 p. 400-406
    発行日: 1977/09/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    alobar holoprosencephaly3例, lobar holoprosencephaly1例の脳血管写像, 特にその静脈系を呈示し, 考察を加えた. これら症例では内大脳静脈, ガレン大静脈及び直静脈洞が未発達で視床からの静脈血は主として胎生期のdiencephalic vein由来の静脈によって直接横静脈洞に注がれているものと考えられる. この様な深部静脈系の形成不全はholoprosencephaly特にlobar holoprosencephaly診断の重要な決め手になると思われる.
  • 主要既報告例との比較
    鈴江 純史, 橋本 俊顕, 大原 克明, 日浦 恭一, 河野 登, 宮尾 益英
    1977 年 9 巻 5 号 p. 407-413
    発行日: 1977/09/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    2カ月15日の女児で, 点頭てんかん, 顔面の線状脂腺母斑, 精神遅滞をともなった線状皮脂腺母厖症候群の1例を報告し, 主要既報告例との比較を行なった.
    1) 自験例の神経学的補助検査. 脳波は非対称性ヒプスアリスミアを示した. 気脳写では両側側脳室は拡大し, 右側に著明であった. 右頸動脈撮影では, 側頭部に軽度の無血管野を認めた. 脳シンチグラフィーでは, 右側面像の側頭都にRI uptakeの増加を示した. 脳槽シンチグラフィーでは, 正面像の右頭頂部にactivityの減少がみられた. これらの所見より右大脳半球にmass lesionの存在が疑われた.
    2) 本症19例中, 男児9例, 女児8例で, 瞭叢の初発年齢は平均4ヵ月, 点頭てんかんは6例にみられた.
    3) 脳波検査を受けた18例中13例に左右差があり, 自験例でもみとめられた.
    4) 気脳写が施行された10例中5例に側脳室の非対称性拡大がみられ, 自験例では両側側脳室拡大 (右側に著明) があった.
    5) 本症の皮膚病変と脳波, 気脳写の病変優位側が一致する傾向がみられ, 自験例においても一致した.
  • 浜崎 雄平, 横田 清, 黒川 徹, 柴田 瑠美子, 三田 哲司
    1977 年 9 巻 5 号 p. 414-418
    発行日: 1977/09/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    広義のocular myopathyの1例を報告し, 鑑別診断上の問題点について述べた. 症例は13才の男児で, 9才頃より書字障害が出現し, その後眼瞼下垂, 眼球運動障害, 難聴などが出現し次第に進行した. その他の特徴的所見として身体発育障害, 網膜色素変性, 軽度知能低下を認めた. 検査所見では髄液蛋白増量と脳波異常が認められ, 頭蓋単純レ線, 脳血管造影および気脳造影所見などより大脳, 小脳, 脳幹の萎縮を示唆する所見が得られた. 注目すべき所見として糖負荷試験における糖尿病パターン, 軽度の腎障害, 椎体骨の扁平化が認められた. そして上腕二頭筋の生検でいわゆるragged red fiberを認め, 電顕にて特異なミトコンドリアを認めた.
  • 神山 悠男, 曽我部 紘一郎, 松本 圭蔵
    1977 年 9 巻 5 号 p. 419-423
    発行日: 1977/09/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    生後4ヵ月の女児で, はじめ先天性水頭症を思わせたが, 経過が少し異なることから, 空気脳室写, コンレイ脳室写, 脳血管写, 脳シンチグラムなどを行なったところ右側側脳室内に腫瘍のあることがわかり, 手術的に腫瘍を全摘出し, 組織学的に脈絡叢乳嘴腫であることを確認した1例を経験し, 若干の文献的考察を加えて報告した.
  • 佐々木 邦明, 黒川 徹, 横田 清, 高嶋 幸男
    1977 年 9 巻 5 号 p. 424-428
    発行日: 1977/09/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    84生日, 男児の線状皮脂腺母斑症候群の1例を報告した. 患児は生下時より鼻梁正中部やや左寄りに線状皮脂腺母斑症を認め, 著明な精神運動発達遅延と点頭てんかんを有していた. 皮膚生検では, 脂腺母斑Pinkus I期と考えられた. 脳波は左側優位のmodified hypsarhythmiaを, 気脳写は左側により強い, 両側性側脳室拡大を示した. 本症の報告例はまだ少なく, 一典型例と考えられたので報告した.
    文献例18例に本症例を加えた19例のうち, 脂腺母斑は全例に認められている. けいれんは17例にみられ, 大発作, 点頭てんかんが多かった. 精神運動発達は15例にみられた. 脳波は19例中18例が異常で, 限局性異常, hypsarhythmiaが多かった. 気脳写は6例中5例が非対称性異常を示した. 脳波異常, 気脳写異常の多くは脂腺母斑と同側にみられた.
  • 第2編集団小児神経学研究の現状-小児集団のための中枢神経機能簡易発達検査法の開発-
    向井 幸生
    1977 年 9 巻 5 号 p. 429-435
    発行日: 1977/09/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    筆者らは, 集団小児神経学研究の一環として, 昭和42年以来, 中枢神経機能の発達に関する簡易検査法を開発するための研究に従事してきた. すでに表1に示す如き10種目の簡易発達検査法を開発している (これらのうちには検査法としての標準化の手続きを完了した検査法と, 現在そのための作業がなお進行中のものとがある).
    筆者らの開発した簡易検査法を含め, 一般に, 小児のための “簡易な健康指標” は次のような機能を持っていると考えられる.
    1. スクリーニング法として
    2. 地域小児保健診断, 学校保健診断のための指標として (簡易検査を指標とした地域小児保健診断の1例として, 水俣地方の小学生の集団検診成績の一部を示した).
    3. 小児医学の研究を能率よく推進させる (この項については第3編において詳述).
    a) “正常小児の簡便でかつ客観的な判定基準” を提供する.
    b) 研究対象集団の質をコントロールするための指標として用いうる.
    c) 各種の “発達研究” を厖大な小児集団に徴しつつ, 能率よく推進させる.
    4. 疾患の (臨床診断の) criteriaを構成する一つのitemとして用いうる. また, このこととの関連において, 重症心身障害児の障害の程度の分類法 (区分) を改訂することの必要性について提言した.
    5. 簡易検査を用いることにより, ある疾患を目標とした集団検診がひろく行なわれるようになれば, その疾患の軽症例や亜型が発見され, そのことから症候論を始めとするその疾患の臨床像の解析が進展する.
  • 前川 喜平
    1977 年 9 巻 5 号 p. 436-438
    発行日: 1977/09/01
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
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