オレオサイエンス
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10 巻, 10 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
総説論文
  • 常川 勝彦, 村上 正巳
    2010 年10 巻10 号 p. 351-357
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/06/01
    ジャーナル フリー
    近年, 食生活の欧米化や運動不足などの生活習慣の変化にともない, わが国においても肥満者が増えている。肥満の予防は, 脂質異常, 耐糖能異常および高血圧などの代謝異常をもたらすメタボリックシンドロームの予防に加えて, 動脈硬化性疾患への進展の防止につながるため重要である。肥満は多くの成因から引き起こされるが, 遺伝素因と環境因子の相互作用が重要である。肥満関連遺伝子の検索として, 一塩基多型 (SNP) を用いた候補遺伝子解析および全ゲノム解析が行われており, これまでに複数の遺伝子が候補として報告されている。将来の肥満に対する予防医学としての個別化医療の実現には, 多くの対象者に対し関連する複数のSNPを診断する必要があり, 簡便, 迅速かつ正確なSNP解析が可能であるSmartAmp法の個別化医療に向けた臨床応用が期待される。
  • 加隈 哲也
    2010 年10 巻10 号 p. 359-364
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/06/01
    ジャーナル フリー
    メタボリックシンドームとは肥満に起因した種々の代謝障害が集積したものを言うが, その本体は非脂肪組織に過剰に蓄積した脂肪による組織機能障害 (脂肪毒性) にある。本稿では, 脂肪毒性とメタボリックシンドームについて再検討したい。
  • 浅原 (佐藤) 哲子
    2010 年10 巻10 号 p. 365-370
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/06/01
    ジャーナル フリー
    最近の疫学研究により, 飽和脂肪酸摂取やトランス型脂肪酸摂取が, 虚血性心疾患のリスクを有意に高めることが報告されている。飽和脂肪酸を含む遊離脂肪酸はその脂肪毒性により, 全身のインスリン抵抗性, 糖脂質代謝や肥満を悪化させ, 炎症・動脈硬化など心血管病リスクを促進する。一方, 不飽和脂肪酸は飽和脂肪酸の炎症惹起作用を減弱しうる。今後, 摂取脂肪量のみならず, 脂肪の質, つまり飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の比に着目した食事指導・脂質管理が虚血性心疾患の予防に有効であると考えられる。さらに近年, 個々の脂肪酸の研究とともに, 脂質やその代謝物の網羅的解析 (リピドミクス) の重要性も注目されている。
  • 藤澤 由美子
    2010 年10 巻10 号 p. 371-374
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/06/01
    ジャーナル フリー
    脂質は重要なエネルギー源で我々に必要な栄養素であり, 摂取の量や質により健康に及ぼす影響は大きい。また, 日本においては20年の問に肥満が増加し, 肥満が様々な疾患の引き金になるとしてその対策が講じられている。脂質摂取量が肥満の原因かどうかは今なお明らかでない状況にあるが, 脂質の栄養学的な働きを理解して, 肥満予防・解消に役立てていく必要がある。
  • 成清 公弥, 粟生 修司
    2010 年10 巻10 号 p. 375-381
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/06/01
    ジャーナル フリー
    脂質はわれわれを含む動物において, 最もエネルギー密度が高い栄養素であり, ゆえに脳はこの重要な栄養源を積極的に摂取するための機構を備えている。その摂食調節は視床下部を中心として, これに大脳辺縁系, 大脳基底核を含む脳の広範な領域が加わって行われる。視床下部は摂食一般の中枢としてはたらき, 主に生体のエネルギーバランスを維持する。視床下部による摂食調節は生体のエネルギーバランスに強く依存しているため過剰なエネルギー摂取には結び付きにくい。一方で, 大脳辺縁系や大脳基底核による摂食の調節は, エネルギーバランスにあまり依存しない。大脳辺縁系は主に高嗜好性による摂食を促進しており, これは内因性のオピオイドやカンナビノイドにより調節されている。大脳基底核は, 摂食行動の強化学習を制御しており, これは癖による摂食行動の形成の原因となっているかもしれない。これらのはたらきが加わることで, 高脂肪食の「おいしさ」による摂食や, その摂食行動の強化学習を通じて, 過剰なエネルギー摂取を引き起こし, 肥満につながっていると考えられる。高脂肪食は, 高嗜好性かつ行動強化力が高いことから, 大脳辺縁系や大脳基底核による摂食調節の影響を受けやすい。これらのエネルギーバランスに依存しない摂食が, 現代の飽食社会において高脂肪食の摂取を促進し, 肥満を増加させていると考えられる。
  • 田中 幸久, 岡野 淳, 関根 一則, 野村 蘭, 湯浅 麻奈美, 米久保 明得, 清水 精一
    2010 年10 巻10 号 p. 383-392
    発行日: 2010年
    公開日: 2013/06/01
    ジャーナル フリー
    日本人は諸外国と比較し, 肥満者が最も少ない国民とされてきた。しかし, 肥満が主な原因であるメタボリックシンドロームが定義され, その予防・対策として特定健康診査・特定保健指導の実施が始まった。これらは日本でも肥満が健康上の問題として顕在化してきていることを示している。
    戦後, 食生活の質の改善および体位の向上を目指して, 米類中心の食事からタンパク質, 脂肪の摂取を高めるために乳製品や肉類の摂取を薦めた。それに伴い肥満者比率も高まり, あたかも, 脂肪摂取が肥満の第一因であるかのように考えられてきた。今回, 肥満と脂肪摂取の関係について調査を行ったが, 両者を強く結びつけるような疫学調査や論文あるいは研究者の意見を得ることはなかった。たとえば, 最近10年間で30歳代, 40歳代男性の脂肪摂取量は約10%低下しているが, 肥満者割合は10~20%増加している。しかしながら, 健康油や「脂肪分ゼロ」の商品が消費者に広く受け入れられことなどからも, ダイエットには脂肪摂取を控えることが一番であると考える消費者が未だに多いことが窺われた。本来, 脂肪は生体の重要構成成分であり, 生体調節因子でもあり, 安易な摂取量の削減や抑制は健康に重大な影響を及ぼす。その一方で, 食品工学の発達に伴い, 多くの食品に脂肪が含まれるようになった。しかも, 脂肪はエネルギー密度が高く, また, 美味しく執着性があるために脂肪の過剰摂取から肥満に結びやすい可能性が示唆される。健康志向が高まる中, 脂肪をはじめとした栄養素に関する適切な研究, それに基づいた情報発信・商品開発, あるいは学校教育などの機会を通じ, 消費者が上手に脂肪を利用できるように導くことが今, われわれに強く求められている。
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