水溶液表面における陽イオン界面活性剤の対イオン分布と油溶性アルコールのヘキサン/水界面吸着膜の構造をシンクロトロンX線解析により調べた。その結果,界面が不均一な構造を持つ場合があることが明らかになった。まず全反射X線吸収微細構造 (XAFS) 法により,臭化ドデシルトリメチルアンモニウム (DTAB),臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム (HTAB),臭化デシルメチルイミダゾリウム (DeMIMBr) の吸着膜中での臭化物イオンの水和状況を検討した結果,水溶液中と同様に6水和した状態と部分的に脱水和して活性剤頭部とイオン対を形成したような状態があることが明らかになった。またこの二つの状態の比の活性剤の界面密度への依存性も明らかにした。次いで1H,1H,2H,2H-perfluorodecanol (FC10OH)と1H,1H,10H,10H-perfluorodecane-1,10-diol(FC10diol)のヘキサン/水界面吸着膜のX線反射率測定の研究からは,FC10OHの凝縮単分子膜は2次元固体の状況に近く,膨張膜は均一ではなく凝縮単分子膜のドメインが点在する不均一な状況にあること,FC10diolでは両端の二つのOH基によって界面に水平に凝縮吸着した状態から多重膜への転移が起こること,などが分かった。さらにFC10OHとFC10diolの混合吸着膜の構造も明らかになった。
気/水界面の脂質単分子膜は,制御された環境の中で,分子間相互作用や脂質膜が関係する生体現象を研究するための単純化された細胞膜モデルとして,あるいは生体分子や人工化合物の吸着と自己組織化のためのプラットホームとして利用されている。本稿では,水面上の脂質単分子膜の基本的物性や膜を用いた研究の特徴について概説するとともに,単分子膜に対する吸着現象や吸着構造の評価法について解説する。
イオン液体は分子性溶媒の代替材料としてさまざまな分野で期待されており,イオン液体界面の構造解明および機能設計は重要である。また,基礎科学的な見地から,中性分子を含まないこの新奇な液体は,特異な界面構造を形成することがわかってきている。本稿では,界面構造に関する情報を選択的に抽出することのできるX線反射率法と分子動力学シミュレーションを相補的に用いてイオン液体界面の構造を調べた研究成果を紹介する。