バイオディーゼル燃料(FAME)製造過程の副生物であるグリセリンを熱分解することにより,合成ガスを製造する研究を行った。ガス化に及ぼす反応条件の影響を,グリセリン試薬を用いた熱分解実験,および化学平衡計算により調査した。実験の結果,反応温度800 K以上において,グリセリンはH2,CO,およびC1~C2炭化水素からなる可燃性ガスに分解されることを示した。さらに,水添加を行うことにより,主に1000 K以下の温度条件におけるガス化率が向上することや,FAME製造過程において得られた廃グリセリンも,グリセリン試薬と同様に熱分解できることなどを示した。
地球温暖化や循環型社会への転換が進むなか,植物油脂を原料としたバイオディーゼル燃料の利用が増大している。そのため,製造時に副生する高アルカリ性の廃グリセリンの処理が問題となっている。 この廃グリセリンは,そのまま焼却処分すると焼却炉を傷める原因となる上,中和,脱塩,洗浄操作を行うと,処理コストが高額になってしまう。筆者らの研究グループは,この高アルカリ性の廃グリセリンを,嫌気発酵分解プロセスにより前処理なしでそのままバイオガスや化成品原料などの資源やエネルギーに変換できることを見出した。なかでも,下水汚泥を種菌として用いた廃グリセリンの嫌気発酵分解においては,廃グリセリンの投与量によってメタン発酵と水素発酵が切り替わることを見出した。また,水素発酵が優勢な状態では,化成品原料である1,3-propandiol(1,3-PDO)が生成した。グリセリン分解における,発酵制御因子の検討においては,投入原料の約1/100という極微量のグルコースを投与するだけでグリセリン耐性を持つ水素発酵菌の優勢化を促進させることに成功し,嫌気性菌にとって難分解性であるグリセリンを高効率で水素へ変換させることにも成功した。また,食品厨芥と廃グリセリンのパイロットスケールでの共発酵試験も実施し,廃グリセリンがpH 調整剤と炭素源を兼ねた,良好な投入原料であることを実証した。本総説では,筆者らの研究グループがこれまでに行った研究成果について紹介するとともに,今後の展望についても概説する。
国内では廃食用油を原料としてバイオディーゼル燃料(BDF)が製造され,その結果グリセリン廃液が副生する。BDFは環境に優しい燃料として普及しているが,グリセリン廃液はグリセリンの他に未反応のメタノールや廃食用油等の有機物,KOHのようなアルカリ触媒等の無機物を含んでおり,高粘性かつ強アルカリ性のため資源化が困難である。本研究では,グリセリン廃液に希釈と中和の処理を行い,上層(分離油)と下層(グリセリン水溶液)に分離した。分離油は高位発熱量が高いので燃料油として資源化し,再生重油と廃食用油から作られるバイオ再生重油の原料に用いた。一方,グリセリン水溶液は全窒素に対して有機性炭素の含有量が高いので脱窒剤として資源化し,し尿処理施設で通常使用されている50%メタノールの代替物に用いた。本処理方法により,グリセリン廃液の全量を資源化ならびに利用可能とした。
バイオディーゼル燃料を製造する際に副生するグリセリンの有効利用法の開発が望まれている。酸化鉄を主成分とする触媒を用いたグリセリン転換反応では,アリルアルコールとプロピレンが生成する反応経路Ⅰとアセトール,カルボン酸とケトン類が主に生成する反応経路Ⅱに従って反応が進行する。BDF 製造時に副生する粗製グリセリンに対し,同触媒反応系を適用すると,プロピレンとケトン類を生成させることに成功した。さらに,酸化鉄へのカリウムの担持,および反応系へのギ酸の併給は,グリセリンからのアリルアルコール収率向上(約40%)に有効であることを見出した。触媒の結晶性と酸特性を評価したところ、反応系中のギ酸由来水素により触媒の結晶性はヘマタイト構造(α-Fe2O3)からマグネタイト構造(Fe3O4)へ還元されること、および触媒上にブレンステッド酸点が新たに形成されることが明らかとなった。 したがって、マグネタイト構造の触媒上に新たに形成した酸点により、グリセリンからのアリルアルコール生成が促進したと考えられる。