香気をもつ有機化合物の中には,構造中に不斉中心を有するキラル化合物が数多く存在する。これまでにキラル化合物のエナンチオマー間で香質およびにおい閾値の面で差異が見られることが多数報告されており,香料のキラルサイエンスは1つの研究分野として認識されている。本総説ではキラルな香料化合物の紹介やそれらの研究を進めるにおいて利用される技術である超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)を用いたラセミ体の光学分割,および最近発展してきた赤外円二色性(VCD)を用いた絶対立体配置の決定事例について紹介する。
多糖誘導体系キラル固定相が,幅広い光学異性体化合物群に対して,極めて高いキラル識別能力を有することは既によく知られている。現在の光学純度測定手法の主流はHPLC 法であり,そこでは多糖誘導体系キラルカラムが専ら使用されているとの報告もある。
一方,トリグリセリドに代表される油脂系化合物はキラル分離困難な化合物として考えられていたが,ここ数年,分離報告例が相次いだ。ここでは本分野の方にキラル分離を知って頂くためにHPLCキラル分離と多糖誘導体系キラル固定相の概略を振り返るとともに,最近の状況について解説する。
果実や野菜にはビタミンC,ビタミンE,その他カロテノイドやフラボノイドのような抗酸化能を有する物質が含まれている。これらの抗酸化物質は活性酸素種(ROS)の消去による抗酸化ストレスの効果を有し,生体防御に働いていると考えられる。食品の抗酸化能の効果を明らかにするには,食事から摂取される抗酸化物質全てについて検討することが必要である。そのため,食品の総抗酸化能を評価できる妥当性確認された方法が求められる。親水性および親油性酸素ラジカル吸収能(oxygen radical absorbance capacity:ORAC)ならびに,一重項酸素消去能(singlet oxygen absorption capacity:SOAC)は食品中の親水性,親油性物質を測定する方法であるが,この原法を改良し,室間共同試験による精度の検証を行った。