今回の総説は次のような2 つの視点で構成されている。1.油脂と健康,2.脂質代謝に影響する食品成分であり,それぞれについて,主に心臓血管疾患,高脂血症,肥満に対する影響について概説した。 1.の概要は以下である。最近,脂肪摂取の量的な面において,総脂肪と飽和脂肪の摂取量を減らすことが推奨されている。消費する脂肪の量よりも,脂肪の質に焦点を置くことがより効果的であると考えられ,特に,飽和脂肪摂取の減少と不飽和脂肪の摂取増加及び摂取エネルギーの制限を加味しての推奨が望ましいと考えられている。そこで,食事脂肪の質と疾病(特に心臓血管疾患)との関連性について,飽和脂肪酸,一価不飽和脂肪酸,多価不飽和脂肪酸,トランス脂肪酸などと心臓血管疾患との関連性について概説した。2.の概要は以下である。今回はヒト試験成績のあるタンパク質,ペプチド,アミノ酸を用いたコレステロール代謝改善素材を中心に概説した。また,肥満と食品成分について,主にタンパク質やペプチドの機能性について概説した。
食事に占めるトランス脂肪酸の量が増えると冠動脈疾患リスクが増加することより,多くの国でその摂取量が問題視されている。その一方で,トランス脂肪酸とはトランス型炭素–炭素二重結合を分子内に有する様々な脂肪酸異性体の総称であり,各トランス脂肪酸異性体の代謝特性は異なることが知られている。本報告では,各トランス脂肪酸異性体の代謝特性に関して解説し,トランス脂肪酸問題の解決方法を探った。
空間的制約を受けた分子集団は,いわば「ナノ制約分子」とみなすことができる。この系は特異な凝集構造や融点シフトなどバルクとは異なる珍しい物性を発現し,物質の “サイズ効果” あるいは “閉じ込め効果” のモデルとして大変興味深い問題を提供する。本稿では,核磁気共鳴分光法(NMR)を通して見たナノ制約分子のダイナミクスとそれらが関与する相転移現象について,我々の最新の研究成果を紹介した。まず,核磁気共鳴分光法(NMR)を用いて調べることができる分子運動について俯瞰したのち,ナノ空間における吸着分子-細孔壁相互作用ポテンシャル(ナノ細孔場)の特徴を解説した。さらに,重水分子とアダマンタン分子を取り上げ,NMR で見たナノ制約環境下のダイナミクスを紹介し,ナノ細孔場が吸着分子のダイナミクスに及ぼす効果について議論した。最後に,ナノ制約分子のダイナミクスがその物性に重要な役割を果たす系として,規則性ナノ細孔における分子集団の特異な相転移現象を紹介した。